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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(77)「差し入れ」

★「差し入れ」


●差し入れとは

実は「差し入れ」は、撮影所のサラメシと称した「撮影所の飯事情」という回の一部で語っているのですが、今回はその一部を全体に拡大して更に掘り下げて語って行きたいと思いますw


さて改めて「差し入れ」とは、どういう意味なのでしょうか?

広辞苑によれば

①中に入れること。「差し入れ口」

②ある所に閉じ込められている者、特に留置または拘留されている者に、外部から物品を届けること。また、その物品。「衣類の差し入れをする」

③仕事で忙しい職場などに、激励・慰問のため飲食物を届けること。また、その物。「ウィスキーを差し入れする」

ということのようです。

なので今回は、撮影現場という場所に留置や拘留されているwスタッフやキャスト達に激励や慰問のために差し入れられるモノについて語って行きたいと思います。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。


●案外知らない

撮影所や撮影現場に「差し入れ」をする。ということがあることは、業界人じゃない一般の人も多くが知っています。

しかし、案外内容に関しては知られていません。


先ずは、なぜ「差し入れ」をするのかということについてですが、これは広辞苑の示す様に「激励と慰問」が基本なのですが、「差し入れ」をする人物や時期によっては意味合いが変わってきます。

そこに「結束や融和」が加わるのです。


●「差し入れ」をする時期って?

さて、「差し入れ」をする時期ですが、誰が「差し入れ」をするのかにも関係してきますが、基本的には決まっていません。

しかし、「差し入れ」をより効果的にして、撮影現場に「激励と慰問」をもたらせる様にする為には、時期を考えてすることもありました。

そして、時期を考えた上に、最低条件としてより多くのスタッフやキャストが揃う撮影現場(理想はステージセットでの撮影)で行うことが大切でしたが、ですから、制作部等と撮影スケジュールを吟味する場合もありました。

それでは、効果的な「差し入れ」の時期とは何時になるのかですが、「差し入れ」をしようと考えているその作品が、どの様なスケジュールで撮影されているのかによっても変わってきますが、大きく大別すると「前半」「中盤」「後半」の時期に別れます。

撮影期間が1ヶ月前後しか取れない作品であれば、自ずと「差し入れ」の時期は「後半」に限定されてきます。

これは、本来の「激励と慰問」によるところが大きく、後半に向けてのラストスパート的な時期に「差し入れ」をすることで、スタッフやキャスト達に気合いを入れ直してもらうという気持ちの表れであるとも言えるのです。

連続ドラマの様な1年近くを要する撮影期間であれば、時間も機会も多くあり、「差し入れ」時期も選択が可能でした。

その中でも「中盤」で行う「差し入れ」は「激励」よりも「慰問」の感覚が強く、「後半」では「慰問」よりも「激励」の感覚が強くなります。

しかし、映画ならばクランクイン後の数日後ぐらい。連続ドラマならば、最初の数話目ぐらいの「前半」に行われる「差し入れ」だけは、まだまだ序盤に近いだけに「激励」や「慰問」の意味ではおかしくなります。

つまり、意味合いがスタッフやキャストを含めた撮影隊の、最初の「結束」と共に「融和」を促す為の「差し入れ」に変わってくるのです。


まぁ、基本的には時期など考えずに「差し入れ」できるタイミングで行うものですから、深く時期を考えて行うのは、極一部の人物ぐらいということになります。


●誰が「差し入れ」するの?

では誰が「差し入れ」をするのかについてですが、通常は下っぱのスタッフやキャストからの「差し入れ」はありませんでした。

「差し入れ」の基本は「激励と慰問」ですから、撮影現場の中でも「監督」や「プロデューサー」等の上層部のスタッフや主演を務めるキャストや大御所のキャスト等といった人物が行うのが通例でした。


連続ドラマなどになれば、数年来の気心の知れたスタッフやキャストが多く存在しましたから、その一部が休日に旅行に行っていたお土産物等と称して、お菓子等の飲食物を持ってくる場合もありましたが、これも職場としての撮影現場の人間関係が作られる「結束と融和」の「差し入れ」です。


中には、キャストやスタッフ以外からの「差し入れ」もありました。

それは、ステージセットを特別に見学させてもらう者の持ってくる「手土産」という名前の「差し入れ」でした。

私も数年前にステージセットを見学させてもらう際に、郷里の銘菓を「差し入れ」させて頂きましたが、現役を退いた元スタッフとしても、これが初めての撮影現場への「差し入れ」でした。

また、撮影所の外部で、お店や外観の撮影用にとロケセットとしてお借りしている借り主からの「一息ついて下さい」というお茶代わりの「差し入れ」等もありました。

この様な場合の「差し入れ」の時期は、特に作品の撮影時期とは関係ありませんでした。


そして、肝心なのが、その作品の「主演キャスト」からの「差し入れ」でした。

それは、主演(=舞台劇における「座長」の役割)がスタッフやキャストの仲を取り持ち、作品作りの仲間意識を固める為に行う為に行われる「結束と融和」の「差し入れ」なのです。

特に作品の撮影時期としては、「前半」の場合が殆どでした。

しかし、若い主演の俳優だとスタッフやキャスト全員(30人分を超えます)に振る舞える「差し入れ」が出来るギャラは貰えていませんから、キャストの中でも大先輩が「差し入れ」を代わりに行うことがありました。

この場合でも、本来「差し入れ」を行うべき主演キャストを差し置いて「差し入れ」を行う訳ですから、主演キャストには話を通しておく等の撮影現場での上下関係を踏まえた、礼儀や仁義を欠かないように事前準備をします。

また、主演キャストに対してそういった撮影現場での習慣を教える役割も担っているのです。


中には、主演キャストが「差し入れ」を行った後に、共演している大御所のキャストから競うように「差し入れ」が行われる場合もありました。

そんな場合、その大御所が主演キャストよりも先輩格にあたるのであれば、主演キャストよりもより良いモノを「差し入れ」するという習慣もありましたので、主演キャストはその事を考慮して「差し入れ」するモノを選ばなければならないというプレッシャーもありました。


また、プロデューサーや脚本家等が「差し入れ」を行う場合もありました。この場合は、セット撮影の見学という時が多く「陣中見舞い」という名目で手土産のお菓子が「差し入れ」されていました。


更に、その作品を撮影している監督からも「差し入れ」が行われる場合もありました。この場合は、撮影現場への謝罪代わりやお祝い事のお裾分け、また、キャストやスタッフ達との賭けに負けたなんていう理由の場合もありましたが、いずれにせよ、キャストやスタッフとの良好な関係が成せる「差し入れ」と云えるモノだと思います。


●何を「差し入れ」するの?

どんなものを「差し入れ」ているのでしょうか?

基本的には広辞苑にもあるように「飲食物」を差し入れます。

できるだけ多くのスタッフとキャストに「差し入れ」をする事が基本でしたから、少なくとも30人分は超えました。

特撮作品等では、アクションシーンの撮影等の際にはキャストが膨れ上がり、アクションキャストとアクション補助だけで30人を超える時もありました。

そんな大人数に出来るだけ同じモノを「差し入れ」するのですから、「差し入れ」する品物を選ぶだけでも大変です。


外部からの「差し入れ」としては、お土産物の様なお菓子類が定番でした。

内々に持ち寄ったりする場合もありましたし、大きな意味合いもなく「差し入れ」られる品物もありましたから、内容は千差万別でした。

数年前に私が見たのでは、アクションシーンのセット撮影の際に「コストコ」の大量なお菓子や大きなボトルでの飲み物の「差し入れ」が置いてあり、「コストコならば有りだな」と感心したぐらいです。


30年前のキャストや監督の「差し入れ」のド定番は「夜食」でした。

「夜食」が出るという撮影状況とは、時間的に大変な撮影をしている場合がほとんどで、少なくともスタッフはほとんどが揃っていますから「激励と慰問」には持ってこいな状況と云えるのです。

本来の「夜食」は、基本は制作部が手配する会社としての必要経費なのですが、料金を肩代わりすることで「差し入れ」としてしまうことも可能となるのです。


キャストの中には、自分のこだわる「差し入れ」をする場合もありますので、必ずしも「夜食」がキャストの「差し入れ」とは限りませんでした。


近年では、「ケータリング」という便利なモノが出来ているようです。

ロケ現場での撮影やステージセット撮影の際に食事を提供して貰えるこのシステムは、冬の寒いロケ現場で冷たい弁当で昼食を迎える寂しさや、温かいが定番メニューの出前注文の夜食のまたか感を拭えるモノであることは確かですが、制作部の費用で毎回のように呼べるモノでもありません。

このケータリングを「差し入れ」として活用する監督やキャストも出てきたとも言われています。

まぁ、現在では感染対策の為に行われていないかもしれません。


●特別な「差し入れ」

年に何回かのイベント日には、たまに特別な「差し入れ」がありました。

それは、バレンタインデーとクリスマスに多く行われていました。

まぁ、バレンタインデーには女性キャストや女性スタッフからの義理チョコの「差し入れ」でしたし、クリスマスには小さな個包装の手作りお菓子のプレゼントという「差し入れ」でした。

この辺りの「差し入れ」は個人的な場合もあれば、何人かと一緒に「差し入れ」をする場合もありました。

この様な「差し入れ」は、差し入れをする個人や数人の人物の感情に左右されていて、「皆と仲良くなりたい」という気持ちが大きいと思われます。

ですから、監督だとかぺーぺーだとか、主演だとか大御所だとかバイプレイヤーだとかは関係なくて、誰でもがメッセージを持って「差し入れ」を行っていました。


余談ですが、某番組の夏のロケで某キャストから突然アイスクリームの差し入れが入った話は、業界内では有名です。

夏場ですから直ぐに溶けるので、全スタッフ全キャストがアイスクリームを先に食べなければならなくなり、撮影が止まってしまって制作部が困ってしまったというお話ですw


●あとがき

「□□(部署名や役名)の◯◯さんから差し入れを頂いておりま~す。◯◯さん、ありがとうごさいま~す。皆さんで召し上がって下さ~い。」と制作進行さんが言うと「ありがとう」とか「ありがとうございま~す」という声が聞こえてきます。

時には、拍手が起こったりします。

別バージョンとしては「今回のお夜食は、□□(部署名や役名)の◯◯さんから差し入れで~す。◯◯さん、ありがとうごさいま~す」や「今回のケータリングは、~」といったモノもありますw

私が撮影所に現役で居た当時は、「ありがとうございます!」と言う立場でしたし、自分から「差し入れ」をすることもありませんでした。しかし、数年前に自分から「差し入れ」をした際には「ありがとうございます!」と言って貰えて嬉しかったのを覚えています。


色々な人の想いを載せたり、儀礼的なものだったりする「差し入れ」ですが、どの様な想いを載せていようが思惑があろうが、撮影現場を和ませてくれるモノには変わりはありません。


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― 新着の感想 ―
私は平成の頭頃、TV局の編集室や編集スタジオ等で使われる機材等を扱う会社に居た事があります。 最悪、編集作業中に配線の張直し作業などという状況が発生してしまい(明らかにコチラのせいでは無いのに)不機嫌…
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