余り語られない撮影所のあれこれ(19) ヒーロー達のマスクとスーツ vol.1
「ヒーロー達のマスクとスーツvol.1」
※注
基本は、30年前の頃のことに限定してのお話です。現在は一般的な特撮オタクよりも偏った情報しか持っておらず、スタッフとしての詳しい情報を持ち合わせていないので…ww
今回は30年前のヒーローのマスクとスーツについてのお話です。
●管理
ヒーローや怪人やロボのスーツやマスクの管理は、今では専門職の部所があるようですが、30年前は小道具さんの仕事でした。
レインボー造形さんから納品された後のメンテナンスを考えると、小道具さんぐらいにしか技術力がなかったのでしょうね。
但し、大きな補修は流石にレインボーさんへ送り返して、お願いします。
レインボーさんからの納品後は、ひとつひとつ毛布でくるんで大切に扱われました。
今の様に衝撃緩衝材が簡単に100均で買える時代ではありませんでしたから、毛布がキズを防ぐ最善の梱包材でした。
今でも品物によっては、毛布が活用されているようで、特にマスクは専用に毛布地の袋を作って入れている様です。
●素材
ヒーローのマスクとスーツは、アップ用とアクション用がありました。
アップ用は、基本的にはFRP製の硬い素材で、衝撃で直ぐに欠けたり塗装が剥げたりしていました。
これに対してアクション用は、芯はFRPですが、そこにウレタン素材を纏わせラテックスで表面を作ってある状態のものでした。
怪獣と造りは似た感じですが、芯のFRPの部分があるだけに、怪獣に比べると硬いです。
衝撃に強く、欠けることも殆どありません。
基本的には、このアップ用とアクション用のマスクとスーツを組み合わせて撮影されていました。
●組み合わせ
メタルヒーローのアップ用の場合は、
マスク、胸(から背中)のプロテクター、腰(から尻)のプロテクター、(ウェットスーツに一体型になっている)上半身のウェットスーツと腕のプロテクター、同じく下半身のウェットスーツと脚のプロテクター、手袋、靴に別れていました。
各々プロテクターは基本となるウェットスーツにマジックテープで装着していました。
胸と腰のプロテクターとマスクは、前後に分割されていて、身体や顔を挟み込んで、ピンと言われるヘアピンのデカイ様なモノで前後を留めて固定します。
アップ用ですから見えない位置で固定します。
腰は左右の上下で4点留め。
胸は左右の上の肩口と脇の直ぐ下と腰上の6点留め。
マスクは上部を引っ掛けておいて、首の左右で下から2点留め。
でした。
アクション用は、腕のプロテクターの付いた上半身ウェットスーツ、脚のプロテクターの付いた下半身ウェットスーツ、胸プロテクター、腰のプロテクター、手袋、靴、マスク。
の割で、胸のプロテクターと腰のプロテクターは、一般的な服と同じく被ったり履いたりして装着後に、マジックテープで固定していました。
マスクは、頭の上でチョウバンがあり、首の左右でパッチン留めされていました。
このアップ用とアクション用のスーツとマスクを組み合わせて撮影します。
基本はアップ用はアップ用だけで構成するのですが、バイクにまたがるやベンチに座るといった動作はアップ用の腰では不可能ですし、無理すると壊れます。
基本としては、こういう場面ではアクション用のスーツを使用するのですが、カメラがアップに寄ってくるとなると、アップ用が基本となります。
画角的に写らないのであれば腰だけ外しますし、写るのであれば腰だけをアクション用に取り替えます。
よく、物が掴みにくいので手袋だけアクション用とかに交換しましたw
●現場補修
少しのキズや色剥がれならば、現場で補修していました。
色を塗るのが基本でしたが、色合いがビミョーなものもあり色を作るのに苦労しました。
仮面ライダー1号の桜島ライダーを生み出したエピソードの苦労が、身に染みましたww
ペンキ、油性マーカー、水性マーカー(主にポスカ)等の塗料が主に使用されていました。
修理箇所によってはレインボーさんにパーツを送って貰い、補修しました。
現場にレインボーさんが直接来ることは殆どありませんから、現場で急に時間がかかる補修が発生した場合等は、補修待ちや最悪の場合はスケジュールの変更等が出てきます。
スーツもマスクもアップ用とアクション用が1セットずつしかありませんし、それを1年間の長期の撮影期間を大事に大事に使い続けるのです。
マスクやスーツに関しては、まだまだ書きたいことがあるので、今回は基本情報ということで留めておきますw