1話目♂!
ーあぁ、ボクは死ぬんだなぁ。
なんて、死に際に妙に冷静な自分がいた。
薄れゆく意識の中、最期に思ったのは『もっと生きたかったなぁ…彼女とかつくってさぁ…』と言う漠然としたものだった。
まぁ。
人見知りで気弱なボクに彼女なんてつくれるはずがなかったんだけどね。
そう、例えば女体化した自分相手でもなけりゃ…
《ーすみませんでしたぁぁぁ!!》
「ーえ?」
あれ、ボク今死んだよね?確か通り魔に刺されて動けなくなって……
あ、そうそう。幼馴染み♂が幼馴染み♀︎を連れて早々に逃げてったね……と言うかなんならたまたま近くに居たボクを盾にしてきたよね幼馴染み♂。
…………はあ…………
いや、それより。
「えっと、これ何事?」
《すみませんでした…私がご説明します。
初めに、貴方は今日死ぬ予定じゃ無かったんです。
死ぬのは近くに居た貴方の幼馴染み♂で、予定では貴方がその後幼馴染み♀︎と結婚するまであったのですが、どうやら幼馴染み♂の生への執着やら貴方への敵愾心やらが私の予想を超えていた様でして………》
「はぁ……?」
いや、急にそんな事言われてもさぁ……確かに幼馴染み♀︎は唯一ボクに優しくしてくれていたし、最期に見た時も幼馴染み♂に抗って残ろうとしていた様な気がする。
幼馴染み♂は、幼馴染み♀︎に構われるボクの事嫌ってたのは知ってた。
あれ…でもおかしいな、もう2人の名前も顔も思い出せないや。
《あ、それは転生準備として既に貴方自身に関する事以外は記憶から消されたからかと。》
「そっか。」
じゃあ妙に心が穏やかなのはそのせい?
《そうですね、今の貴方にはおおよその感情が既にありません。》
「そっか。で、あなたは何故ここに?」
《はい、貴方に別の世界へ転生してもらうにあたって、何か一つだけ私からプレゼントを、と思いまして。
ただ、無茶な要求やその場のノリでプレゼントを要求されたら私も貴方も後々困るので一時的に感情を消させていただきました。
今の貴方なら心からの願いだけを言うと思いますし。》
「なるほど。ちなみに今の記憶はどうなるの。」
《御要望ならばプレゼントとは別に"記憶を残す事"を許可します。》
「じゃあ、お願い。」
《かしこまりました、では、プレゼントは?》
「…自分自身を。」
《…はい?え、本当に??》
あれ、この人…多分神様かな…が驚いてる。なんで。その為に感情消したんでしょ。
「平行世界の、女の子として生きてきた自分自身を望みます。」
《………。平行世界とは言え貴方自身ですので不可能では無いですが、変わったお願いですね。》
「心のままに願ったらそうなったんだ。」
《それは、存じております。そう仕向けたのは私ですし。
かしこまりした、では良き来世を。》
「うん、また会う事があるか分からないけど、バイバイ。」
《はい。》