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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(171) リテイクT-9「ファンレター」

余り語られない撮影所のあれこれ(171)リテイクT-9「ファンレター」


●ファンレターの今昔

現在のようにSNSが発達していなかった30年ほど前では、直にお会い出来ない人に想いを伝える方法は電話か手紙が一般的でした。

現在では、SNSによって本来繋がる事もなかった雲上人との間に縁を結ぶ事も可能となりました。

それは現代の「ファンレター」と呼べるものとも言えるでしょう。

しかし、実物としての「ファンレター」を本人の手の中に届け、個人的に読んで貰いたいと想うのもまたファンの心理だと言えます。

今回は、まだSNSどころかパソコンも発達していなかった時代の「ファンレター」に関して語ってみたいと思います。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前です。

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在します。

その点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。


●ファンレターが届く。

東映東京撮影所では、どんな番組にも「ファンレター」は届いていました。

ハガキや手紙は勿論、品物付きの「ファンレター」もありました。

子供番組では、子供からのお絵描きや折り紙やクレヨンで書かれたお手紙が殆どでした。

自作のヌイグルミや編み物のマフラーを贈られる方もいらっしゃいました。


30年以上前の「ファンレター」は、テレビ番組を放送しているテレビ局の住所に送って貰うという方法でした。

番組の最後にテレビ局の住所と番組名を出して「ファンレター」を送って頂くのです。

その全ての「ファンレター」は、それぞれの対象となる人物や番組の制作会社へ送られます。

「ファンレター」の宛名がキャストの個人的な名称であっても番組名が書かれているのであれば、所属事務所へ回される訳ではなく番組の制作会社へと送られました。

届いた制作会社は、封を切り中を確認した後に番組毎に仕分けされて、各番組の制作ルームに届けられます。

封を解くのは、「ファンレター」の宛先を細かく確認する意味も有りますし、中身に危険物が入っていないかどうかのセキュリティ的な意味も有ります。


制作会社では、制作部の制作主任や制作進行さんが役者毎に仕分けをします。

そして基本的には、制作部が役者さんに直に届けます。

役者さんの居る部屋やメイク部屋に届けるのです。

また、仕分けや配達を助監督が手伝う場合もありました。

たまに、制作部に届いたばかりの郵便物を、役者自身が参加して仕分けしてしまう時もありました。

しかし、基本的に役者に仕分けを手伝わせる事はありませんでした。

実は、制作部としては「ファンレター」が役者にとって、ある意味人気のバロメーターともいえると考えているので、他の出演者と比較されることは避けたいものだと思い、それを配慮していたのかどうか、役者に仕分けさせることは基本的にしていませんでした。

個々人に渡されたファンレターを比較し合うことまでは、どうしていたのかは知りません。

何にしても、ファンレターの増減はその時々で違いましたから、そこまで一喜一憂することではありませんでした。


●ファンレターの贈り主

特にスーパー戦隊シリーズやメタルヒーローシリーズへの「ファンレター」は、可愛いモノが多かったと記憶しています。

尚、私が居た30年前は仮面ライダーシリーズは休眠中でした。

「ファンレター」の数としては、やはりイケメン俳優や美人ヒロインに集中していました。

特に子供向け番組ということもあり、子供からの「ファンレター」が一番多かったのは事実です。


ですが、子供さんが小さくて文字も書けない程の年齢であった場合、絵を描いて気持ちを伝えるのですが、ほとんどの場合は、お母さんが手紙を添えたり、一文を添えたハガキとなります。

この場合、ほとんどは子供の補助的な文章なのですが、1~2割の割合で子供よりはお母さんの方が積極的に「ファンレター」を書いて来られたり、子供が観ていた番組を観て個人的に「ファンレター」を出すお母さんもいらっしゃいました。

また、子供が「ファンレター」を出している風の内容の手紙の内容なのですが、親の方が書いた文章が明らかに熱量が大きく、自分が「ファンレター」を出したかっただけとも取れる内容の郵便物も存在しました。


スーパー戦隊もメタルヒーローも、基本的には男児向けとみなされていましたから、ファンレターの多くは男児でした。

しかし、女児からの「ファンレター」が皆無であった訳ではありませんでした。

勿論、女児の場合は、お母様方と同じくイケメン俳優に対する「ファンレター」が大半でしたが、ヒロインの女優さんに対する「ファンレター」にも女児やお母さんからのものを見る場合もありました。

女児達にとっては憧れのお姉さん。

お母さん達にとっては頑張っている妹。

そんな対象への「ファンレター」ですから、可愛らしさとかよりも「頑張って下さい」という励ましが中心でした。


「ファンレター」の贈り主は、上記の様に子供達やそのお母さんというのが殆どでしたが、子供でもお母さんでもない贈り主からの「ファンレター」もちゃんと存在しました。


ヒロイン宛の「ファンレター」は年長の特撮好き(所謂「大きなお友達」)の男性からのモノも多く、だからといってヒーローにも男性の「大きなお友達」からの「ファンレター」が贈られて来ていたのも確かです。


女性の「大きなお友達」からも「ファンレター」は来ていました。

イケメン俳優のヒーローや脇役の方々への「ファンレター」は当たり前ですが、ヒロインに対しても女性の「大きなお友達」からの「ファンレター」がありました。


●ファンレターの宛先

「ファンレター」の宛先として子供番組の場合は、前途した様にヒーローにもヒロインにも「ファンレター」は贈られて来ていました。

スタッフ宛ての「ファンレター」は…

殆どありませんでした。

まあ、届いても監督宛が殆どでした。


勿論、「ファンレター」の宛先としては主演俳優宛てが多く、「大きなお友達」になればヒロイン宛てが殆どだったのは否定しません。

尚、「特警ウインスペクター」の撮影の際での男女共に「大きなお友達」からのファンレターの上位が「宮内洋」氏であったことも否定しません。


単発の2時間ドラマには「ファンレター」は殆ど届きません。

何せ撮影期間も短いですし、放送日も決まっていない作品もありましたから、放送後に「ファンレター」が届いても制作会社にはキャストはおろかスタッフですら既に居ない状態だからです。

ですから、放送時にも「ファンレター」自体を募集していません。

それでも届いた「ファンレター」は、制作会社を通して、キャストの所属事務所へと転送されていた様です。


●ファンレターのその後

「ファンレター」は、全て宛先になっている個々人が持ち帰りますが、たまに2~3人の役者に寄せられた「ファンレター」等も存在しました。

その場合は、宛先になっているキャスト間の話し合いで誰の所有にするかを決定していました。


番組全体に寄せられた「ファンレター」は、キャストとスタッフに回覧したり、スタッフルームに一定期間張り出したりして、それが済めば制作部が番組終了まで保管していました。

「ファンレター」に同封されたモノで、スタッフが気に入ったモノは、スタッフルームに飾られ、番組終了後も飾り続けられている場合もありました。

但し番組終了後は、基本的には処分されてしまう場合が多かったと思います。


尚、「ファンレター」への個人的な返信は基本的には御法度でした。

それは、返信があった方とそうでない方が存在し、特別感や贔屓、または疎外感を与えない様にとの配慮によるものでした。

現在のSNSでのキャストやスタッフの投稿にも基本的に返信はありません。

同じ作品のキャストやスタッフ以外にフォロー自体もありません。

これも返信と同じ配慮です。

基本的には現役のキャストやスタッフでは、なかなか返信やフォローを下さる方はいらっしゃいません。

そこには、自分のバックにある所属事務所や制作会社への守秘義務や配慮も関わっているのです。


まあ、現役を退いた方は個人的に仲良くされているファンへのフォローや返信をされている方もいらっしゃいます。

それは個人的な事になるので、ご自分の決められたルールの中でやり取りをなさっているのだと思われます。

その中で面白いのは、現役時代の作品のキャストやスタッフとの相互フォローは勿論のこと、他の作品のキャストやスタッフとも結び付かれて、意外なコラボレーションが生まれていたりする事だったりします。

また、キャストやスタッフ間とのやり取りの中で、昔話が出て来たり、昔のメイキング写真がポロッと出て来たりする事もあります。

ファンには良い世の中になったと思います。


●あとがき

「ファンレター」は、その差出人がファンであるが故に、その内容的には現場のキャストやスタッフにとっての励みに繋がります。


キャスト個人への想いは勿論のこと、自らの演技への反響なども読み取る事ができます。

そして、今後の演技への糧となるのです。

スタッフに向けての「ファンレター」も様々な指針と励みに繋がります。

特に若手のキャストやスタッフであれば、尚の事でした。

惜しむらくは、「ファンレター」が届く頃には、放送から1〜2ヶ月程経過してしまっている点でしょうか。

コレは幾ら現在のSNSを駆使しても変わらぬ「時差」なのです。


尚、現在放送中の作品の「情報公開」の取り決めや「守秘義務」としての取り決めは厳しく、撮影風景の様なメイキング写真となるスチールの掲載はできません。

東映では顔出しスーツアクターのスーツ姿もモザイクが必要になるくらいに御法度です。

ですから、スーツアクターさん達の投稿は少なく、あっても撮影後の飲み会の写真だったりします。

ロケ地の場合は、撮影場所がSNSから特定されて撮影の妨げにならない様な配慮も必要となります。

ですから、その日の撮影の合間にSNSへの投稿は殆どありません。

大体が後日になって掲載されています。

それにしてもSNSへのキャストやスタッフの投稿は、SNSのなかった時代では考えられなかった一種の「ファンレター」への返信と言えるモノだと思います。

寧ろキャストやスタッフによる「ファンへのレター」なのかもしれません。


「ファンレター」は、キャストにつけスタッフにつけ、目を通しているのは確かです。

可愛らしい絵や綺麗な文字の文章、添付されているプレゼントのサプライズ。

開けるだけで楽しくなります。

あ、食品のプレゼント添付は受け付けていませんでした。

もしも、食品が添付されていた場合は破棄か個人的責任のもとに食べられていました。

まあ、郵便の到着日数から腐敗の危険性もありますし、万が一を考えての配慮でした。


個々人に渡る「ファンレター」は、善きにつけ悪しきにつけその後の人生を一変させるものになる場合もあります。

その点に配慮されて、自筆の手紙やSNS等に「ファンレター」を書いてみるのも良いかもしれませんよ。

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