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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(131) 「実は特殊な小道具『メガネ』と『腕時計』そして『靴』」

★余り語られない撮影所のあれこれ(131) 「実は特殊な小道具『メガネ』と『腕時計』そして『靴』」


●装飾係

小道具さんは、本来「装飾」と呼ばれる部署に所属しています。

そして、その殆どが映像制作会社の社員ではなくて、「協力会社」とも呼ばれる「外部業者」さんがスタッフとして撮影に参加しています。

斯くいう私も、当時は撮影スタッフを派遣する会社に所属している「協力会社」の契約社員でしたw

そんな「装飾」さんの担当は、セットやロケ地の小物装飾品の手配から「消えもの」と呼ばれる撮影に使用する食品の手配、更にキャストの身に着けるモノの手配までがお仕事でした。

このキャストが身に着けるモノの中でもややこしい特殊な小道具が「メガネ」と「腕時計」と「靴」でした。

今回は、何故これらの小道具が特殊なのかを語ってみたいと思います。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。


●キャストの装飾品

キャストが身に着けるモノは、撮影に使用する装飾品という事で、装飾係=小道具係が揃えて準備するのが通常でした。

頭の上から言えば、帽子、メガネ、イヤリング、ネックレス(ペンダント)、カバン、指輪、ブレスレット、財布、靴などとなります。

衣装や役柄によっても持ち物装飾はガラッと変わってしまいますから、主要なキャストの装飾品は衣装合わせの際に決めてしまうのが通常でした。


尚、昔のヒーロー番組などではヒーロースーツや戦闘員のスーツや武器までが装飾係の担当でしたから、準備するだけでも大変でした。

「明日は、戦闘員5人の予定だから編み上げブーツが5足、戦闘員マスク5個」とかを、前日に確認していました。

今では、このヒーロースーツ関係やロボットやヴィラン側のスーツや武器に至るまで「キャラクター管理係」のお仕事になっています。


●メガネ

キャストの装飾品に関して特に特殊なモノが、「メガネ」です。

キャストの役柄や衣装に合わせるのは勿論です。

「伊達メガネ」と呼ばれる度が入っていない「メガネ」ならばフレームやツルの形状や色合い装飾だけで済みます。

しかし、キャスト自身が視力が悪い方ならば別になります。

キャスト自身がコンタクトレンズを入れて「伊達メガネ」を掛けられるのならば、何の懸念も無いのですが、視力に合わせて更に役柄や衣装に合わせた「メガネ」を用意するのは、装飾係としては予算や制作日数的にも難しくなります。

ですから、殆どの場合「メガネ」はキャストがお持ちの「メガネ」を拝借する事になります。

この場合でも、キャスト自身が常時掛けられている「メガネ」をそのまま役柄の「メガネ」として使用できるのならば問題はないのですが、役柄的に合わない「メガネ」であれば、キャスト自身がお持ちの「別のメガネ」を役柄の為だけに拝借する事になるのです。

それでも役柄に合った「メガネ」が見つからない場合は、役柄に合った「伊達メガネ」を装飾係が用意して、キャストにはコンタクトレンズの装着をお願いする事になります。


こういうことに慣れている「メガネ」を掛けられているキャストさんは、幾つもの「メガネ」を御自身で所持されていて、役柄に合いそうな「メガネ」をチョイスして、幾つか衣装合わせの際に持参してくださる方もいらっしゃいました。

例えば「大杉漣」さんは、後自分の視力の度数に合った「メガネ」を5〜6個メガネケースに入れて衣装合わせの際に持ち込んで、自分が役柄や衣装に合うと思った「メガネ」から順に掛けて見せて、監督に了承を貰っていました。

そして、監督からのOKを貰った「メガネ」は、小道具係か衣装部がお預かりするのが通常でした。


勿論、これは撮影の際に「忘れた」「間違えた」といった問題が発生しない様にする為の処置で、キャストの方も手慣れていて「一筆書いて下さい」なんていう方は皆無でしたし、それ程制作サイドを信用してくれていました。

確かに「破損」「汚す」といった危険もありますが、そういった場合はお預かりした部署が責任を持って「修繕」「弁償」「買い替え」等を行っていましたし、それらの保証ができかねる「高額なもの」「一点もの(思い出のあるものや貴重品)」「貸出不可なもの」は、キャストの方で保管し撮影の際にご持参されることを約束してもらうという処置が高じられていました。

勿論、普段使いされている「メガネ」で「予備」も無い場合も、キャストさんがご持参して頂く事になっていました。

そして、メインキャストでもなく装飾品である「メガネ」に関しても特に気に掛けないキャストの場合は、現在掛けている「メガネ」で必然的に決定する事になるのです。


●装飾係のメガネ

装飾係が所持している「メガネ」の殆どは、一般的なメガネの形状をしたモノの「伊達メガネ」です。

ですから「サングラス」は、一般的には装飾係が用意します。

しかし、この「サングラス」もキャストが所持していて持参する場合があります。

そういった場合の大体は、たまたま衣装合わせの際に掛けて来られた「サングラス」を監督が気に入ったり、「サングラス」や「メガネ」に強い「こだわり」を持たれているキャストさんでした。


特殊な形状や色をした「メガネ」も少なからず所持しています。

ソレは、「時代劇用のメガネ」などに代表される「一般的には入手が出来にくいメガネ」です。

「教育ママ用」「特撮の悪役用」「装飾が派手なフレーム」などといった「一点もの」が中心です。

殆どの場合は、視力の悪くないキャストの為に用意されているモノですから、「伊達メガネ」でした。


●腕時計

「腕時計」の殆ども装飾係が用意します。

「腕時計」がキーアイテムになっている場合は勿論、映るも映らないも関わりなく装飾係が用意するのが一般的でした。

キャストの役柄や衣装、男女の差によっても様々な「腕時計」が必要でしたから、数が足りないとかイメージに合うものがないとなれば、新規に購入となる場合もありました。

中には、他の装飾会社から借りてくるという事もありました。


「メガネ」とは違って「腕時計」は映り込む可能性が低く、手元が映る場合に映り込むぐらいでしたが、役柄に合っていない「腕時計」をしないでおくことが先決でした。

何故ならば、いざ手元を撮ろうとした際に役柄と合わない「腕時計」を着けていたとしても、既に撮影済みの映像の中に少しでも映り込んでいる場合はチェンジすることができなかったり、撮影済みの方を撮り直しという事態になる可能性があるからなのです。

会社の重役クラスが安っポイ「腕時計」をしているとか、逆に平社員が高級な「腕時計」を着けているとか、必然性もなく女性が男性モノの「腕時計」を着けているとかといったチグハグさは、視聴者に疑問を与えストーリーや観てもらいたい視点から考えをズラさせてしまう危険性が出てくるのです。


勿論、「腕時計」もキャストさんが所持しているモノを借用したりして使用する場合もありました。

「メガネ」まではいかないまでも「腕時計」にこだわりを持つキャストさんもいらっしゃいましたから、衣装合わせの際に数本の「腕時計」を持ち込まれるキャストさんもいらっしゃいました。


現在では、スマホの時計を頼りにして「腕時計」を持たない層も増えてきましたので、全ての男女のキャストが「腕時計」をしている訳では無くなっているのも確かです。


蛇足ですが、時代劇での「腕時計」はご法度です。

しかし、周りに時計のないロケ地などというのも珍しくありませんから、殆どのキャストさんやエキストラさんも「腕時計」を着けて撮影現場に来られます。

ですから、時代劇の装飾係さんのところには、段取りや練習段階から「腕時計」と「メガネ」置き場が出来上がりました。

慣れたキャストさんは、「腕時計」を袖で隠れる二の腕辺りに巻いてみたり、「腕時計」を腕に着けずに懐に忍ばせていたり、いっそのこと懐中時計にされている方もいらっしゃいました。


●靴

「靴」も基本的には装飾係が用意していました。

役柄に合ってサイズの合うモノを装飾係が何点か用意して、キャストや監督と相談して決めるのです。

「靴」の場合、役柄や衣装に合ったモノを撮影現場まで履いて来られるキャストさんはまずいらっしゃいませんでした。

殆どがご自分が履き慣れた「靴」を履いて現場入りして履き替えたり、衣装替えの際に履き替えるのが一般的でした。


しかし、中には足の悪いキャストさんもいらっしゃいますし、その様な方の「靴」は特殊な仕様のモノもありましたから、そんな場合はキャストさん御本人の「靴」をお借りする事になりました。

そして、特殊な仕様の「靴」しか履けないキャストさんは、役柄に合った特殊仕様の「靴」を数足作られてお持ちの場合もいらっしゃいました。

ある種、特殊な度の「メガネ」というモノと変わりが無いのかもしれません。

こういった場合も装飾係がお預かりする事が基本なのですが、大抵の場合は御本人が現場まで履いて来て頂けたり、持参して履き替えられたりする事の方が多かったと記憶しています。


時代劇の撮影の場合は、時代に合った履物が装飾係の方で用意されていますから、衣装替えの際に履き替えてもらうのが一般的でした。

しかし、草履や下駄では冬場は寒く、温かい足袋を履いたりして工夫されていました。

勿論、本番までには脱がされますが…


●エキストラ

撮影現場に入られるキャストには、エキストラの方々もいらっしゃいます。

一般的に、このエキストラの方々は俳優養成所やエキストラ専門の派遣会社から参加していただいていました。

たまに「内トラ」といって、スタッフをエキストラ等のキャストにする場合もありました。

そんなエキストラの方々は基本的に「通行人」約でしたから、衣装や装飾品は自前でした。

事前に「通行人」以外の「工事作業員」「工場従業員」「警備員」などのエキストラが必要な場合は、衣装部や装飾係がサイズ違いの衣装や「靴」や道具を用意する場合もありました。


勿論、時代劇のエキストラの方々は衣装からカツラから履物や持ち物まで、全てを撮影所が用意しなければなりませんでした。


●あとがき

今回、「メガネ」「腕時計」「靴」を「特殊な小道具」としたのは、「キャストさんから私物をお借りする可能性の高い小道具」だからなのです。

基本的には「持道具」と呼ばれる小道具である「メガネ」「腕時計」「靴」は、全て装飾係がキャストの為に揃えなければならない「撮影の為の小道具」です。

しかし、キャストさんの「こだわり」や「身体に合ったモノ」という観点から、「御本人の私物」をお預かりする場合がある小道具という事なのです。


尚、上記の一部に書かれている様に、御本人の私物の装飾品や小道具をお預かりする場合は、装飾係がお預かりするのが本来なのですが、「腕時計」や「メガネ」「サングラス」等の小物の持道具は、キャストが着ることになる上着のポケット等に入れて(「メガネ」や「サングラス」はメガネケースに入れて)保管されている場合もあるので、衣装部預かりという場合もありました。


実は、衣装にも同じ様な場合があるのですが、それはまた別の機会に……

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