余り語られない撮影所のあれこれ(33) 「俳優列伝」vol.1「特撮作品の悪役」 その1「潮健児」「大杉漣」「石橋雅史」
★「俳優列伝」vol.1
「特撮作品の悪役」 その1「潮健児」「大杉漣」「石橋雅史」
年齢的に天寿を全うされる方も居れば、多種多様な理由により、若くして惜しまれつつもあちらの世界へ旅立たれる方もいらっしゃいます。
そんな方々に想いを馳せていますと、私が30年ほど前にお会いした方々のことも思い出してしまいました。
今回は、私がお会いした俳優の方々の中から特撮作品の悪役の方々のお話です。
実は、前々から書きたくて仕方がない内容でしたw
尚、東映で仕事をしていた時代に周りのスタッフから「役者にサインや写真をお願いするのは、スタッフとして失礼だから止めておいた方が良いぞ」と言われていましたから、サインはおろか写真を単独にしてもご一緒にしてもお願いしたことはありませんでした。
例外は、キャストとスタッフ全員による集合写真と、作品中で使用する為の写真ぐらいでした。
更に、その写真もフィルム時代ですからネガがないと予備もありませんでしたから、当時の生写真が出てきたらとても貴重品ですw
と、いうことで証拠らしいものがありませんので、その点はお許し下さいw
尚、例によって情報のほとんどが30年前ですw
今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。
●潮健児(1925.3.23~1993.9.19)
お亡くなりになる1年前に、特撮作品としては遺作となる「髑髏戦士スカルソルジャー」でお仕事をご一緒させて頂くことができました。
昔は小劇場での舞台俳優もなさっていたこともあり、色々な顔を演じ分けられる稀有な名バイプレイヤーでした。
悪役が多く、特に仮面ライダーの地獄大使が有名で、私も幼少期に観た「地獄大使の潮さん」という想いで興奮して接していました。
幼少期のテレビ画面の中でもそこそこの年齢であった役者さんとなると、側に寄るのも畏れ多いことだと思ってしまいます。
京都撮影所でバイトで参加した作品では、大御所と呼ばれる役者さんとお仕事をご一緒させて頂きました。
そんな過去があったので、どうしても年配の役者さんとの接し方としては、大御所の役者さん達と同じ様な対応になってしまいます。
しかし、潮さんは違いました。
役者経験が半端ないにも関わらず奢ることなく、ペーペーの助監督だった私にも他のスタッフ同様に接して下さいました。
撮影がオールアップした時に「今度は東映で一緒に仕事をしましょう。約束ですよ」と言って頂けました。良くあるご挨拶なのでしょうが、今となっては晩年の御本人の東映作品への出演願望が言わせた様に思われてなりません。
役者としては自分の我を通さず、役者としてのプランは監督に相談されていました。
「スカルソルジャー」の中での潮さんの役は、言葉を発しません。それは、役者として困難な役だったと思います。
潮さんの役としても異例の役だったと思います。
演じきった潮さん。流石の演技力を見せて頂きました。
公私共に尊敬する役者さんです。
●大杉漣(1951.9.27~2018.2.21)
同郷の役者さんですw
大杉さんも気さくな方で、カメラの前から離れると大阪弁(実際は阿波弁w)で、特に男性スタッフとはエッチな話題で盛り上がっていましたww
潮さん同様、舞台俳優さんから転進された役者さんですし、ご苦労をされていますので、スタッフやキャストを問わず頭が低くて、特に若手と笑い話をするのが好きだった様に思いますw
私は、北野武監督に見出だされる前の大杉さんしか知りませんが、有名になっても全く変わらなかった様です。いや、下積み時代よりももっと若手の面倒をみていた様です。
大杉さんの素晴らしさを語るのに相応しいエピソードがあります。
大杉さんは、脚本や企画が面白ければ、無名の学生監督の作品でも気さくに出演されて、ギャラは請求はするが、最後には融資と言って全額をそのままその作品に寄付されてしまうらしいのです。
自分の劇団経験等がそうさせてしまうのでしょうが、なかなか出来ることではありません。
「大予言~復活の巨神~」で、セリフはあるが本当にちょっい役という役をキャスティングしようとした時に、小林義明監督と松村カメラマンらが一緒に口に出して納得したのが大杉さんでした。
それだけ、ちょっい役でも存在感のある方で、難しい役もこなせて、芝居にも定評がある方でした。
「続こちら凡人組」でもご一緒させて頂きました。
この時に大杉さんが宴会シーンで阿波おどりらしい踊りを踊ったことが、同郷発覚の要因でしたww
実は、大杉さんのお父様は中学校の校長先生で、私の父親は高校教師でした。面識もあり、趣味が同じ「釣り」とあって、年齢が違うにも関わらず良くご一緒させてもらっていたようです。
ただ、この話は私が故郷に帰ってきて私の父親に「同郷の大杉さんという役者さんが居て…」と話した時に、「大杉先生(大杉さんのお父様)が、役者をしている息子がいると話していたことがあるぞ。」と、話を返してきて発覚したことでしたw
劇場版の平成仮面ライダーで地獄大使を演じられたことは、私としては個人的な潮さんと大杉さんの繋がりを感じ、奇遇としか言いようがない嬉しい知らせでした。
亡くなった今でも、老若男女を問わずキャストをはじめスタッフの多くまでもが慕っている役者さん。
それが大杉漣という役者なのです。
●石橋雅史(1933.1.4~2018.12.19)
石橋蓮司さんではなくて雅史さんです。
スーパー戦隊の「バトルフィーバーJ」の潮さんの役であるヘッダー指揮官の後任の関係ということで、この順番となりましたw
仮面ライダーシリーズでも多くの悪役を演じられ、特にスーパー戦隊シリーズでは「ジャッカー電撃隊」の最後の敵である鉄の爪をはじめ、多くの悪役を演じられました。
私は、Vシネマ「女バトルコップ」でご一緒させて頂きましたが、石橋さん御本人が空手家ということもあり、動きが武道家としての立ち回りでした。
メリハリのある所作とセリフは、石橋さんならではでした。
石橋さんも前途のお二方同様に気さくな方でした。
撮影の合間には、共演されていた真理アンヌさん達と他愛もない話で笑っていらっしゃいましたし、私達若手のスタッフのことも気遣って頂きました。
そして、いざ芝居となるとスイッチを切り替え、芝居へと向かう。
素晴らしい役者さんでした。
●悪役の俳優
悪役の俳優さん達は、今回紹介させて頂いた方だけではなく、皆さんと言って良いほど気さくで人懐っこく笑い顔が良く似合う方々でした。
だからこそ、悪役の俳優さん達のことが大好きです!
今回の御三方は、あえて鬼籍に入られた方々をと思い潮さんを中心にキャスティングwさせて頂きました。
御三方のご冥福をお祈りすると共に、画面に出てこない本来の顔の一端に想いを馳せて貰えると幸いです。