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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(18) リヤカー

★「リヤカー」


なぜ?

と、思われる方がいらっしゃるかと思いますが、撮影所には「リヤカー」は必要なものです。


単純に荷物を運ぶ用途なのですが、撮影所では利にかなった運搬車輌なのです。


まず、動力源が付いていませんから音が静かです。


同時録音をする場合のある撮影所内の撮影では、エンジン音は御法度です。

特にセット撮影での同時録音の時には、エアコンも止めてしまうルールになっていますので、夏などはカットがかかって「エアコンつけま~す」という製作助手さんの声が待ち遠しかったくらいですw

そんな所内の大量な機材の運搬は、リヤカーが最適でした。

通常は、リヤカーの前に自転車等は取り付けません。

全て人力で押して行きます。



●東京と京都

東映では東京と京都の二ヶ所の撮影所がありますが、どちらにもリヤカーはありました。

しかし、使用頻度は大きく違います。


東京=東映大泉撮影所では、普段使い的に使用している部所は殆どいませんでした。

それに対して京都=東映太秦撮影所では、殆どの部所が自分たち専用のリヤカーを持っていました。

そして、セット撮影に使用する機材をその部所毎に積んでいました。


この違いは、機材倉庫からセットまでの距離とセット前の道に関係します。


東京撮影所ではセット前まで車がつけられる場所が殆どで、ロケに使う運搬車輌をセット横等に停車させて運んでいました。

エンジン音は御法度ですが、停車させて置くだけならば問題ありませんし、そもそも特撮ヒーロー番組は、アフレコが


通常でしたから(30年前はw)、物音も関係無いのですが…ww

アフレコと違い同時録音(=同録)の場合は、本番中にセットの前を物音をたてるものが通ることすら慎重でしたから、機材は先に運んで置いて、足りない分は自分の足かリヤカーとなります。


これに対して京都撮影所では、セット前までの車輌の乗り入れに大きさの制限がつく場所が多く、セット撮影中に車輌が泊めておける場所は有りませんでした。

また、時代劇が多い京都撮影所では、ロケ撮影自体が余りなくて、セット撮影と太秦映画村という名前のロケセットでの撮影が大半でしたから、その映画村に車輌を乗り入れて機材を運ぶという訳にもいかず、自然とリヤカーでの運搬となっていったようです。



●部所毎の運搬物

リヤカーでの運搬の利点としては、セット内部にまで持ち込む事が可能ということです。

まあ、リヤカーが停めていても邪魔にならないスペースのあるセットに限りますがw


東京撮影所の特撮ヒーロー番組のセットには、木製テーブルが置かれたりしていますので、1台ぐらいならリヤカーを入れられますが、常駐させるのは邪魔になってしまう可能性が高いです。

それに比べて同時録音のあるセットでは、リヤカーに載せた録音機材が運び込まれる事があります。


しかし、東京撮影所では、常時リヤカーに機材を載せている部所は有りませんでした。

撮影部が、カメラや三脚を運ぶ為に使うのが一番多かったかもしれません。


これに対して、京都撮影所では撮影部、照明部、録音部、小道具は勿論、製作部にも専用リヤカーがありました。


撮影部は前途のようにカメラや三脚やフィルムの場合は予備のフィルム等も載っていました。


照明部はライトやライト用の脚や手持ちバッテリーライト、反射材としての発泡スチロール(=カポック)の板や黒い遮蔽板等をはじめ、照明部さんのリヤカーだと直ぐにわかるのが、金属(=アルミ)製の洗濯バサミがズラリと挟まれた状態ですw


録音部は前途の通りの録音機材の上に、マイクやマイクにつける棒などが積まれています。

尚、録音部さんのリヤカーは車イス程度の小さなリヤカーでした。録音機材を載せたまま、その前に折り畳みイスを置いて録音チーフがヘッドホンを着けて座っていました。


小道具さんのリヤカーは、何処かの屋台?か風鈴やさんの屋台?と思える屋根付きの様相でした。

時代劇ですから刀もいっぱいありますし、刀のつばや印籠、キセル、手拭い、かんざし等も揃っている今で言えば軽トラックの某移動スーパーの様な感じでした。但し、リヤカーに載せる為の枠はオール木製でした。

たまに、役者さんから預かった腕時計や眼鏡を置いてある引き出しなんていうスペースもありました。


製作部は、灰皿(現在は、撮影所内は指定場所以外は全面禁煙ですから、セット内に灰皿を運ぶことはありません)、ガンガンと呼ばれる一斗缶を使用した薪や炭の暖房器具(消防法上、こちらの暖房器具も使用禁止をされているかもしれません)、また竹箒や塵取り等の掃除道具も、セット付きと呼ばれる大道具さんのリヤカーに一緒相乗りさせて頂く場合もありました。



●共同リヤカー

撮影所内には所内のスタッフならば誰でも使用可能なリヤカーも存在しました。


昔はこんなリヤカーに怪獣や怪人のキグルミを載せて所内を運搬している光景もありました。

また、大きなカポックの塊等を運ぶこともありました。



●ターレ

東京撮影所でしか見かけませんでしたが、大道具さんには築地市場や豊洲市場で見るようなターレが一台だけありました。


流石に大きな柱等の資材までもリヤカーで運ぶ訳にはいかないでしょうし、東京撮影所ではターレの運搬でも十分可能でしたからw



●最後に

今では、災害救援の資材運搬でアルミ製の折り畳み式の小型リヤカーが見受けられますが、私が30年前に京都撮影所に入った時点では田舎でもなかなか見ない存在になっていたリヤカーが撮影所にはいっぱい有り、現役に使われていることに驚いたものでした。

実際、リヤカーを押したり引いたりした経験も撮影所に入ってからでした。





今回もそうでしたが、次回も一般的な記録に残っていないような重箱の隅をつつければ良いと考えていますww


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― 新着の感想 ―
[良い点] 重箱の隅をつつく様な記録こそ大切な物だと思います。
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