第七十一話 学術会での出来事
71話です。
俺は新しい魔法を作ったことを発表するために会場に来ていた。
今日のために毎日の空いた時間を使い、原稿作成、発表、人に聞いてもらって改善、を繰り返して最高の発表ができるようにしてきた。
もちろん、原稿もしっかり暗記したし、もしもの時のためのメモ万全だ。
別に今回の発表は失敗してもいいと大人たちは言ってくれたけど、俺は成功させたいと思っている。
俺は学術会の偉い老人より先に会場に入った。
会場は学術会の保有する建物「CIGAⅯセンター」という場所だ。
ここには様々の資料、本が並べられ、会員ならだれでも使えるようになっている。会員なら・・
会員になるためには金、実力、知識力が必要だ。
お金は年会費で馬1匹分くらい、実力は学術会の発表で認められるものや学術会の管理者と同等以上のもの、知識力は、学術会のテストに合格することが必要だ。
俺は今回の発表で成功すれば実力面はOKになる。同時にすべての基準をクリアする必要はないので、追々入会するための足掛かりにでもなればいいと思ってる。
残念ながら、マニラはアイディアを出しただけなので資格の合格条件には達しないらしい。
「こちらです」
入り口の前に来たところでお姉さんが来た。
「今日1日、ウサさんとマニラさんの案内をします。フェルナッテと申します。今日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
俺たちも礼を返した。
お姉さんはその後、俺たちに今日の日程の説明をしてくれた。
今日の協議会では俺たち以外にも3人ほど発表するらしい。
説明が終わると、待機室に俺たちは通された。
待機室に行くまでの廊下は簡素な作りの真っ白な壁がが続いていた。
どこもかしこも真っ白で曲がり角も多くて迷路のように感じる作りになっていた。
歩きながら、俺はマニラにこっそり念話で話しかける。
『こりゃ、ガイドなしでは戻れないな』
『そうですね。侵入者対策も兼ねてるんでしょうね』
そうか、侵入者対策か。記憶して脳内でマップに起こしておけばよかった。
待機室に着くとすでに他の3人はついていた。
1人は瓶底眼鏡を付けた細身の中年男性、もう一人は50歳くらいの老婆、最後は多分貴族のボンボン。
ボンボンは俺たちが入って来たのを見ると
「おこちゃまがなんでこんな所に来てんだよ!」
って言ってた。
俺たちはそれを気にしないようにし、自分たちのスペースに向かった。
ただ広い部屋に簡易的な板が1枚で仕切られているため、音は丸聞こえである。
俺たちのスペースには机といすが3脚あるのみだった。
ほとんど何もないけど、準備はすべて終えてるので俺はマニラと念話でおしゃべりしたり、本を読んだりして適当に時間を潰した。
予定の1時間がたったころにお姉さんがやってきて、この暇な時間から解放されると思ったけど、まだ来れてないメンバーがいるからそれまで待つことになった。
偉いおじいさん達なんだから、しっかりしてもらわないと本当に困る・・
結局、あれから1時間、着いてからなら2時間たったころにお姉さんが会場に案内してくれた。
お姉さんは何度も「すいません・・」って謝ってくれてたけど、何もしてないからかわいそうだった。
会場に着くと、発表の順番が決まってないらしく、「好きな人から始めていいよ」と言われた。
ボンボンはそれを聞くなり勝手に「俺がやる。文句ねえな?」と言って壇上に立った。
「俺はヘルクニスだ。俺が発表するのは詠唱魔術における無詠唱化の仕方だ」
ヘルクニスこと、ボンボンがそういうと会場がざわつく。無詠唱魔法は詠唱魔法とは別のくくりにされており、無詠唱「化」はできないものの詠唱魔法と同じものを無詠唱でもできる。これが専門家の間で話されていた事だ。ちなみにジンギ―が若い時に提唱したことらしい。
それが今、覆されようとしているのか? はたまた、そのことを知らない田舎の貴族なのか?
議論のスッポトライトはそこに当てられた。
「俺が発見したのは・・」
評議員の爺さんたちは息をのむ。姿は見えないがジンギ―もこの場に来ている。
「魔法を無詠唱化するにはイメージが大切なんだ。既存の魔法のイメージをしっかり持った状態なら、魔法かができるということです」
ボンボンは自信満々に自分の意見を述べたが、それはこの世界では当たり前で、ジンギ―が何十年も前に発見したことだ。会場では、堂々と言ったボンボンに対してどっと笑いが起こった。
いつのまにか壇上の前まで来たのかジンギ―は手をあげて立っていた。
「それはわしが若い時発見した魔術だな。『魔術化』と言ったがあれは正確には『魔術化』ではない。ほとんど同じものだぞ。他に何か発見したものは?」
相変わらず、ジンギ―は容赦がない。ヤジもかなり飛んでいて、さっきまでの自信まんまだったボンボンは今にも泣いて逃げ出しそうだった。
それでも意地で発表を続けようとする。
「他には、無詠唱で魔術は複合できるようになります・・」
「・・それもわしが発見した奴だな。今回はあきらめろ」
「はい・・」
ジンギ―はボンボンに止めを刺した。
司会のフォルナッテさんは途中退場がいつもの事だというように振興を進めた。
残りの3人、瓶底眼鏡、おばあさん、俺でくじ引きをして順番を決めることになった。
くじを引く手が緊張する。緊張しながら引いたくじには「3」と書かれていた。
「1」、「2」、「3」の番号がくじに割り当てられていた。つまり、俺は最後に発表することになった。「1」はおばあさんが、「2」は瓶底眼鏡の中年男性。
おばあさんはその大きな体を重そうに動かしながら、壇上に上がった。
「私フルールが作ったのは美容に関する魔術です。そう、『痩せる』魔術です」
おばあさんの発表に女性の評議員と傍聴人が食い入るように乱した。
そのあとは、おばあさんが魔術について詳しく話し始めた。
おばあさんの発表は男性を引き付けることはなかったものの女性にはとても魅力的なものだった。
かといって男性の評議員もからの批判はなく、新しい着眼点、発想を高く評価していた。
10分間の発表タイムが終わると、質問タイムになった。
「どれくらいまで痩せる?」とか「理想的に脂肪を付けたり消したりできるか?」とか、女性からの質問が止まらなかった。
次は、学者さんだと思われる男性の番だな。
読んでくれてありがとうございます。
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