余り語られない撮影所のあれこれ(13) 特撮番組の実走車
★「特撮番組の実走車」
特撮作品には多くの乗り物が登場する。
飛行機や車やバイクといった見慣れた乗り物も、特撮作品の中のヒーローが乗るとなれば、装飾品で盛られてド派手に着色された乗り物が多くなる。
そのヒーローのバイクや車のチェイスシーンが最近様変わりしてきている。
元来、ヒーローの乗る車やバイクは、多くの場合、実際の車やバイクに装飾やペイントを施したものであり、実際に走行が可能なものである。
巨大ロボットに変形したり、実際の乗り物から改造するには無理なデザイン等の場合は、ミニチュア撮影に託されるが、実際に走行できる乗り物は、ヒーローと現実の世界を繋げるのに役立っている。
さて、この実走行可能な乗り物が、公道を走れなくなっている。
デザイン的にペイントの塗り替え位ならば、改造車輌とはならないので公道を走行できるのだが、装飾品が取り付けられて改造車輌としてしまうと、
公道走行が制限される。
道路交通法での規制がかかるのだ。
昔は、撮影として道路使用許可を地元の警察署に提出し、道路を一定区間通行止めにするなどの安全確保をして走らせていた。
その際に改造車輌が走行するかどうかではなくて、撮影用に道路という場所を切り取って借りる感覚が撮影所側にあったのでしょう。
昔に遡る程にその感覚は顕著で、50年も前になれば、公道を改造車輌が我が物顔で走っていましたw
ナンバープレートも無く(汗)
そうです。
公道を走行する際は、ナンバープレートが必要なのですが、そのナンバープレートは車検が通らないと発行されません。
改造車輌は、この車検をクリアしないものが大半で、その場合は現地までキャリーカーで運送されて、公道以外を走るシーンが撮影されていました。
車検をクリアするために、改造を最小限にしたり、装飾パーツを後付けして撮影時だけ装着する様にしたりという努力が為されてきました。
しかし、近年、公道を走らせない撮影が増えて来ました。
これは、道路交通法や道路使用許可に関する規制が強くなり、「撮影です」といった三ツ葉葵の印籠の効果は、全く効かなくなっているからです。
(特撮作品に出てくる様なド派手な)改造車輌の走行が公道で出来ないのです。
改造車輌が車検を通過すること自体が殆ど出来なくなった為と、いくら使用許可を申請しても、通行規制をして改造車輌を走らせたりする撮影行為自体が許可されなくなって来たのです。
その為に、改造車輌の実走行は、私道や施設内道路を使用させてもらっての撮影に限定されてきています。
先日、スーパー戦隊のヒーロー達が搭乗する実物走行車輌が、近年減ってきていると感じ、Twitterのフォロワーさん達の協力の下に調査したところ、西暦2000年前後からの減りが顕著だと感じられました。
これは、道路交通法の改正時期に重なります。
仮面ライダーはバイクがなければライダーではないと
いう認識が強いために、実物改造車輌の走行撮影がなくなりはしないでしょうが、デザインに手を加えて車検の通る範囲での改造や、公道以外を走る撮影になっているのは映像を観ても顕著です。
さて、そんな改造車輌でもまだ撮影の名目で公道を走れていた時代。
撮影に使われる車輌は、劇用車と呼ばれていました。
パトカー等は赤色灯部分をカバー等で覆い、側面の警視庁や◯◯県警といった文字は、現地でカッティングシールを貼ったり、シール貼りした上に更に白い目隠しで覆って撮影現場に自走させていました。
現場では、偽装のナンバープレートを実物のナンバープレートの上から貼り付けて、架空のナンバープレートを作り上げていました。
この偽装ナンバープレートは、木製のナンバープレート大の板に白い塗装を施し、カッティングシールで文字や数字を入れたものでした。
フィルム時代はこれぐらいでも誤魔化せましたが、デジタル時代になるとナンバープレートも金属製になり、実物と遜色ないものへと変わってきています。
車検を通り自走できる車輌が全て自走していたのではありません。
バイクは、基本的にキャリー輸送でした。
ナンバープレートは車検を通過した本来のモノで、外装は布で覆いがかけられているとはいえ、撮影以外で公道を自走する実物車輌が見られた時代でした。
今は…
全てキャリー輸送かもしれません。しかも車輌自体は全面カバーで、撮影用に輸送途中だなどとは思わないでしょう。
そして、現在のCG技術の発展は目覚ましく、ナンバープレートの付け替えを行わなくともCGで変更可能だったりするらしいですが、CGの負担が多いことを考えると、まだまだアナログで行っている撮影も多いのではないかとも考えられます。
ヒーローの乗る改造車輌自体をCGで作り走らせるケースも出て来ています。
道交法改正や規制を考えると、そのことの方が多くなるのではないかとも思われて仕方がありません。
ウルトラマンなんて味方の防衛組織自体が存在しなくなった為に、特殊改造車輌が画面に登場する機会も無くなっています。
尚、ホンダ、スズキ、マツダ等々の車輌提供会社の変遷理由については分かりません。
時代と共に、社会の変遷と共に撮影方法や被写体までもが変貌していきながら、それでも撮影は続いて行くのですww
●Q&A
Q:
マットビハイクルが如何に秀逸だったことやら┄となりますかねぇ
A:
70年代は、特撮番組に先進的なデザインの車やバイクを提供する車輌メーカーがあったりしたと聞いた気がしますw
当時の特撮番組人気によって、幼少期から車輌メーカーの名前を覚えて貰う為に提供を申し出たりしたらしいです。
当時は公道を走れて当たり前な感覚なので、デザインは別問題でしょうねw