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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(180) 「『スーパー戦隊』という戦友(ライバル)」

余り語られない撮影所のあれこれ(180)

「『スーパー戦隊』という戦友(ライバル)


●ライバル

テレビ番組の作品は、同一時間帯で放送局が違うという所謂「裏番組」が本当の意味での「ライバル」なのではあるが、時間帯が同一ではなくてもジャンルが同じであれば列記とした「ライバル」でした。

制作会社が違えば本当の意味での「ライバル」なのですが、制作会社が同じで同じジャンルの番組であれば、それはそれで「切磋琢磨」としての「ライバル」と言える存在となるのです。

今回は、私が「メタルヒーローシリーズ(当時はその呼称も無く、撮影所内では「単体もの」と呼ばれていました)」などにスタッフとして参加していた時に「ライバル」としていた「スーパー戦隊(こちらも当時はこの呼称は無く、撮影所内では「戦隊もの」と呼ばれていました)」を、「ライバル」側から見た視点で語りたいと思います。


尚、例によって情報のほとんどが30年以上前のことです。

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。

また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在します。

その点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。


●同じ制作会社

映画の制作会社には、私が主に居た「東映」だけではなく「東宝」「松竹」「角川」「日活」「大映」などといった主要制作会社が存在します。

しかし、その映画の制作会社の全てがテレビ番組の制作にかかわっている訳ではなく、むしろテレビの制作会社がテレビ番組を制作していて、特にドラマとなるとドラマ制作を依頼できる制作会社に制作をしてもらうというのが一般的な流れとなっています。

また、「東宝」が「円谷プロ」に番組制作を依頼するといった映画の制作会社が関連である制作会社に映画やテレビドラマの制作を依頼するということもありました。

そういった意味では「東映」は、映画制作をはじめドラマ制作なども積極的に参入していましたし、関連企業である「東映動画(現:東映アニメーション)」でアニメーションを制作するというジャンルにまで手を伸ばし、それを活用するという「映像産業」に貪欲な企業でありました。


そんな制作会社の中では、同じ制作会社で多くの映画やテレビ番組が同時進行的に制作されています。

ある意味、作品のジャンルを超えて全ての作品が「ライバル」という存在でもありました。


●同じジャンル

かつては「東宝」と「円谷プロ」が牽引していた「怪獣ブーム」に乗って「松竹」「大映」などの映画会社のみならず「東映」でも「怪獣映画」が製作され、「特撮作品」というジャンルに多くの映画制作会社が参入しました。

しかし、現在では極論すれば、「怪獣ブーム」からのストレートな継続である「ゴジラ」「ガメラ」と、「怪獣ブーム」の姉妹作品的な「ウルトラマン」、更に等身大の「怪獣」である「怪人」と「変身ブーム」を牽引した「仮面ライダー」と多人数「仮面ライダー」という「集団ヒーロー」である「スーパー戦隊」が残っているだけとなっています。

「変身ブーム」の際には、様々なジャンルの「変身ヒーロー」が誕生し、そして激しく輝き消えて行きました。


「スーパー戦隊」と同じ制作会社=東映では多くの映画やドラマが製作されています。

それは、ジャンルは違えども「ライバル」である事は間違いないでしょう。

しかし、「スーパー戦隊」と同じ「特撮ヒーロー」というジャンルでの本当の「ライバル」も「仮面ライダー」として存在しています。

そして、かつても存在していました。

それは、「仮面ライダー」無き時代に生まれ「スーパー戦隊」と「ライバル」として存在した「メタルヒーロー」。


●裏と表

どちらがどちらという訳ではありませんでしたが、やはり「スーパー戦隊」が表とするならば「メタルヒーロー」は裏、「メタルヒーロー」が表とするならば「スーパー戦隊」こそが裏といった、自分達で作っている番組に多大な思い入れがありました。

自分達が作った番組の放送時間には、視聴できる時間帯であればテレビの前にスタッフが寄ってきていました。

蛇足ですが、「スーパー戦隊シリーズ」の放送時間は放送開始から土曜日や金曜日の夕方でしたが、1997年の「電磁戦隊メガレンジャー」の途中からは日曜日の朝へとお引越ししていました。

そして、現在とは違い30年前には所謂「撮休日」が固定しておらず日曜日にも撮影はありました。

「スーパー戦隊」のスタッフルームでは土曜や金曜の撮影が早めに終わった後に、14インチの小さなブラウン管にスタッフが集まり、自分たちの数週間前に撮った映像の本放送を見ていました。

「メタルヒーロー」のスタッフルームでも日曜日の撮影開始が遅いときや、撮休日にもかかわらず撮影準備のためや暇に任せて撮影所をうろついているだけのスタッフが、スタッフルームのテレビを見ていました。

たまに、お互いの番組を見て批評をするスタッフもいましたが、それは相手のスタッフには聞こえないところであって、ましてや陰口のようなものではありませんでした。

どちらかというと「あれは良かった」とか「どう撮った?」とか「あれはこうした方が効果的じゃなかったか?」といった前向きな見方でした。

つまり、そこには「同ジャンル」の「同業者」に対する「ライバル」としての「リスペクト」がありました。


●交わるようで交わらない

昔から「スーパー戦隊」と「メタルヒーロー」のスタッフは、監督を除きお互いのシリーズのスタッフとして携わることは稀でした。

その監督も幾人かがローテーション的に同じ番組の撮影隊に組み入れられていましたから、少なくともその番組が終わるまではもう一方の番組に携わることはありませんでした。

またまた蛇足ですが、記録さんもローテーションで撮影隊に参加しています。

監督は担当話数の撮影を終えた後に、そのまま撮影隊から離脱して編集作業に入ります。

その編集作業に監督と共に撮影隊から離脱する唯一のスタッフが記録さんということになります。

だからと言って、同じ監督に同じ記録さんが毎回付くとは限っていません。

監督と記録さん以外のスタッフとしては、たまに撮影部の一部が補助などで相手の撮影隊に加わったりすることがあったりしましたが、照明部、衣装、メイク、助監督などは少なくとも1年間は同じメンバーで撮影を続けていました。

時として何年も同じスタッフが、シリーズの撮影隊メンバーとして延々と番組を作り続けているのです。

それは、牽いてはシリーズに対しての愛情にも似た自負を育てる事になって行きます。


●交差する時代

「スーパー戦隊」を手掛けた監督が、「メタルヒーロー」で監督としてメガホンを取り、「メタルヒーロー」を手掛けた監督が「スーパー戦隊」で監督としてメガホンを取る。

決してなかった訳ではなくて、30年前は稀なことでしたが、確かに有りました。

それどころか、制作会社を超えて監督としてメガホンを取るということも有りました。


東條昭平監督が最たる方で、円谷プロで助監督から監督になり、東映のドラマや特撮作品の監督としても功績を遺されています。

しかも東映の中でも「スーパー戦隊」でメイン監督を勤めながら、「メタルヒーロー」に加えて「星雲仮面マシンマン」「兄弟拳バイクロッサー」の監督も歴任しているのです。


そして、「不思議コメディシリーズ」の終了と共に、「メタルヒーローシリーズ」にも「不思議コメディ」のスタッフが流入して来ます。

更に、「メタルヒーローシリーズ」の終了と共に「平成仮面ライダーシリーズ」が始まることになりますが、そこで多くの新たなスタッフが入り、スタッフの新陳代謝が行われました。

それは、「スーパー戦隊」のスタッフにも及び、多くの入れ替わりが行われることになったのです。


コレは、お互いを「ライバル」として「切磋琢磨」してきた「同じジャンル」の「同じ制作会社」の作品スタッフとしては、交流を更に多く導く結果となりました。


●あとがき

私は、もうひとつの「スーパー戦隊」との「ライバル」、「不思議コメディシリーズ」にも参加していました。

まぁ、「不思議コメディ」は、「戦隊」にも「メタル」にも相手にされてもいなかったでしょう。

その分、「不思議コメディ」のスタッフには大きな精神的「自由」がありました。

ある意味「孤高の存在」で、他の番組を「ライバル」という存在として意識してもいませんでした。

別にお高く留まっていた訳ではなく、「不思議コメディ」という作品とその作風は、ある種「異質」であり、「スーパー戦隊」や「メタルヒーロー」とは一線を画すほどに低予算で、同列に並ぶ事すらおこがましいという風潮すらありました。

そして何より、「スーパー戦隊」や「メタルヒーロー」のスタッフやキャスト達とは、スタッフルームですら距離がありました。

同じ東映東京撮影所内にありながら、「スーパー戦隊」や「メタルヒーロー」がテレビプロ第一制作なのに対して「不思議コメディ」はテレビプロ第二制作ということからも、スタッフルームが全く別場所にありました。

更にレギュラーセットも「スーパー戦隊」や「メタルヒーロー」とは違う場所にありました。

この事からも他の番組のスタッフやキャスト目にする事すらありませんでした。


それに対して、私が「メタルヒーロー」に居た時には、「スーパー戦隊」のスタッフルームは真隣に有り、スタッフルームの前を「スーパー戦隊」のキャスト達やスタッフ達が往来していましたし、お互いに対して事務的にしても挨拶をしていました。

更にレギュラーセットまでお隣り同士でした。

これは、相手を意識するには充分でした。


だからこそ、振り返れば彼らスタッフやキャスト達は、「同じ制作会社」で「同じジャンル」の「同じ時期」を「同じ様なことに悩み」「同じ様なことに切磋琢磨」していたと思えてくるのです。


それは、「スーパー戦隊」が同じ戦場を戦う「戦友」であり「ライバル」でもある存在だと思える感情を生んでしまうのです。

少なくとも私にとっては……

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