3・私はまだ、この感情をしらない
私はまだ、この感情を知らない。
何と言い表せば良い?
何もないのに胸がモヤモヤして、息が苦しくなる。ふとした瞬間にギュって心臓が痛くなって、泣き喚きたい衝動に駆られる。
…怒り…悲しみ…虚しさ…妬み…悔しさ…尊敬……
野菜ジュースみたいにグルグル混ざって、名の無い〈何か〉へと変わる。
何時は楽しい勉強だって、今は全くやる気がおきなかった。目を瞑っても思い返すのは、試験結果の順位と彼の呟きだけ。
―分かっていた。私じゃ頭打ちだってことくらい。
―分かっていた。何時かあの場所は私じゃない"誰か"のものになるってことくらい。
パッチリとした蒼い瞳。ふんわりとしたミディアムボブの桜色の髪。小動物のような愛らしさと、花が咲いたような優しい笑顔。私が危惧していたのは『あの子』だって、一目で分かった。
二人が並んだならば、さぞお似合いなことだろう。
…そう分かっているのに。
二人が並んでいる図を想像して気持ち悪くなる。
―どうして。どうして。
胸がギュッと締め付けられて、切なくなる。
上手く息が出来なくて、ヒューヒューと音を立てながら吸って吐いてを繰り返す。
―分からない。
どうして、どうして。
どうしてソコにいるのが私じゃダメだったの?
答えて。私の努力は何だったの?
―分からない。
――分からない。
この苦く切ない感情を、私はまだ―知らない。