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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(149) 「犯罪じゃないよ。劇用車の『偽造ナンバープレート』」

★余り語られない撮影所のあれこれ(149) 「犯罪じゃないよ。劇用車の『偽造ナンバープレート』」


●天ぷらナンバー

所謂「天ぷらナンバー」と呼ばれる「偽造ナンバープレート」が存在します。

車輌に元々装着されているナンバープレートとは違ったナンバープレートを自動車やバイクや作業用車輌に取り付けて、公道を走行するというモノなのですが、その殆どは盗難車輌や違法車輌を隠す為に使われていました。

天ぷらは衣をつけて揚げられるため外見からは中身の具材がわかりません。

そこから転じて外見からは素性がわからない違法車のナンバープレートのことを「天ぷらナンバー」と呼ぶようになりました。


今回は「偽造ナンバープレート」の話ではありますが、盗難車輌や違法車輌の様な「天ぷらナンバー」の話ではありません。

撮影用の劇用車に取り付けられていた「偽造ナンバープレート」のお話です。

勿論、やましい話はひとつもありません。

多分……。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。


●偽造ナンバープレートとは?

撮影用の劇用車にも本来のナンバープレートは付いています。

しかし、車輌の設定上、本来のナンバープレートの地域のナンバーではそぐわない場合がありました。

そんな場合は、本来装着されているナンバープレートとは違った「作った」ナンバープレートを、本来のナンバープレートの上に装着して誤魔化していました。


例えば、神奈川県警に仕立てた劇用パトカーのナンバープレートが品川ナンバーという状態では違和感が生じてしまいます。

勿論、そんな状況は絶対にないという訳ではありませんが、視聴者に違和感を与えてしまいますので、そんな場合は「横浜ナンバー」の架空のナンバープレートを作って、本来の「品川ナンバー」の上から両面テープ等を使って貼り付けて、違和感をなくしていました。


また、同じ劇用パトカーを他のシーンで別の車輌として撮影するといった場合などは、地域だけではなくてナンバーも変えて、同じ車輌とは思わせない様にする小さな抵抗というか努力をしていました。

勿論、パトカーだけではなくて、他の劇用車でも同じ事をしていました。


正規のナンバープレートではありませんから「偽造ナンバープレート」という事になりますが、撮影現場では単に「ナンバープレート」と呼んでいました。


●正規のナンバープレートの封印

ナンバープレートは、バイクの場合は後ろだけに着いています。

このナンバープレートは、ネジで留まっているだけですから、ネジを外せば簡単に取り外せます。

車輌の場合は、前と後ろにナンバープレートがあります。前のナンバープレートはバイクと同様にネジ留めだけですから外す事はできますが、後ろのナンバープレートは各都道府県の運輸支局(陸運局)が「アルミキャップ」によって「封印」されています。

このアルミキャップには各都道府県の漢字が1文字もしくは2文字刻印されていて、陸運局が封印した証明となっています。

アルミキャップは、ちょうどナンバープレートを取り付けているネジの上にある為に、アルミキャップの封印を外さない限りは、ナンバープレートを外せない構造になっています。

しかし、このアルミキャップは簡単に封印を破る事が出来ます。ですが、その途端に公道が走れなくなり、公道を走ると法令違反となり違反点数や罰金の対象となります。

つまり、封印を外したナンバープレートで走っている車は、盗難車輌の疑いをかけられても仕方なくなるのです。

尚、軽自動車にはこのアルミキャップの封印はありません。


劇用車の為に作られる「偽造ナンバープレート」の為にでも、このアルミキャップの封印は外せません。

ですから、後ろの「偽造ナンバープレート」はアルミキャップの大きさの大きな穴が開いているのが特徴です。


●偽造ナンバープレートの材質

正規のナンバープレートはアルミで作られています。

それに対して「偽造ナンバープレート」の材質は大きく分けて3種類が存在します。

それは「ベニヤ板」「アルミ板」「アクリル板」の3種類です。


「ベニヤ板」のナンバープレートは、正規のナンバープレートの上から両面テープ(通称:リャンメン)で貼り付けて使用していました。

車輌後部のナンバープレートは、「アルミキャップ」の封印がありましたから、ベニヤ板にもアルミキャップの大きさに合わせた穴が空いていました。

流石に「ベニヤ板」のままでは使用できませんから、半光沢の白ペンキや緑ペンキを塗ったり、カッティングシートや色ガムテープを貼って下地を作って、その上に地域名やナンバーを書いたり貼ったりして作っていました。


通常のナンバープレートと同じ材質の「アルミ板」で作られた「偽造ナンバープレート」の場合、車輌前部は正規のナンバープレートのボルトを外して付け替える方式を取っていましたが、車輌後部は「ベニヤ板」と同じくリャンメンで貼り付けていました。

勿論、ベニヤ板と同じくアルミキャップ用の穴が空いていました。

流石に「アルミ板」の場合は、地域名もナンバーもプレスされていました。


残りの「アクリル板」ですが、コレの場合は、「ベニヤ板」からの切り替えという感覚と、「ナンバープレート型のナンバープレート隠し」という感覚が強いモノとなっています。

アクリルプレートはそのままでは光沢がありますから、カッティングシートを貼る等して下地を作り、その上から地域名やナンバーを貼り付けて作られていました。


●偽造ナンバープレートのナンバー

「偽造ナンバープレート」のナンバーは、基本的には地域名とナンバー共に、一般のナンバーと同じ様なナンバーとなっていました。

ですから、ナンバーの前の平仮名一文字も現在使用されていない「お」「し」「へ」「ん」の四文字は基本的には使用しないのですが、敢えて使用して一般のナンバーと違えている場合もありました。

因みに「お」は「あ」との誤認識を避けるため、「し」は死を連想させるため、「へ」は屁を連想させるため、「ん」は発音しづらいため使用を禁じられているといわれています。

また、一般に使用されていても意味のある「わ」ナンバーは使用していません。

これは、「わ」ナンバーがレンタカーとしてのナンバーだからです。

劇用車にはレンタカーの場合も多く、明らかにレンタカー然とした「わ」ナンバーは「偽造ナンバープレート」には使用していないのが通常です。


また、ナンバー自体も一般的なナンバーの法則を使用しますが、敢えて法則を無視して一般的には使用していないナンバーにする場合もありました。

例えば、一般的なナンバーには「0」は先頭の数字には使用しないのですが、ドラマ「おみやさん」の主役・渡瀬恒彦さんが乗るレギュラー劇用車のナンバーには「03-83」が使用されていました。

「おみやさん」の語呂合わせという小道具さんの遊び心ですw

このアレンジで「お 3-83」のパターンもあったとか……

最初は、レギュラー劇用車のナンバーを間違わない為の策だったとか…


ナンバーは、毎回同じ様なモノが使用されていましたから、たまにナンバーを変更する場合もありました。

カッティングシートがあれば良いのですが、30年前では簡単に安価に小スペースのカッティングシートが手に入る訳もなく、大抵は緑と白の色ガムテープで代用してナンバーを変更していました。

変更し易い数字としては「3」「6」「8」「9」「0」がありました。

「3」↔「8」、「6」「9」↔「0」が比較的容易でした。

他の数字や文字や記号を変更する場合には、簡易的に緑や白のマジックで描く場合もありました。

「ベニヤ板」や「アクリル板」は、数字や文字がフラットな状態でしたから、この様な変更は比較的容易でした。

それに対して「アルミ板」は、数字や文字や記号がプレスされていましたから、誤魔化すことがし難くなっていました。

それでも白や緑のカッティングシートや色ガムテープを使って誤魔化していましたが、プレスのデコボコによる僅かな影はどうしようもありませんでした。


究極的には、白や緑のカッティングシートや色ガムテープで数字自体を完全に隠してしまい、数字を「・」にして、大きくナンバープレートの印象を変えてしまっていました。


●ナンバープレートとデジタル技術

劇用車に使用する車輌には、ロケ地までの移動を容易にするため公道を走れるように通常のナンバープレートを付けていることが多いのですが、いくら社用で使用するといっても緑ナンバーの交付対象にはなりえなく、また消防車や緊急車輌の様な特殊車輌の形状をしていても「8」ナンバーの交付対象にもなりえないので、通常のナンバーが交付されていて、撮影中のみ架空の番号を付けた劇用の「偽造ナンバープレート」を貼り付けていました。


今も昔も劇用車を一般の道路上で撮影するには、様々な規制や条件がありました。

現在も公道で撮影する場合には、道路使用許可を所轄の警察署などに申請して許可を得ます。

しかし、パトカーや救急車等といった緊急車両の劇用車がその特殊な外見の為に一般市民の誤解を招き、街中でのトラブルや勘違いの元になり易いという事が指摘され、警察などの規制が厳しくなり、道路使用許可を申請しても赤色灯を点灯させての緊急走行や撮影用ナンバープレートを貼った上での公道上での走行シーンの撮影や、緊急車両の劇用車自体の撮影が認められないことが出てきました。


そのため近年になると、これらの規制に対応するため、撮影時には認められたナンバープレートを使用しておいて、後日編集時にCG等による合成処理を行なって、設定に合ったナンバーにしたり、赤色灯を消灯もしくは取り付けない状態で撮影したものをCG処理で点灯状態にするといった、デジタル技術を加えて規制に対応する状況が増えてきている様です。


●ナンバープレート隠し

実際に使用可能なナンバープレートが付いている劇用車であっても、様々な要因からナンバープレートを誤魔化さなければならない場合もありました。

一番多いのは、犯罪者の劇用車として使用する場合でした。

劇用車としては、その作品の上だけの設定として使用されているのですが、使用される車輌は撮影後もそのまま一般公道を走り続ける訳ですから、特に犯罪者の車輌として使用した場合などは、撮影後の使用車輌への誤解や風聞を考慮して、従来のナンバープレートの上に「偽造ナンバープレート」を被せて、隠してしまう配慮が為されていました。


また、特撮作品に使用されるヒーローが乗る劇用車の中には、大きな改造が施されておらず、正規のナンバープレートが交付されている車輌も存在します。

そんな劇用車を、交付されているナンバープレートのまま撮影する事は、非常に稀でした。

ヒーロー然とした車輌とする為にも、従来のナンバープレートを隠してナンバープレートとしては成り立たない文字だけのプレートを貼り付けるなどといった対処をしていました。


●あとがき

「仮ナンバー」を使用しての車輌の移動や撮影という事も行われていましたが、使用目的や使用期間の申請項目が厳しいのが現状です。

だからこそ、「キャリーカー」を使用して車輌を移動し、私道や私有地の様な周囲を隔離した場所で車輌の走行を撮影するといった状況になってきています。

また、前途した様にナンバープレートを「偽造ナンバープレート」に張り替えたりしての撮影の許可が下りにくくなっている現状では、公道での車輌撮影を車輌本来のナンバープレートで行なったり、車輌撮影自体を控える状況にもなってきています。


CG等のデジタル技術の向上などもあり、もしかすると劇用車への「偽造ナンバープレート」の貼り付け自体が「過去の話」となり、実物の「ナンバープレート」の貼り付けや付け替えといった行為が撮影現場で見られなくなる可能性すらあるのです。

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