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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(158) 「特殊なロケ飯『地方ロケ飯』と『海外ロケ飯』」

余り語られない撮影所のあれこれ(158) 「特殊なロケ飯『地方ロケ飯』と『海外ロケ飯』」


●ロケーション

ロケーション(撮影)=ロケ(撮影)は、撮影所のステージセット外で撮影を行うことで、撮影所内であってもステージセットの外であれば、たとえ撮影所内の建物を使用しての屋内撮影であっても「所内ロケ(撮影)」と呼ばれ、野外にセットを組めば「オープンセット(撮影)」、単なる所内での野外撮影は「オープン(撮影)」呼ばれていました。

ロケは基本的には「日帰り」が基本ですが、長距離を長時間かけて移動して撮影する場合もありました。

特に首都圏を越えた泊りがけの遠方への「地方」や「海外」という場所へのロケーションというものも時として存在しました。

コロナ禍も薄らいできた昨今。

民間の方々も抵抗なく県境を越え、国境さえ超えていくこともはばかられなくなってきました。

この年末年始も、帰省を含めて「地方」や「海外」に出て行かれる方もいらっしゃるかと思います。

そしてテレビドラマや映画の撮影においての「地方ロケ」や「海外ロケ」に対しても解禁されたかのようになってきたのも事実です。

そんな「地方」や「海外」における醍醐味は、その地方でしか体験できないような文化であり、景観であり、食事であると言えるでしょう。


●ロケ飯

ロケとして撮影所から撮影に出ると、大抵は「ロケ弁」という形でお弁当が無料で支給されました。

その殆どが朝のロケの出発までにロケバスに積み込まれたお弁当でしたから、昼になる頃には冷えてしまっている様な状態でした。

朝の撮影所出発が早すぎる場合には、流石にお弁当が間に合わないので、制作部さんがロケの現地でホカ弁屋さんを探してスタッフとキャスト分のお弁当を確保してくれていました。

普段のロケの早朝出発も6時台が殆どでしたから、「お弁当のポパイ」さんには感謝しかありません。

こんなロケ弁も東京近郊の高速道路で2〜3時間圏内の東京23区外、群馬、栃木、神奈川ぐらいのモノで、更には「同じロケ地」で何時間か撮影をしているスケジュールで、ロケバスをはじめとするロケ車両数台が駐められる場所があり、お弁当を広げられる場所でなければなりません。

そういう意味では、泊りがけの「地方ロケ」には「ロケ弁」は積み込めませんから、3食を制作部が用意しなければならなくなるのです。

今回は、今迄語らせて頂いた「撮影所の飯事情」では拾って来なかった「地方ロケ」や「海外ロケ」での「飯事情」を語らせて頂きます。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。


●地方ロケ飯

現在の「地方ロケ」において、地元の「フィルムコミッション」との連携はとてもありがたいものです。

撮影場所の紹介だけではなく、地元の役場などの官庁関係や撮影場所との仲介やエキストラの手配をして頂ける「フィルムコミッション」も珍しくなく、時には「ロケ弁当」の手配の相談や仲介にまで知恵を貸して頂ける事すらあるようです。

しかし、30年以上前の「地方ロケ」では「フィルムコミッション」という存在自体が珍しく、ロケ場所として撮影場所を借りている施設や店舗などに聞いたり、制作部さん達が先行して現地に乗り入れて、自分たちの足を使って「ロケ弁当」を手配していました。

だからこそ、地方ロケでは制作部が別行動が出来るようにロケバス等のレンタカーとは別にセダンタイプやハイエースタイプのレンタカーがレンタルされているのが一般的でした。

勿論、毎回「ロケ弁当」という訳でもなく、地元の大型飲食店やドライブインなどに大挙して押し寄せるといった少し強引なこともしていました。


私がテレビドラマの撮影で長崎にロケに行った際に、ロケ場所としてお借りしていた中華料理店(皿うどんが有名なお店)で、午前中のロケーション終了後に食事(ロケ飯)をその中華料理店を貸し切って行ったという例もありました。

勿論、スタッフもキャストも「ロケ飯」ですから自腹ではなく「制作会社持ち=無料」でした。

このロケでは鹿児島でのロケ中にもラーメン屋でとんこつラーメンを頂きました。

替え玉までしてしまいました。


また、宿泊先が決まっている場合は、その旅館やホテルとタイアップしていたりしますから、その宿泊先が「ベースキャンプ=拠点」となるのが一般的でした。

朝食は勿論ですが、旅館やホテルの中をロケセットとして使用させて頂いている場合や、宿泊先のすぐそばで撮影している場合などは、宿泊先で昼食を頂く場合もありました。

夕食は宿泊先の食事というのが定番でした。

まぁ、宿泊施設が老舗旅館で地元のPRも兼ねたタイアップとなれば、撮影初日の夕食ではスタッフとキャストが大宴会場に並べられて旅館の支配人や町長達とともに大宴会という事もしばしばでした。


では、ベースキャンプである宿泊先から離れてしまえば昼食はどうしていたのかと言えば、昼頃にロケ先になる側にある町のお弁当屋さんを、事前に制作部が見つけておいて30人分とか40人分とかを大量発注しておくいて、頃合いを見計らって引き取りに行くという段取りが取られました。

30年以上前ですから今ほどにコンビニも多く無く、地方に行けば行くほどコンビニはおろかお弁当屋さんもまばらな時代でした。


また、そんなお弁当屋さんも無く、集団で貸し切れたりする食堂やドライブインといった施設もない場合には、「バレメシ(自分で好きな店を見つけて食事を摂る事。基本的には全額自腹)」となるのですが、普通の「バレメシ」ではなくて「◯◯円までは制作持ちです」と言われて、食後に領収書を貰い制作部さんのもとに持って行って精算する方式でした。

例えば、「500円まで」と言われた食事に対して「700円」の領収書を持って行っても支払われるのは「500円」だけでしたから、「200円」は自腹となりました。

「500円以内」だと、その金額だけが支払われました。

因みに領収書を提出しないと精算してくれませんでしたし、「地方ロケ飯」でなくても関東近郊のロケ飯での「バレメシ」でもこのスタイルはありました。


尚、地方ロケ飯で旅館やホテルに泊まる際には地元料理が夕食や朝食に出る事も度々でした。

Vシネマの「女バトルコップ」では「大谷石資料館」内での撮影の際に関東近隣撮影にも関わらず宿泊ロケとなり、確か大谷観音傍の旅館「盤水館」さんに宿泊したと思います。

盤水館さんは「鯉こく」等の鯉料理が有名で、無理を言って「鯉こく」と「鯉のあらい」を夕食に付けて頂いた想い出があります。

私は鯉料理が初めてだったので、良く覚えています。

松田優さんとロケバスの屋根の上で呑んで語ったのも、この宿泊でした。


「大予言 復活の巨神」では長野ロケで長野の旅館に泊まりました。

朝食に取り放題の漬物として出されていた「野沢菜漬け」が

美味しくて、それまでは手が遠退いていた「野沢菜漬け」が一気に好物になったくらいでした。

やはり発祥地の本場モノには敵いません。


●地方飯

全く制作部からの精算がない飯もありました。

それは、撮影に伴わないプライベートな食事という事になり、大抵はお酒を伴ったものでした。

つまり、スタッフやキャスト達とスナックやバーに行ったり、地元の名物を食べたりといった食事です。

これらは、撮影に関連しませんから全て「自腹」でした。

しかし、ペーペーだった私は、余り自分で支払った記憶がありません。

それは、先輩スタッフやキャストさんの「おごり」であったという事に他なりません。


火曜ミステリー劇場「美人女子大生妻探偵と田舎刑事」の第二作「特急ひたち奥久慈温泉殺人ルート」で奥久慈温泉の旅館とタイアップした撮影の際は、近藤正臣さんの呼びかけでスタッフ達と旅館に隣接するスナックで呑んで歌い、主演の松本伊代さんを呼んで当時付き合っていて芸能界の一部で話題となっていた「ヒロミ」さんとの仲を色々と聞いて囃し立てていました。

余談ですが、ドラマの撮影が1990年で、松本伊代さんとヒロミさんの交際発覚の雑誌のスクープから記者会見とご結婚が1993年ですから、本当に交際開始間もない頃だと思われますが、その頃は世間では交際すらも秘密で、私も近藤正臣さんと松本伊代さんの「で、どうなの?例の彼とは?」という会話から始まる近藤正臣さんの「イジリ」で知ったぐらいでした。

松本伊代さんはヒロミさんの話題を振られると、少女の様に純粋に恥ずかしがり終始デレデレな様子で、隠し切れないくらいに「好き」が伝わって来ました。


九州地方へのロケだった、高橋英樹さん主演の土曜ワイド劇場「超豪華フェリー殺人事件 鹿児島-沖縄航路にトリックが…双眼鏡の中の女」では、前途した長崎や鹿児島でのロケ飯もありましたが、鹿児島でタイアップした旅館では、撮影が夏だった事もありスタッフ達と船越英一郎さんや山崎美貴さん達キャストが缶ビールと花火を持ち寄り旅館の駐車場で呑んで騒いだ記憶があります。


●海外ロケ飯

私の撮影所生活での海外ロケは、台湾だけでした。

そんな台湾には、お弁当屋さんはあるものの撮影隊での昼食では見受けませんでした。

殆どのロケ飯は、地元のホテルや大きな飯店でスタッフやキャストが揃って食事をするスタイルでした。


その手配だけでも大変だったと思いますが、そこには「撮影コーディネーター」という方々の存在が不可欠でした。

有料で「撮影場所=ロケ地」の斡旋、交渉はもとより撮影許可申請のお手伝いもして頂ける現地撮影の為のサポート組織でした。

日本における「制作部の仕事」を全てサポートして頂いていました。

ロケ地の手配のみならず撮影隊の移動の為のレンタカーと運転手の手配、撮影機材の補完、宿泊施設の手配と食事の手配といった細部に至るまでサポートして頂き、日本における「フィルムコミッション」以上の存在でした。

お陰様で、撮影中の「ロケセット」としてお借りした別荘でケイタリングによる昼食をセッティングして頂いたり、朝食にサンドイッチを手配して頂いたりして本当に助かりました。


更に、「ロケ飯」ではないのですが、台湾の警察署前でのカースタントを「本物の警察署」と警察署前を借り切って撮影を行うという、日本では考えられない事までセッティングして頂きました。


●海外飯

海外ロケでの「ロケ飯」ではない「飯」と言えば、「呑み」と決まっているのですが、台湾ロケの際には高雄市の夜の街で「モツ鍋」にハマっていました。

数日間同じホテルで宿泊しながらの高雄市内のロケでしたから、夕食後にスタッフ数人と一緒に毎晩の様に屋台の「モツ鍋」を突きながらビールを引っ掛けていました。

問題なのは、この屋台の「モツ鍋」屋さんは閉店が早いという点。

撮影が毎回同じ様な時間に終わる訳もなく、時としては夕食を抜いて店に急いでも閉店していた事もありました。

夕食はもう一度頼んで出して貰いました。


台北市の夜に日本へのお土産を買いに出た街で買ったサツマイモのフライドポテトも美味しかったです。


●蛇足「京都のロケ飯」

基本的に東映京都撮影所での「ロケ飯」は殆ど存在しませんでした。

だからといって「制作部が用意する無料の昼食」が無い訳では無く、ロケ地でのお弁当による「ロケ飯」という状況がなかなか成立しないという事なのです。

それは、「ロケ地」が余りにも京都近郊に近い場所に限定している事と、ステージセットでの撮影が基本である事から、昼食の殆どが京都撮影所内の食堂で行われていたからなのです。

食堂で朝食を摂って、午前中にロケ地に出発、昼食を摂るために撮影所に帰って来て、昼食後はステージセットでの撮影とか、昼食後もロケ地へ出発という事もありました。


そして、撮影に伴った朝食や昼食に関しては、制作部から「朝食チケット」や「昼食チケット」が支給されていました。

「朝食チケット」は「モーニングトーストセット」以内の金額の食事を1セット無料で提供され、「昼食チケット」は「昼の日替り定食」以内の金額の食事を1セット無料で提供してもらう事が出来ました。


京都撮影所にも「ロケ弁当」が無い訳ではありませんでしたが、その殆どが「仕出し弁当」でした。

おかずとご飯が別の容器に入っているタイプで、ご飯は温かいまま提供されていました。

大抵は、ロケ地まで配達して頂きましたが、ロケ地が分かりにくい場合は制作部さんが自家用車でロケ地まで運ぶ場合もありました。


●あとがき

明けましておめでとうございます。

皆様。新年をどうお過ごしでしょうか?

昔の撮影所には祭日も無く延々と撮影が続いている印象があるかと思われますが、流石に撮影所にも正月はお休みがありました。

まぁ、無いというか撮影はあるけれどもずらせて休みを取る方もいらしたようですが、それは休日や祭日こそが稼ぎ時な御職業の方々と何ら変わりないと思われます。

30年前の当時の私の仕事のスケジュールとして、撮休が連続する事が珍しい事であった為に、年に一度となる帰省の喜びとともに収入と食事の不安も抱える事となる時期でもありました。


物価の高い大都会では、地方にとってはそこそこの収入であっても家賃はもとよりエンゲル係数が高くなってしまいがちでしたから、合法的に頂けるモノであれば「ロケ弁」でも有り難いモノでした。

撮影があれば、夕食を除いて「ロケ飯」という名の「タダ飯」にありつける状況で、時には昼食の「ロケ弁」の余りを夕食用に頂いて帰る日もありました。

更に「地方ロケ」や「海外ロケ」ともなれば、三度々々の食事が「ロケ飯」として保証されます。

「地方ロケ」にも「海外ロケ」にも「撮休」は存在しませんでしたから、本当に毎日という事になります。

流石に「地方ロケ」では「バレメシ」がたまにありましたが、少なくとも私が体験した「海外ロケ」では「完全なバレメシ」はありませんでした。

だからこそ食事の心配も無く、更にはどうしても観光地を巡る事になってしまう「地方ロケ」は、旅気分も相まって大好きでした。


以前に書いた「撮影所の飯事情」の際には、撮影所から出発する際の「ロケ弁当」を中心とする「飯事情」を語らせて頂き、「ロケ弁当」以外の飯事情を撮影所の近辺ぐらいで語らせて頂きました。

しかし、「地方ロケ」や「海外ロケ」という、ある種「特殊なロケ」の「飯事情」を書き忘れている事に気が付き、追記という感覚で語らせて頂きました。


私が約4年間の撮影所生活で体験した宿泊を伴う「地方ロケ」や「海外ロケ」のロケ先は、静岡県、長野県、栃木県、愛媛県、九州地方(福岡県、長崎県、佐賀県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県〜徳之島)、そして台湾でした。

古巣の京都撮影所ではありましたが、私にとっては宿泊を伴う「地方ロケ」でもあったので京都府も入れて置きましょう。

中には本来は日帰りの撮影場所だけれど、特別に1泊だけしたという「地方ロケ」もありました。

しかし、何処へ行っても「メシ」だけは付いて回ります。

だから、その土地の綺麗な景色と伴に、「その土地の味」もまた大切な思い出なのです。

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