第七十四話 ホウキ屋
74話です。
部屋には薄い布団と簡易的なロッカーがあるだけだった。
暗く日差しの入らない部屋。そこには少女が暮らしていた。
少女はホウキ屋。と言っても箒を売って、生計を立てている貧乏商人ではない。
ホウキ屋それはある種の隠語だった。
私が生まれたの魔族の領地だった。
生まれたと言っても、誰が産んだかもわからない。そう私は実の両親に捨てられていた。
そして拾われた。鈍い雲が広がる雨の日に冷たい手に拾われた。
それから、大きくなって物心ついた時、私は暗殺術、言語、魔法、剣術、・・。
たくさんの事を叩き込まれた。
間違えたら、当たり前のように殴られた。蹴られた。怒鳴られた。
私が育ったのはそういうところだ。
外の世界には知られてはいけない。
魔族の王、魔王。その魔王直属の部隊、それがホウキ屋だった。
魔王様の敵を陰で掃除するための部隊、だから、ホウキ屋。
私が追っているターゲットは、魔王様に殺せと命じられた少女。
私たちに命令が回ってくること。それすなわち、表立って行動を起こすことがまずいことだ。
相手が誰であろうと関係ない、ただ命令が下ったから・・
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俺はふかふかのベットで目を覚ますといつも通りに学校の準備を始めた。
昨日は校長先生に「先生にならないか?」と急に言われて困った・・
俺はエリーナのために『従魔契約』を結んで一生隣にいることを誓っている。
長い距離は離れられないし、今のところ従魔契約は片方の死でしか解除されないこともわかっている。
学校に行く前に食堂でご飯を食べに行かないとな。
俺たちはまだ、眠ってる2人―エリーナとマニラ―を起こして、朝の支度をさせた。
いつものように文句を言われ、時間を見た2人が焦って準備する、そんな光景が繰り広げられていた。
学生食堂でいつものパンにいつものバターを塗って、口の中に詰め込んだ。
朝の時間はギリギリまで寝てる2人のせいでご飯をゆっくり食べる時間もない・・
急いで詰め込んだパンがまだ口に残っているけど、それでも始業のチャイムに間に合うように走る。走る。
「昨日の夜、『明日は早くおこして!』っていたでしょ!」
走りながら、エリーナが話しかけてきた。
俺は言い返す。
「早くおこしたら『もっと寝かせてよ!』って怒るのはどこのどいつだ!」
「それは・・」
エリーナはバツが悪そうになったが、続けた。
「とにかく、明日は早くおこしてね!」
「はーい。わかりましたー」
俺はわざと不貞腐れたようにそう言った。
<キーンコーンカーンコーン>
ヤバい! 1回目のチャイムが鳴り始めた。
「飛ばすぞ! エリーナ、マニラ」
テレポートができる魔法があればいいのにな。
廊下を曲がる。教室が見えた。
急いで扉を開けて自分の席に着く。
<キーンコーンカーンコーン>
なんとか2回目のチャイムに間に合った。
「ギリギリセーフ」
俺が小声で言ったのを先生は聞き逃さなかった。
「おーい、セーフじゃないぞ! 余裕をもって来るように」
「はい・・」
先生は出席を取って、授業になるといつも通りステーム先生に変わった。
2時間目の授業、国語の授業は本当に眠くなる。
前世でもそうだったが、自分の知ってる言語はなんとなくわかってるから「学ぼう!」ってあんまり思えないんだよな・・
俺はふと、視線を窓に向けた。そして驚かされた。
・・木の中に人がいた。
俺と目があった瞬間、その人影は後ろに下がって消えた。
見間違えたのかな?・・
「ウサ、ココ答えてみろ!」
あっ、指された。さすがに外を見すぎてたからばれたか。
えっと、ここは前後の文脈から考えて・・
「逆接の意味を持つ接続詞、『しかし』、『だが』とかではないでしょうか?」
「グっ、正解だ。」
先生は苦虫を噛み潰したような顔をしている。
まじめな先生だからな。俺みたいに不真面目で成績がいい生徒は許せないんでしょう。
まあ、それが先生として正しい行為だからしょうがない。
その後も授業中なのに、他のこと考えてたから、先生に指されまくった。
そんなことだから、俺の頭からはすっかり「木の人影」の件は抜け落ちていた。
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見られた・・
こっちに気づかれた? いや、たまたまかな?
それにしても姿を見られた。白髪の少年をどう口封じしなければ。授業の様子を見ると相当頭はいいみたいだけど、実践を積んだ私になら問題ない。
なるべく自然死に見せかけるように殺せるようにしなければ・・
夜中に寝込みを襲うのが一番簡単だろ。幸い、ターゲットも同じ部屋だ。
火事を部屋で起こしてターゲットごと仕留めるか・・
それにしても。私が、任務中に相手に見つかるなんていつぶりだろうう。
寝込みを襲うからといって気は抜けないな。
ホウキ屋編スタートです!!




