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1・だから、貴女が嫌いなの
私はアイツが嫌いだ。
文武両道、成績優秀、勇猛果敢、品行方正、眉目秀麗、気宇壮大…。
"完璧王子様"として学園の乙女の人気を独り占めする私の婚約者。
思えば、幼い頃からそうだった。
「レヴィ!今日こそ、貴女に勝つわ!」
「ふふっ、いいよ。じゃあ数学で勝負しようか」
いつもニコニコしてて、弱音なんて絶対に吐かなくて、どんな無理難題も簡単に乗り越えてしまう人。
未来の国王としての責任も、国民からの期待も、私たち貴族からの圧も、全て彼は受け止めて―貴方は…この国の王太子、レヴィン=ライザックは…笑う。
不敵に、美しく、格好良く、艶やかに。
だから、私はレヴィが嫌いなんだ。
全てにおいて私のことを軽々、超えていく。
「レヴィ!今日こそ貴方に勝ちに来たわ!」
私たちはライバルで幼馴染。
―その頃の私はそう思い切っていた。
彼の銀髪を、彼のサファイアの瞳を、彼自身を、私が見つける度に高鳴る鼓動に…見て見ぬ振りをただ、突き通していたんだ。