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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(144) 「助監督じゃないの?『監督補』『監督助手』『副監督』『准監督』の違いとは」

★余り語られない撮影所のあれこれ(144)

「助監督じゃないの?『監督補』『監督助手』『副監督』『准監督』の違いとは」


●監督ではない

昔から撮影現場には「監督」ではなくて「監督補」や「監督助手」という役職がありました。

更に最近見かける様になった撮影現場の役職に「副監督」「准監督」があります。

勿論、「監督」とは違う役職ではあるのですが、一般的にはその違いはなかなか伝わりません。

今回は、そんな不思議に聞こえる演出部の役職について語ってみたいと思います。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますww

その点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。


●助監督とは違う

そもそも「助監督」とはどう違うのでしょうか?

助監督は、監督の演出補助の役職の様に思われていますが、その演出補助の仕事以外の雑用的な仕事が多く、演出補助の仕事としてはエキストラへの演技指導や歩くタイミング等といった簡単なものぐらいなのです。

そして「助監督」は、基本的にチーフ、セカンド、サードの階級が存在しますが、「監督補」「監督助手」「副監督」「准監督」はそれぞれ単独の役職であり、階級も存在しません。

また、基本的に「助監督」は「監督未経験者」の役職です。

しかし、あくまでも基本的であって、「監督兼任助監督」という方もいらっしゃいますので、絶対「未経験者」とは言い切れません。

中には「専任助監督」という方もいらっしゃいます。

それに対して「監督補」「監督助手」「副監督」「准監督」は基本的には全て「監督経験者」です。

但し、「監督」と言っても「撮影監督」や「アクション監督」や「特殊技術監督」という方もいらっしゃいますので、一般的な「監督経験者」とは違うかもしれません。


●監督補と監督助手

たまにスタッフロールに監督の後ぐらいに「監督補」や「監督助手」というテロップを見かける時があります。

「監督」の助手という感覚ですから「助監督」と間違われ易いですが、基本的には「助監督」的な雑務をすることはありません。

一般的には、本来の「監督」が詳しくない分野の補助をする為に置かれる役職です。

ですから、他分野のエキスパートが「監督補」に付きます。


私が実際に知っている「監督補」は、実写とアニメの融合させる映像を撮る映画の撮影の際に、実写しか撮った事のなかった「監督」に「アニメ監督」の経験のある方が「監督補」として付いたという方でした。


また、「監督補」も「監督助手」も「監督」を補うという役職ですから、「監督」が役者等の出身で監督経験のない場合や主役を兼務している場合にも置かれます。

つまり、「監督代行」が可能な役職という事になります。

ある意味に於いては「監督」よりも「監督」らしい人物とも言えますが、あくまでも「監督」ではないので、「最終決定権」はありませんし、簡略化された作品紹介やスタッフ紹介の場合は「監督」だけが表に出てきます。


中には、本来「監督補」や「監督助手」を置かなければならない状況にも関わらず、スタッフのどこを探してもいないという場合もあります。

その場合の殆どは「チーフ助監督」が「監督」経験者で「監督補」や「監督助手」を兼ねている事が多かったです。


「監督補」が置かれて、それでも足りない場合は「監督助手」が置かれますから、序列としては一般的には「監督補」が格上となります。

しかし、ここで注意が必要なのは「監督助手」です。

「助監督」を総称して「監督助手」と表記する場合があるという事なのです。

「監督補」である「チーフ助監督」を「助監督」と表記し、「セカンド助監督」以下を「監督助手」と表記する場合があるということなのです。

この場合の殆どは「チーフ助監督」に「監督」経験が無く「監督補」と表記しづらかったり、「チーフ助監督」としての雑務が課せられていたりする場合があるからだと考えられます。


尚、テレビドラマで「監督補」や「監督助手」を見かける事は、本当に特殊な場合を除いてまず無く、殆どは映画の撮影現場で置かれる役職となっています。

もしも見かけても、上記の様な「助監督」の総称としての「監督助手」ぐらいだと思われます。

何故ならば、テレビドラマに「監督補」の様な「助監督」に課せられた雑務をしない役職を置く予算的な余裕がないからだと思われるからです。


●副監督と准監督

近年、実写特撮映画等のスタッフロールで見かける様になった「副監督」と「准監督」ですが、この役職は本来「アニメーション業界」で使用されている役職です。

「監督補」と同じく「助監督」の様な雑務は課せられていません。

それどころか「副監督」に至っては、「監督」との「共同監督」の意味合いまで入っている場合すらあるのです。

この場合、「監督」としてのオファーは「監督」にあり、「監督」だけでは撮影現場を纏めるには大所帯であったり、複雑であったりする場合に「監督」が「監督代行」を任せられる「副監督」を指名するのです。

つまり、「監督補」の様な「監督経験者」が指名されるのが一般的です。


更に、「副監督」の場合も「監督補」の様に「監督」を補う形ですから、「監督」に知識を補助する他分野のエキスパートが指名される事が殆どの様です。

この様に他分野のエキスパートを役職に付ける事は「准監督」にも同じ事が言えますが、「副監督」の様な「共同監督」という意味合いからは除外される事の方が多い様です。


つまり、序列としては「副監督」が上で「准監督」がその下という事になります。

教授→副教授→准教授と似ていて、教授と副教授は能力的にも拮抗していて、准教授はあくまでも補助としての役職という事になります。


これら「副監督」や「准監督」は、今のところ実写映像作品では「庵野秀明監督」作品にしか見かける事はありませんが、これは彼がアニメーション業界出身である事が由来しているからだと思われます。

それでいて庵野監督自身が「監督」の実務経験や最新の技術的な知識の乏しい「実写の特殊撮影技術」や「実写CG技術=VFX技術」のエキスパートが「副監督」や「准監督」に起用されている様です。


●役割と責任

「監督補」「監督助手」「副監督」「准監督」のいづれも基本的な役割は、「助監督」的な雑務ではなく、作品を如何にして「円滑」に撮影していくのかを考えて「監督」を補助していく事に尽きます。

つまり、「監督」の「考え」としての「意向」を如何にして映像に起こさせるのかを、制作会社や他のスタッフと「監督」の間に入って「翻訳」するのが最大の「役割」と言えます。

だからこそ「監督」を理解し、「監督」の言動を制作会社や他の多くのスタッフにも理解してもらえる様に「調整」し「翻訳」していく為にも、「監督への理解力」と「スタッフや制作会社の理解力」の質や程度を知っていなければならないと言う事なのです。


通常のテレビドラマの撮影現場では、この「翻訳作業」は「助監督」が担っています。

連続ドラマならばスタッフも余り大きく変わらずに毎回参加して居ますから「監督」の「意向」も伝わりやすく、余り複雑な「翻訳」は必要なかったりするのですが、単発ドラマや映画等の「監督」とスタッフとの「理解度」に差が生じる場合等では「翻訳作業」は大変になってきます。


ですから「映画」等の大きな作品を撮影する多くの場合、「監督」は自分への「理解度」が大きくて「翻訳力」が大きなスタッフを指名して「専属チーム」を創っていたりします。

これは、助手レベルでの変更はあっても「撮影技師=カメラマン=撮影監督」「照明技師=照明監督」「録音技師=録音監督」「記録係=スクリプター」「演出助手=助監督、監督補」「アクション監督」等の多くの「技師レベル」のスタッフには、その「監督」の「常連スタッフ」という方々が集められる場合があるという事なのです。


この様に「監督」の考えを現場スタッフに「翻訳」して伝える役割の「監督補」「監督助手」「副監督」「准監督」といった「演出助手」は、作品全体の完成度に対する「責任」に対しては大きく関与していない様に一般的には認識されていす。

確かに「監督」が「最終決定権」を持っている以上は、作品の「現場責任者」はあくまでも「監督」であり、制作側はプロデューサーが「責任」を負います。

だからこそ一般的には「技師レベル」や「演出助手レベル」のスタッフが世間的に批判の対象になる事は薄いですが、裏方を知っている者ほど「監督」や「プロデューサー」だけが作品に対する「責任」を負っているとは考え難いのです。


「監督」の「意向」を作品として「消化」し「昇華」する事が出来るのは、「現場スタッフ」であり「制作会社のスタッフ」の個々の力なのですから…


●あとがき

今回の「演出助手」としての役職と同様に、「役割の細分化」が進められている映像業界に於いては、昔は存在していなかった役割や役職が増えて来ています。

現に、特撮ヒーロー番組のスタッフには「スーツ管理」というヒーローのスーツを管理・メンテナンス・手配する専属スタッフが存在しています。

また、それまでテレビドラマ等では余り見なかったCGを取り扱うVFXスタッフも、2000年以降に追加されたスタッフです。

しかし、そんな分かり易い内容の「役割」を名前に冠した「役職」ではなく、今回の様に「何となく判りそうで判らない役職」というモノも増えてきました。

更に、同じ映像業界でも、アニメーション業界と実写映像業界の役職には同じ名前の役職が多くありますが、仕事内容が全く異なっている「制作進行」などの役職も存在しているのです。


先ずは「違いが良く判らない」「何をしているの?」そんな疑問を懐いて、調べてみて下さい。

そうする事で「スタッフロール」だけでも楽しめる様になると思います。

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