第百一話 徐々に戻って
101話です
朝早く起きて、サンダさんとダウネが泊っているという宿をギルドの人に教えてもらって、向かった。
宿に着いて、亭主らしきおじさんに話を聞くと早朝のうちに出て行ってしまったそうだ。
ただ、手紙を預かっているらしく、小さい白髪の少年がきたら渡してくれと言われていたらしい。
手紙にはこう書いてあった
『先に街を出る』
いくら紙とインクが貴重な時代だからって、ここまで短い手紙を残す必要性はないだろう・・
それこそ伝言を頼めばいいレベルだ。
俺は捨てるのも面倒で《収納》にしまって、手紙の事を忘れた。
宿に着くと、エリーナ、キラ、マニラの3人は朝ごはんを食べていた。
エリーナと目が合った。
「あ・・・」
向こうもこっちに気が付いたみたいだ。
昨日のことを思い出すと恥ずかしい。
こんなに長い間に一緒にいて、あんな事初めてで仲直りができたのに、妙に昨日の事を意識してしまう。
それだから、まっすぐエリーナの目を見ることができない。
だから、キラやマニラの方ばかり向いてしまう。
「朝ごはん俺ももらっていいですか?」
俺は女将さんにサンドウィッチをもらって食べた。
うーーん! やっぱりこの野菜のみずみずしさと酸味が絶妙にマッチしていておいしいな。
「女将さん、今日もおいしいです」
「あーそうかい。ありがとね」
「「「・・・・」」」
沈黙が続く。女将さんが食器を洗う音だけが響いている。
ご飯を食べ終えて、俺たちは互いにチラチラ視線をかわした。
「・・次どこに行くか」
重い空気の中口を開く。
「・・ダンジョンに行くとか?」
エリーナが答える。
「そうだな・・じゃあ、荷物の準備しに上に一回戻ろうか
「・・うん」
誰かこの重い空気をどうにかしてくれよ!!
階段を上がり、扉を開ける。俺に続いて3人も中に入る。
こんなに準備に時間がかかるのは初めてだった。
別にダンジョンに潜るための用意は《収納》にしまってあるから問題ないんだ。
だから、『消耗品の在庫はまだあるか?』と『自分の装備の手入れ』の準備だけだ。
つまり、簡単だ。作業は自分の身だしなみと《収納》のリストの確認だ。
全員の準備ができたタイミングで部屋を出た。
下に降りると、女将さんに言われた。
「そんなしたばかり見てると、上からくる敵に気づかないでひどい目に合うよ」
女将さんの忠告で俺は自分が下ばかりを向いているのに気づいた。
俺は前を向きなおした。
「エリーナ、行こうか」
「うん・・・・」
ダンジョンに向かう中で俺は串肉を4つ買って、みんなで食べた。
「「いただきまーす」」
ダンジョンに行く道中で食べながら、考え事をした。
俺は今からダンジョンに行くが、いったい何のために行くのだろうと・・・・
別にダンジョンは誰も潜らなくても誰も困らない。ただ、夢とロマンを追い求めて、財宝を追い求めて潜るのか・・・・
ダンジョンに着き、冒険者証をダンジョンにいるギルド職員に見せる。
「ハイ。ハイ。ハイ。ハイ。しっかり4つ確認できました。初めてではないので説明は不要ですね。2回目だからと言って一気に潜るような危険なことはしないでくださいね」
俺が疑問そうに頭をかしげていたら、ギルドのお姉さんは補足してくれた。
「『1階層下がるだけで危険度は格段に跳ね上がった。それに気づかなくて・・』と言って腕や足を失い夢をあきらめる人も多いんです」
そっか。今日も上層―入って最初の方の難易度の低いところ―でたんさくかな・・
それにしても余裕こいて、足、腕を失うのはさすがに嫌だな。この前は酒場で宝箱と罠宝箱というモンスターを間違えて指が捕られたと憤怒していた。
俺は、ギルドのお姉さんに、ありがとうございますと礼を言って、ダンジョンの入り口に向かった。
やはりというか、ダンジョンに足を踏み入れると独特の嫌な空気が体を覆った。
「げえー」
いつもの調子を戻したようにエリーナが喋った。
「この空気なんとかできないのかな、大きな風をビューってやったりしてさあ」
「いや、それは無理だろ!」
と俺も軽く突っ込んだ。
あー。こんな風に余裕があるなら、今日も皆で安全に帰れるだろう。
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「あ、あいつらまた来てる」
黒兎は地中からダンジョンの中を見ていた。
(俺は草食だし、あいつら襲ってもあんまり楽しくないんだよなー)
土の中で自分の体に沿うように作られた。土のベットはでかい体を支えていた。
「俺の部下たちが殺されないように非難させておくか」
『黒兎は全員土の中で待機するように』
念によって言語を介さない命令が下された。
ダンジョンのいたるところから返事が帰って来る。
『了解』
と。
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ほんの一瞬だけど、どこかで見られているような気がした。
ただ、それは本当に一瞬で気のせいだったのかも知れないな。
「上層だけど、気を抜かないで行こう!」
俺は士気を挙げるためにわざと大きい声でそう言って、奥へと進んだ。
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