余り語られない撮影所のあれこれ(15) 箱馬
★「箱馬」
撮影業界や演劇業界で使われている、文字通り「箱」。
アメリカではアップルボックスとも呼ばれる。文字通りリンゴ運搬用の木箱である。
●材質
基本的な材質は木で、木製以外は見たことがありませんw
高級なのはサクラ材。
普通は厚みのある合板で作られています。
●サイズ
サイズは千差万別です。
基本は
1尺×1尺×6寸=303×303×181
1尺×1尺1寸×6寸=303×333×181
1尺×1尺6寸×6寸=303×485×181
1尺×1尺7寸×6寸=303×515×181
あたりだそうですが、東映では1尺6寸か1尺7寸あたりを使っていたハズです。
●組み方
サイズが同じでも箱の組み方も千差万別で、一番面積の広い面を最長部と同じ長さの板2枚で塞ぎ、真ん中を開口するタイプが東映で使用されていました。
板2枚が短い辺と同じ長さのモノも有りますが、コレは開口部分が広くとられる場合が多く、足まで入ってしまう位のモノもあります。
踏み台に使う場合の多い東映では、危険ということもあり、殆ど使われていませんでした。
逆に一番面積の広い面を全面覆ったモノも存在します。
●色
色も千差万別です。
基本は無垢の木の色ですが、現場や会社の名前やマークやナンバリング等々をペイントしてあったりします。
また、全面や一部に色をペイントしたものもあります。
ブルーバックやグリーンバックの前に専用に置かれる箱馬は、バックの色に合わせたブルーやグリーンに塗られています。
●用途
用途も多岐に渡ります。
足場。
踏み台。
重ねて階段。
被写体を持ち上げる為の台。
等々のように基本的には台としての用途なのですが、自然と「椅子」としてしまっています。
また、箱馬を平台を持ち上げる台座に使う場合もあります。
この場合、台に載るために箱馬を重ねて階段状にして上がります。
尚、このように箱馬を組み合わせたり、箱馬に板や棒状のものをくっつける場合は、釘で打ち付けます。
コレが箱馬がプラスチックにならず、木製のままの理由だと思います。
簡単で軽量なものを箱馬に張り付ける場合は、大型クリップを使う場合もあります。
この場合のクリップには、照明さんの使うクリップが使われる場合が殆どです。
つまりは、その場にあるものを適当に使って仕事をこなしているのですw
箱馬は、基本的にはセットで使われます。
ビデオやフィルムの撮影所のセットやカメラスタジオには、普通に複数個常備されています。
個数は少ないですが、ロケにも持って行きます。
この場合は、基本は簡易椅子としての用途で、たまに被写体を持ち上げる足場として使われます。
●補足1
箱馬は頑丈でなければならない。
弱い材質で作られた箱馬や板の厚みが薄い物は、足場としての用を為さないのです。
自作の箱馬というのも有るようですが、撮影用は重量物を支える台座ですから、頑丈さが命です。
●補足2
販売もされていますが、撮影所等では大道具さんが作ってくれる場合もあります。
合板なんて使わず一枚板を使った超頑丈な逸品も作ってくれていたりしますw
箱馬のレンタルもあります。
●補足3
撮影所では、撮影部さんが計測に使うメジャーを除けば、その殆どが尺や寸といった日本古来の長さの単位を使います。2×4住宅以前の昔ながらの大工さんと変わらないです。
重さの単位の貫や匁は聞きませんね。
尺寸は、また次の機会にw
Q&A
Q:
セッシューという呼び方は
今は死語になったのでしょうか(^_^)
A:
被写体を持ち上げるテーブルや板やそれを構成する箱馬までを含めて「セッシュー台(=セッシュorセッシュー)」と呼びます。
身長差のある俳優同士の2ショットや顔のアップを撮影する際、構図上のバランスを整えるために背の低い俳優を踏み台に立たせることが原点で、早川雪洲さんが語源らしいです。
転じて「箱馬」自体を「セッシュー」「セッシュ」とも呼ばれます。
「ウマ」と呼ばれるのが通常でした。
発言者が仕事をしてきた場所や経験年数により、ひとつのモノを他の呼び方で呼ばれる場合があるので、その度に「えっ?」と聞き返して怒られながら覚えていきました。