余り語られない撮影所のあれこれ(67) 「ロケーション現場」vol.3「高崎金属(高金)」
★「ロケーション現場」vol.3「高崎金属(高金)」
●東洋熱工業株式会社 吉井工場跡
本当の名前は「東洋熱工業株式会社 吉井工場跡」だそうです。しかし、これは現在の名前です。
30年前には「高崎金属」であり、略して「高金」と呼ばれていました。
先にも述べた様にその「高崎金属」という名称は現在では旧名称なのですが、超が付くほど有名な名前なので「東洋熱工業株式会社 吉井工場跡(旧:高崎金属)」とまで表記されてしまっている程のロケ場所です。
そんな「高金」がロケ場所vol.3にしていよいよ登場ですw
と、そんな御大層な内容ではありませんがw
尚、例によって情報のほとんどが30年前ですw
今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。
●「高金」=「いつもの廃工場」
廃工場としてテレビや映画で使用されるロケーション場所としては、超定番な場所です。
場所としては名前通りに高崎市に在り、鏑川の畔の吉井運動公園の対岸に位置しているのですが、工場の周囲を背の高い木々が覆っている為に存在自体が確認しづらい場所になっています。
しかし、周りから確認でき難いということは、工場側からも周囲が確認出来ないという事でもあるので、撮影の背景として一般の人や家屋や車輌が写り込んでしまうという事態には成りにくいのです。
勿論、工場敷地の周囲にはフェンスが張り巡らせてありますから、外界から隔離された空間になっています。
敷地への進入口も木々の並木によって分かりづらくなっているのですが、進んで行くと工場入口としては定番の鉄格子状の門扉があって、その門扉を過ぎれば敷地内となります。
進入して直ぐに右手に建物が1棟現れます。本来ならばこの場所が工場の事務所のあった建物です。
そして更に数十メートル進むと同じく右手に別の建物が見えます。これが本来ならば工場の社員の社食や休憩所といった場所なのでしょうが、ここが撮影隊の休憩所となっていました。
中は長机が置かれ、椅子が整然と並んでいる社食の様相そのものでした。
ロケ弁当が出る場合は、この場所を借りて食事が出来て、メイク準備等のキャストの待機所としても使用されていました。
勿論、水道もトイレも使用可能でした。
まあ、若手の男連中であるスタッフやJAC(現:JAE)の面々は、天気が良ければ建物の外でアスファルトや草原の上に座り込んでロケ弁当を食べていました。
基本的にはこの二つの建物は、撮影に使用されません。
何せ、撮影するロケ場所の主目的は、この二つの建物を過ぎた後に見える巨大な工場の建屋なのですから。
●ロケ地としての「高崎金属」
高崎金属の敷地は、地図上では北西に正門があり、そこから南東に幅約150メートル、奥行約500メートルはあろうかと思われる広大な場所です。
◯工場前=工場西側
巨大な工場建屋の前にはアスファルトの地面の広い空間が広がっていて、ロケバスや重機もこの場所にゆったりと置けました。
更にこの場所を撮影場所として使用してアクションが撮影される事もありました。
◯メイン建屋
メインの建屋の外観は、高さ約3メートル程の大きな吊り下げ式の左右開きの鉄扉が3ヵ所ある巨大な建屋で、その建屋だけでも横約60~70メートル、奥行約200メートル、天井高約15メートル程を有しています。
ですから、建屋中でカーチェイスやバイクアクションすら出来るほどの空間が確保されています。
建屋内の地面は、コンクリートの上に約1~2センチ程の土がうっすらと敷き詰められています。
この土は、土埃が舞う程に乾いたパウダー状態なのですが、土というよりも長い年月の間に鳩糞の降り積もったモノに近いぐらいの細かな土壌なのです。
元々は空気が悪い場所ではないのですが、人や車輌が入るとこのパウダー状態の土が土埃となって舞って漂ってしまいます。
ですから、後で鼻水が黒くなる等の弊害がある為に、特に女性はマスクをされるスタッフやキャストが多くいました。
但し、土埃自体の重量がある為に低く薄く舞うだけなので、直ぐに修まりはします。
それにしても、余り直に触れたくない地面です。
天井に透明な浪板が並ぶ箇所が幾つもある為に、外光が地面にまで届いていましたが、それでも薄暗く、雨でも降れば照明無しでは歩きづらい場合さえありました。
建屋内の8割は、鉄骨の柱が整然と立ち並ぶ空間が広がっていて、屋根や壁の存在によって完全に外界から遮断された空間が保たれます。
南北共に西側と同じような吊り下げ式の鉄扉があり開口できますが、北側の鉄扉が開けられていて工場建屋への出入りのシーン等は、その北側の扉が撮影場所として使用される場合が多かったと思います。実際、今でも変わっていない様です。
残りの1~2割は、工場建屋奥(東側)にある建物内の資材置き場や大型機材の置き場等です。
勿論、この場所も撮影に使用されていました。
今では撮影場所として利用されているシーンを余り見かけませんが、もしかしたら資材置き場等が整理されて、私の知らない様相に様変わりしているのかもしれませんw
◯工場北側
工場建屋の前を左に回り込む様に進んでいくアスファルトの道があります。この道を進むと、右手にメインの工場建屋が続く状態のまま、左手にも小さいながらも工場の建物が連なり、奥が別の工場建物でふさがって見え、手前左にはタンクも見えるといった空間が出現します。
ここが第2の「高金」と言える撮影場所です。
工場建物の外観での撮影の場合のほとんどは、この場所が使用されます。
外光の下であり工場らしい場所という、建屋内とは違った撮影空間が提供されている場所です。
ここでもアクションシーンが撮影されます。
◯工場南側
こちらもメインの工場建屋の南側ですから、直径2メートル以上はある巨大な配管がある特異な建物があり、建物バックの撮影に使用される場合もありました。
しかし、片側が朽ちかけの錆びたフェンスに草が生い茂る道、更にそのフェンスの南側には鏑川が流れていて対岸は運動公園という状態でしたので、半分隔離されているといった感覚しかなく、鏑川向きの撮影は工場としての景色に乏しいと云わなければならないような状況でした。
また、工場の建物を入れ込んでの「引き画」の撮影が出来るカメラポジションが限られてしまうため、撮影の使用頻度は低かったと思われます。
◯工場東側=工場裏手=原っぱ
過去に何回か使用されたことのある工場裏手に広がる原っぱです。
工場建屋をバックにして周りを高い木々で覆われた空間となりますが、こちらも使用頻度としては多くなく、アクションシーンの場所として使用された程度だろうと思われます。
◯撮影小道具
撮影の際に使用する木箱やドラム缶等は、現場調達するモノはほとんどありませんでした。
ですから、そんな木箱、ドラム缶、ダンボール等の撮影用小道具を持ち込む事もありましたが、場所が広いだけに中途半端な飾り付けは反ってみすぼらしくなるので、持ち込む小道具の量やカメラの画角も注意が払われたものでした。
●アクションシーン
高金が今でもアクションシーンの撮影のロケ地として頻繁に使用されるのは、ナパーム爆発やセメント爆発、弾着、カーアクション、バイクアクション、ピアノ線吊り等々の他の撮影場所では禁止される撮影条件内容が、全て撮影可能という有難い状況があります。
建物への破壊や火災がなければ、大丈夫な様でした。
これは、採石場等の元来ダイナマイト爆破をしていたような場所なら兎も角、建築物がある場所では稀な撮影場所なのです。
それは、高金が周りに民家や商店が無く、周囲への迷惑を考えないで良いという立地的条件が影響しているのだと思われます。
近年は、撮影のデジタル化とCG技術の発達によって、実際の爆発や吊りといった撮影をしなくても表現が可能となっているのは確かですが、CG技術の限界の緩和とアナログ技術の良さを取り込む為にも、撮影が可能ならばアナログ技術を使用していくことは十分に有り得ることでもあるのです。
尚、原っぱや草原のある工場の東側や南側では、火の延焼を避ける為にも大きな火気アクションは避けられたのは想像に難くないので、制限のかからないロケ場所に来ているのに、わざわざ制限のある場所で撮影しなくても良いと考えるのも想像に難くない事だと思います。
しかし、新たな背景としてのロケ場所を探求するというアクション監督の視点があった事もまた想像できる事なので、その事には賞賛を贈りたいと思います。
●あとがき
高金は、廃工場です。そして、少なくとも35年以上は廃工場が続いています。
経年劣化もあるでしょうが、いつまでも存続して欲しいところです。
現在は、この高金の使用は「高崎フィルム・コミッション」が窓口となっていています。
元来は、平成15年に高崎市役所の観光課に設置された「高崎フィルム・コミッション」が管理していたものを「特定非営利活動法人 たかさきコミュニティシネマ」に業務移管され、その「高崎フィルム・コミッション」が窓口業務を行っています。
高崎市は、映画の撮影場所から上映場所までを提供する自治体としてPRをしている様ですので、高金のメンテナンスにも力を入れてくれていると信じていますw
さて、アクセスというか住所です。
群馬県高崎市吉井町馬庭
窓口としては
「高崎フィルム・コミッション」
〒370-0815
高崎市柳川町31 高崎電気館内
TEL:027-395-0483
FAX:027-395-0484
http://www.takasaki-film.jp/
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