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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(85)アニメと実写の得手不得手

★アニメと実写の得手不得手


●実写?特撮?アニメ?

昨今、特撮番組の様な内容のアニメ番組が、特撮番組かアニメ番組かという議論がなされ、話題になっていました。

本来特撮で表現されていた作品内容をアニメで表現したり、アニメ作品を実写や特撮で表現したりといった映像作品は、近年になって出てきた作品ではなく、昔から存在していました。

私はプロのアニメーション製作には関わったことはありませんが、一応大学時代にアニメーション制作の講義と実技は必須でしたので、その点、上辺だけではないお話もできるかと思われますw

今回は、そんな映像作品における実写やアニメの表現の違いを語ってみようと思います。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。


●アニメーションと現実離れ

映像の表現方法には実写やアニメというモノだけではなく、たくさんの種類があります。

アニメーションだけをとっても通常のセルアニメ(現在ではセルを使用していなくても、かつてのセル画を用いたアニメの様な表現のアニメはセルアニメやセルタッチアニメと呼ばれています)や3DCGアニメ(セルタッチアニメの一種)だけではなく、実際のモノをコマ撮りして動かして行くストップモーションアニメがあります。

因みにストップモーションアニメの被写体には、影絵や粘土(クレイ)の他、私達がノートや教科書の端に書いたパラパラマンガの様なモノを指すペーパーアニメなどがあります。これらも、れっきとしたアニメです。


乱暴に纏めれば、静止しているモノを動かすことがアニメですから、絵やセルといった二次元だけではなく、立体物である三次元を使用したモノもアニメと言えるのです。


そして、現実に存在するモノだけではなくて、絵や立体物に表現できるモノであれば、どんなに現実離れした景色や動物や機械等であってもどう動くのかを話し合い、それを基に動かし、映像作品の語り部として使用することが可能なのです。


●実写と現実離れ

これが実写映像となると、現実離れした景色や動物や機械等を立体物として作製した場合に、先ずどうやって動かしたり使用するかを考え、それを基に製作し、被写体として撮影することになります。

そして、時間と費用が莫大に消費される上に、立体物として作製する段階で三次元では表現出来ないデザインや用途は削除されてしまいます。

更に、現実離れしているだけに、立体物として動かす際に様々な方法を用いなければならない場合もあります。

その特殊な動かし方を考え、仕掛けを創るのが「特殊効果=特効」さんとか「操演」さんと呼ばれる職種の方々になります。


●アニメの得手不得手

今回は、判りやすくテレビで主に放送されている「セルアニメーション」を中心に話を進めます。

通常ならば、アニメーションには日常的なことから非日常的なことまで映像化する事が可能です。

そして、普通ならば特殊な機材や備品を新規に購入することなく、現状の資材だけでも新しい映像を創り上げることが可能です。

乱暴に言えば、絵を描ける人材がいれば、どんな異空間でも、どんな巨大なロボットでも、どんな異形の怪物でも、どんな絶世の美女や美男子でも、紙やモニターの上に作製し、動かし、映像化することが可能なのです。

つまり、アニメーションには実写では到底表現出来ない特殊な映像でも、二次元で表現して視聴者や観客に届ける事ができるのです。

ですから、特殊な映像が繰り返される「トクサツ」番組の映像表現方法としては、最適の様に感じられます。


しかし、アニメーションに出来ないこともあります。

自由な表現を得ようとすればする程に、どこまで行ってもアニメは「絵」という画面表示が限界であり、肉眼やメガネやモニターを通して我々が日常生活で見ている三次元の人物や風景をありのままに表示するには不得手です。

更に、人件費をはじめとした制作費です。

広報やマーチャンダイジング等に関わる人数は、実写もアニメもほぼ変わらないのでしょうから、その人達を差し引いても実写テレビ番組に関わる人は、キャストやスタッフを合わせても通常ならば100人にも満たない人数です。

アニメはそうはいきません。


1秒間に24コマ。流石に日本のアニメではフルアニメーションである24コマ=24枚のセルではありませんが、それでも1秒間に8〜12コマ=8〜12枚のセルが必要になります。

30分番組のアニメは、オープニングとエンディング曲とCMを除けば実質20分ぐらいになります。バンクと呼ばれる前回までに使用した映像を盛り込む場合もありますが、それでも17〜18分は新規作製でしょう。

18分=1080秒✕12コマ/秒=12960枚。

コマ数を考えると実際には10000枚程度の新規動画が必要となります。

つまり、その動画に携わって絵を描く人数がハンパないのです。

人件費の削減も兼ねて、海外にまで下請けに出すこともあります。

それでもアニメ作品の制作費は、そこまで高くはありません。

それだけ低賃金、重労働が当たり前の様になっています。

これを「手塚治虫が悪い」と言う人がいました。手塚治虫先生は、自分のアニメを世に出す為に制作費を削り、足りない分は自分の私財を出して制作しました。

このアニメ創りにかかる制作費の感覚が、スポンサーや制作代理店の中に根強く残っているのです。それはまるで「日米修好通商条約」を始めとした5カ国との不平等条約の様に何十年もの歳月をかけて撤廃に尽力しなければならなくなった日本と同じような状態でした。

現在では、少しは改善されていると思われますが、自分が好きで入った制作現場では「サービス残業」を自分に良しとしてしまう(昔の私の様な)人が存在しているのも、また事実です。


そして、アニメには「時間がかかる」というデメリットも存在します。

時間を人数でカバーしようとしてはいますが、実写で撮影するよりは、明らかに時間がかかる作業が当たり前の様に多くあります。

何を言っても撮影よりも前に行う作業が膨大ですw


●実写作品の得手不得手

実写作品は、アニメ作品に比べるとそこまで多くの時間や関わる人数が必要になる訳ではありませんし、現実をそのままに撮影する以上は、映像自体を三次元に近づける手間も程んど必要ありません。


しかし、前途したように、現実に近い程、現実離れした映像を創り出すのは不得手です。

非日常的な怪獣やヒーローのスーツに高い費用がかかります。

更に人が中に入るモノだからこそ形態に制限が加わり、操作するにも技術的なことも加わってきます。

また、火薬やピアノ線による吊り撮影等の危険が伴う撮影も行う必要が出てきます。

そして、その危険な撮影をより安全に近づける技術も必要になってきます。


しかし、いくら特撮技術を使ったとしても限界もありますし、その分、費用もかかってきます。

まぁ、その現実に近付ける為の特撮技術の表現が好きだと言って頂ける視聴者や観客もいらっしゃいますが…


●アニメと実写のコラボレーション

アニメーションの利点と実写の利点が合わさあれば最良の作品になると考えるのは、当たり前の選択です。

そこで、「CG」というアニメーション一族のデジタル家系に産まれた引っ張りダコな表現方法が登場することで、二次元表現と三次元表現を解決してゆくのです。


アニメとしては、3Dアニメにより実写に近づけた感覚が得られました。

そして、実写では非現実的なデザインや表現が可能となりました。

更にコンピューターの高スペック品の低価格化や「CG」技術の急激な進歩により、従来のアニメーションや実写の枠を超えた表現が可能となって来ました。

アニメでは、「CG」による「3Dアニメ」によってアニメーション表現でありながら実写の様な動きが可能となりました。

実写では特に顕著で、現実の景色や動物や人物と言っても遜色の無い程の「CG」によって、現実では不可能であった非現実的な世界観や表現も、現実と見紛う映像として表現が可能となりました。


事実、現在の映像作品の程んどは、この「CG」技術に頼っていると言っても過言ではない程に席巻されています。


●あとがき

トクサツ作品にリスペクトされたアニメーション作品が、安価に「トクサツ」のエッセンスを表現できるモノだと、私自身は思っています。

「特撮」といわれるモノが「特殊技術撮影」と「トクサツ番組」の両方を内包しているだけにややこしいのですが、この場合は前者ではなくて後者の「特殊撮影を用いたトクサツ作品」のことです。


アニメーションにはアニメーションでなければ表現出来ないことがあります。

実写には実写でなければ表現出来ないことがあります。

双方に橋をかける「CG」という表現があります。

「アニメ」だ「トクサツ」だという垣根を作るのではなく、垣根を超えてより良い別の新しい何かを獲られるワクワクが欲しいところです。

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