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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
22/191

余り語られない撮影所のあれこれ(21) ヒーロー達のマスクとスーツ vol.2

★「ヒーロー達のマスクとスーツ vol.2」


●前回(vol.1)の訂正と加筆

まず、前回の訂正です。

「アクション用」のスーツに「FRPの芯」が入っているという記載をしていましたが、指摘があり再確認を行った結果、FRPの芯は無く、全てがウレタン製であることが分かりました。

お詫びして修正させて頂きます。


尚、「アクション用」とはいえマスク(=面)は「アップ用」と同じくFRP製です。視界を確保する部分が違っています。



では、本題の前回書ききれなかった続きです。


●脱着はJAEさんの補助が必須

スーツアクターさん達が装着するスーツやマスクは、一人では装着ができず、通常装着する際は、所属会社であるJAC ジャパン・アクション・クラブ(=現JAE ジャパン・アクション・エンターテイメント)さんの「補助」と呼ばれる若手の方々の文字通り補助を受けます。


本来の補助の方々の役割は、アクションの際の着地マットの支えをはじめとしたアクションに関連する人的補助行為なのですが、吊りの為のワイヤーを引く人手にかり出されたり、先輩達のお世話としての補助も役割となっていました。

だからこそ、アクションに直接関係ないマスクやスーツの装着や脱衣の補助もJAEさんの若手の役割となっていました。


本来のスーツやマスクの脱着は、スーツやマスクを管理していた小道具さんの役割でしたが、何体ものスーツやマスクを同時に準備するのには小道具さん1名では荷が重すぎます。

そこで、JAEの若手の補助の出番となるのです。

勿論、どこでも補助をすることを余儀なくされている助監督も補助に入りますww


●スーツへの弾着(プロテクター編)

CG技術の費用が高過ぎておいそれとは使えなかった時代。

映像に写る一切の出来事は、実際の映像で表現しなくてはなりませんでした。

スーツへの弾着もそのひとつでした。

敵からの攻撃を受けて小さな爆発を起こす姿を撮影するために、小さなカプセルに火薬を詰めた弾着をスーツへセットします。

しかし、この火薬の脱着は、爆発の際にスーツへ「焦げ」と「すす」をべったりと残してくれます。そして、この「焦げ」や「すす」が落ちてくれないのです。

流石にアップ用のスーツで弾着を行うのは稀ですが、アクション用であっても「焦げ」や「すす」が残り続けるのは問題です。

そこで、「ガムテープ(=ガムテ、ガバチョ、ガバ)」の登場です。正確には「色ガムテープ(=色ガム、色ガバチョ、色ガバ)」です。

弾着を仕掛ける下に貼り、「焦げ」や「すす」をスーツへ直接付くのを妨げ保護するのです。

勿論、スーツの色と合った色ガムテープを使います。それでもなければ「ポスカ」で塗って色を作ります。

弾着のカプセルや発火装置への銅線も色を塗って隠します。

弾着は、大抵が引き画(=ひきえ。カメラを広角にしたりして対象物や被写体の広い範囲が写るようにした、一歩二歩引いた画角)で撮影されますし、30年も前ならば16㎜フィルムでの撮影ですから、ほぼほぼ分からないのですw

今でも実際にスーツへの弾着は行われる場合があるようですが、今のデジタル技術では、誤魔化すのは大変だと思います。CG処理で消すだとか修正するだとかができる時代になってきましたが、だからといって隠す努力はして欲しいのですけれどねww


弾着自体の発火の大きさにもよりますが、身体の直ぐ側で行う発火の為に大きさにも限界がありますから、ガムテープ一枚二枚くらいでスーツへダメージが通過することはありませんでした。

さらに、「焦げ」や「すす」も弾着撮影後にガムテープごと剥がしてしまえば、ほとんどスーツへ残るものはありませんでした。


弾着の位置は、プロテクター部分に限定です。

弾着位置は、カメラの位置やアクションの仕方等から操演さんが決定するのですが、最低限のルールがありました。


「マスクの中に火花が入らない場所に仕掛ける。」

「プロテクター下のウェットスーツ部分へ火花が飛ぶ可能性のある場所は極力避ける。」


プロテクターを外した黒い部分はウェットスーツが基本になっていた時代でしたから、火花がウェットスーツを貫く場合がありました。

かといっても火花の小さなひとつがウェットスーツへ極小さな穴を開けてしまい、スーツアクターさんの皮膚にチクッとさせる程度なのですが、怪我をさせることには違いはなく、また、アクション自体に支障をきたしたり、その支障から大事故に繋がる可能性もあるので、操演さんは慎重に弾着位置を決めていました。


●スーツへの弾着(戦隊ヒーロー編)

私自身はスーパー戦隊に一度も関わっていないので、詳しくはないのですが…スーパー戦隊のヒーローへの弾着が一番大変だと言われていました。

流石に生身の人間に弾着をする訳ではありませんが、マスク以外にプロテクター的な場所の無いスーパー戦隊のヒーローコスチュームは、弾着が仕掛け難いのです。

唯一可能な場所は、ベルト周りだそうです。

尚、ベルト周りはホルスターの中の銃や武器も含まれますww

胸に弾着を仕掛ける場合は何重にもガムテープを重ねたり、スーツと人との間にクッション材を入れて衝撃を緩和したりと大変だったようです。


今のCG全盛の弾着は、スーパー戦隊にとってはありがたいのかなと思います。


●補足という蛇足w

操演さんの補助は、助監督か小道具さんでした。

基本は助監督。

スーツ周りやアクションがらみのこととはいえ、弾着のセッティングは、流石に操演さんへJAEさんの補助は入りません。




今回は、スーツへの弾着が大半になってしまいましたが、それだけに、また書ききれませんでしたww


●訂正

「黒色火薬」を「火薬」へと修正させて頂きました。

「黒色火薬」ではありませんでした。


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― 新着の感想 ―
[一言] ドッカンについて 当然記載の通りなのですが、その本当の理由は人手不足からでした。 なので一番ひどい時代は豆電球処理の作品が2年くらいでしょうか、ありましたしね(笑) 私が現場で遊んでいた時代…
2022/09/20 12:53 名無しの権兵衛
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