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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(41) 「セットorステージ」

★「セットorステージ」


今回は、撮影所内にあるセットという場所そのものをご紹介しようと思います。

セットには、建物内部に建てられるステージ或いはステージセットと呼称されるモノと、ロケーション先に組まれるロケセットがあります。

この呼称から分かるように、撮影所内に建てられた建物としては本来「ステージ」と呼称するのが良いのですが、ステージ内部に建て込まれた「セット」という呼称の方も建物自体の呼称として常用されていますので、片方の呼称でも両方の呼称として説明しているとお考え頂きたいと思います。

そんな撮影が行われているセットもしくはステージという場所そのものを説明したコラムなんてほとんど無いかと思いますので、斜め上から話が好きな私には打ってつけかと……じゃないかなぁと……思いますw


尚、例によって情報のほとんどが30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。


●セットナンバーorステージナンバー

先ずは、ネット等で検索できる撮影所の図面を見て頂くとわかるのですが、セットもしくはステージと言われる建物にはナンバーが振られています。

「ナンバー1(=いち)」とか「第1(=だいいち)ステージ」と呼称するのですが、このセットナンバーorステージナンバーが微妙に歯抜けになっています。

東映東京撮影所(=大泉撮影所)には、現在以下のステージナンバーが存在します。

No.1,2,3,5,6,7,10,11,12,16,17,18,19,20とV1,V2の大小16のステージです。

因みにV1とV2はビデオのマルチ撮影用のステージです。

これが30年程前には、No.8,9,15が存在していましたが、現在では8,9ステージはデジタルセンターに作り替えられ、15ステージは倉庫になっています。

ですから、現在での欠番ステージナンバーは、No.4,8,9,13,14,15の6セットとなっています。

この欠番は埋められることはありません。欠番は欠番のままに、新規にステージが建てられるのならば、最終のステージナンバーの次の番号が割り振られます。


因みに、京都撮影所は、No.2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,13の11のセットが存在し、No.1と12が欠番です。

30年前には、少なくともNo.1はありました。


欠番になった理由は様々です。

老朽化や整理や…


●ステージの基本(外観と内部)

外観としては、ひとつの建物に鉄製で防音の両開きの天井吊りの4メートル程の高さの大扉があるのが特徴で、その大扉の左右何れかの脇に人ひとりしか通れない程度の鉄製扉があります。

大扉と小さな鉄製扉の上には、雨避け兼用の軒(=のき)が張り出していますが、雨の日でも雨に濡れない様になっている大きな軒は大扉ぐらいです。


中に何も建て込まれていないがらんどうのステージでも、大扉から中へ入ると、手前に土間(と言ってもコンクリート床です)が4~5メートル程あり、その奥に20~30センチ程高くなった台(=ステージ)が組まれています。

ステージは、どの壁とも接しておらず、大扉前の正面を除いた三方は2メートル程の土間に囲まれています。


大抵のステージでは、土間にテーブルやパイプ椅子を設置してその上や土間に直接機材を置き、ステージ上で撮影を行っていました。

レールを牽いてのドリー撮影も平らなステージ上で設置可能ですし、土間を広く取ってあるお陰でクレーン台車をステージに持ち込んでの撮影も可能でした。


一番奥には、通常は「ホリゾント」と呼ばれる空色に塗られた壁があります。

場所によってはブルーバック用にブルーに塗られたステージもありました。

現在ではグリーンバック用にグリーンの幕が張られていたりします。

そして、ブルーの衝立状のパネル等で部分的なブルーバックに対応しているようです。

また、セットの撮影内容によってはマンションの窓外に見える街の写真が貼られたパネルが鎮座しているステージもありました。


この何もないステージに、ベニヤ板の壁や家具なんかを設置してステージセットを建て込むのです。

ひとつのステージにいくつものセットが組まれる場合もありました。

また、ヒーローの基地の様な常設のセットもあれば、その都度建て込みとバラシを繰り返すセットもありました。


●ステージの基本(照明)

天井には、二重(=にじゅう)や三重(=さんじゅう)と呼ばれる照明設置用の足場が設置されていました。

二重は土間からすると10メートルの高さはあったでしょう。三重に至っては更にその3メートル以上上に設置されていました。

二重には手摺がありましたが、三重には手摺らしい手摺はありませんでした。

この二重や三重から固定照明が吊り下げられていました。鉄製の棒で吊り下げられているものがほとんどでしたが、中にはロープで簡易的に吊り下げられている照明もありました。

これら二重や三重は、今では法律の関係上撤去されてしまっています。しかし、二重のあった位置からの照明は確保されています。


そして、ステージの上には何本もの脚付きの照明が、光量や用途に合わせて設置されます。

重い照明等は脚自体にキャスターが付いていたりします。


●ステージの基本(冷暖房)

昔は左右どちらかの壁に業務用の大きなクーラーが鎮座していました。

暖房設備は無くて、ガンガンと言われる一斗缶の焚き火や石油ストーブ、時にはジェットヒーター等で暖を取っていました。

しかし、現在では消防法の関係上セット内部は火気厳禁になっていますので、電気ストーブまでのようです。

多分天井にでもエアコンが設置されているのでしょう。


尚、昔から天井には防火用のスプリンクラーは設置されていましたし、消火器も設置されていました。


昔の特撮番組の場合は、アフレコが基本でしたからクーラーの音なんか気にもしませんでしたが、同時録音のドラマなんかの場合のセット撮影では、本番の度にクーラーのスイッチが切られていました。

カットがかかってクーラーのスイッチを入れても、広いステージですから急には冷えません。なので、あまりにも暑ければ一度大扉を開け放って空気の入れ替えをする場合もありました。

因みに、暖房にガンガンを使うのは経済的な理由もさることながら、音が余り出ない点も大きいのと、ロケーション先で電源を確保しないでも暖を取れるのも利点なのかもしれません。


そうです。全て30年程前の状況ですので「焚き火」そのものが公認されない現代では、ガンガンも消えてしまっていると思います。


●専用常設ステージ

東京撮影所のステージには、連続テレビドラマの場合には「専用ステージ」が割り振られる場合があります。

同じセットをいちいち建て込んではバラシてを繰り返すのは時間の無駄ですので、常設セットとしてセッティングしたままにしておくのです。

刑事ドラマの刑事課の部屋や取調室。主人公の部屋。ヒーロー番組の基地セットや悪役の秘密基地等々の建て込まれた「番組専用ステージ」が存在していました。

そして、ほとんどの場合は他の番組の専用セットを使用することはありませんでした。


●京都のステージ

京都撮影所のステージは、ほとんどが決まったセットが建て込まれています。

武家屋敷、旅籠、奥座敷等々の決まったセットが常設で建て込まれているのです。

これらのセットを番組の枠を超えて共同で使用していました。


セット自体は天井は無くて壁こそ取り外し可能でしたが、柱は頑丈に組まれた物であり、軒に瓦が数段積まれても持ちこたえていました。

それどころか、片流れだけの瓦屋根を作っているセットや屋根全体を建て込んであるセットもありました。


柱は簡単には取り外せませんので、柱のキズが気になる場合は「べっぴんさん」と呼ばれる柱と同じ色に塗られた真新しいベニヤ板が張られました。

キレイと言う意味の「別嬪」と特別良い品としての「別品」からきている言葉だと思います。


●余談

セットでの撮影の際には、差し入れが入る場合があります。

通常でも製作進行からお茶やお菓子が置かれていたりしますが、これは、セット自体に飲用水道の設備がないことからの処置という側面もあるようです。

但し、今の新型コロナ禍の影響下の中では、その差し入れも常設のお茶も変わってしまっていると思います。


まだまだ書き漏らしたこともありそうですが、今回はこれぐらいでw

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