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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(104)「コロナ禍における撮影現場のガイドライン(前編)」

★「コロナ禍における撮影現場のガイドライン(前編)」


●質問

今回の話は、私が経験した撮影所時代にはなかったことなので、いつものお決まりの言葉は書かないでも良いかと思いますが、あえて掲載しておきます。


そして、今回の話は先日のSF60の会場に於いて受けた質問に端を発しています。

既に30年以上前に撮影現場を退いた元スタッフに、ここ数年のコロナ禍の撮影所の状況を心配して質問してくださる方がいらっしゃったのです。

それも、ひとりだけではなくて複数人が…

私も現在の撮影現場のコロナ対策を知りたいと思い、その影響が現場の進行に支障をきたしていないのかが心配になっていた一人でした。

その時は、知る限りの知識で予想も踏まえて答えていたのですが、改めて調べ直してみました。

今回は「コロナ禍における撮影現場のガイドライン」を語ってみたいと思います。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。

また、今回は多分に推測が混じっています。実際の撮影現場の状況とは異なる可能性があることも併せてご了承ください。


●資料

資料として「東映東京撮影所の新型コロナウィルス対策に関して(東映株式会社東京撮影所)」「映画撮影における新型コロナウィルス感染予防対策ガイドライン(一般社団法人日本映画製作者連盟)」「日本テレビドラマ撮影ガイドライン(日本テレビ)」「ロケ撮影の円滑な実施のためのガイドライン(内閣府、警察庁、消防庁、国土交通省、文化庁)」を使用させて頂きました。


●ガイドラインの作成

令和2年(2020年)3月28日(5月4日改定)に政府から出た「新型コロナウィルス感染症対策の基本的対処方針」を踏まえ、「新型コロナウィルス感染症対策の状況分析・提言(新型コロナウィルス感染症対策専門家会議・令和2年(2020年)5月4日」において示されたガイドライン作成の求めに応じて、各社や各団体は独自のガイドラインを作るに至りました。


●撮影所への出入り

撮影所に出入りする段階からコロナ対策は始まります。

これは通常の飲食店や商店に入店する際と変わらない「体温測定」と「手指の消毒」が行われているという事です。

東映東京撮影所の場合、通常であれば正門と西門が出入りできるのですが、コロナ禍になり対策が始まると、正門だけが入所場所になりました。

但し、出ていく際には西門からでも大丈夫なようです。

そして、「スタッフ」や「ゲスト」といった首から下げる認識票が渡されます。

これは、「京都アニメーション放火事件」に端を発する入所者の確認の為で、コロナ禍になる前から既に実施されていました。常時出入りするスタッフには、この認識票が支給されている人もいるようです。

だからといって「体温測定」と「手指の消毒」は免れません。

勿論、入所される際には基本的に毎回になります。

尚、この「手指の消毒」においては、入所時だけではなくて、ステージセットの出入り口をはじめ、各建物内の出入り口にも設置されています。

更に、ロケーション先のロケセット内への出入りにおいても実施されています。

ここら辺りは、我々の日常生活の中の通常店舗やショッピングセンターやショッピングモール等への出入り時と同じ状況ですね。


東映アニメーションで仕事をしている知人の話では、食堂が撮影所内にしか無い上に、東映アニメーションの目の前の西門から撮影所内に出入りすれば直ぐ近くにある大森坂の上の食堂に行くのに、一旦撮影所の敷地の東の端の正門から入り、今歩いて来た道程と同じ位の距離を歩いて食堂へ向かっているそうです。

まあ、撮影所を出る際には西門から出て東映アニメーションへ帰れるそうなので、食後の運動ならぬ食前の運動をされている様です。


尚、体温測定に関して「日本テレビドラマ撮影ガイドライン」によれば、撮影現場では「朝・昼・夕に検温。可能な限りマイ体温計」とあります。しかし、私見ですが実際の撮影現場ではそこまで厳しく体温測定が行われることは稀だと思われます。

個人的意見ですが、それぐらいであれば、以前何処かのドラマの撮影に際して「クランクインまでにPCR検査を実施し、キャスト及びスタッフに陽性者がいない事を確認して撮影に臨みました」という報道が為されたことがある様に、事前検査を済ませてから撮影に臨んで後に、要所のチェックを怠らなければ良いのではないかと思ってしまいました。


尚、「日本映画製作者連盟」のガイドラインによれば、撮影関係者が頻繁に触れる箇所や共有する機材等の清拭作業も頻繁に行われる様に記載されています。

身近な例としては、外食店舗等でお客様が帰られた後の机は勿論、座席までもアルコール消毒で清拭作業が施されるのに似ています。


●密閉空間

○ステージセット

ステージセットは密閉空間に近い状態になります。

勿論、大扉が開いている時には緩和されますが、撮影に関して、特に本番の際には、録音状態や照明の状態の確保の為にも大扉は閉められてしまいます。

その場合は「密」になる可能性があるのですが、如何せん広い空間ですから通常の撮影では極端に「密」になる事は殆どありません。

「日本映画製作者連盟」のガイドラインによれば、撮影時やその準備段階のスタッフのソーシャルディスタンスは「各都道府県の示す基準による」としながらも「4平方メートルにひとり」の人数を最大としています。

また、「美術スタッフ」の準備完了を待ってから「技術スタッフ」の準備をするなどの配慮も行いながら撮影準備を行う等のワークフローの最適化を試みるという項目もガイドラインには読み取れますが、これも状況によっての措置であって、「密」状態を回避できれば、その限りではないようです。


尚、密閉空間に成りやすい場所に対しては、定期的な換気もガイドラインによって指定されています。


○ロケセット

ロケセットは、ロケーションの現場で撮影用に借りる部屋や施設を意味します。

勿論、野外の場合もロケセットと呼称しますが、借用する部屋や飲食店等の店舗の場合は狭い空間だったりしますから、撮影隊自体の人数を調整して撮影しているようです。

それもあってか、どうしても撮影に使用しなければならない飲食店のロケ撮影等でなければ、実際の店舗や施設を使用したロケーションは、野外に限定されているのではないのかと思える程に屋内のロケセットの使用が減少の傾向すら見受けられます。


「日本テレビドラマ撮影ガイドライン」によれば、当面のロケーション先は貸し切り可能な広い敷地のみとされていました。

公道を使っての撮影は慎重な判断が求められるという内容でした。

今でも


●撮影までの対応

撮影に至るまでにはスタッフ間のミーティングやスタッフとキャストの打ち合わせ等の「人の集まる」状況が多々あります。

「日本テレビドラマ撮影ガイドライン」によれば、撮影のクランクアップ前に行われている安全祈願やヒット祈願を基本においた「お祓い」も省略し、「本読み」と呼ばれるキャストを一同に介しての練習ミーティングもリモート等を利用し、極力「人が集まる状態」を排除するように努めています。


かと言っても、準備段階からどうしても「人が集まる状態」を作らなければならない状況は出てきます。

その場合でもソーシャルディスタンスに気をつけて多くの人が集まらない様に気をつけているようです。


●本番までの間

○待機からのヘアメイク直し

テレビ局内のスタジオでの撮影時やイベント等では、大型のアクリル板等の仕切板を使用してソーシャルディスタンスを保っています。

または、野外ロケの最中等では様々や形のフェイスガードを使用するなどという飛沫感染予防を行って撮影が続けられています。


勿論、ドラマ撮影の撮影スタッフは全員マスク着用でなければなりません。

キャストも、撮影現場での待機時間中はフェイスガードやマスク等の飛沫感染処理を施して対応することになっています。

このフェイスガードやマスクは、撮影時には自分で外して保管場所に置き、着用時には自身で取りに行く事がガイドラインに記載されています。

尚、メイク等が落ちてしまう可能性があるためにマスクも併用されている様ですが、基本的にはフェイスガードが多用されている様です。


さてここで重要なのは撮影現場でのメイクや髪型の直しです。

マスクを外す際はメイク直し、フェイスガードだけであっても髪型の直しが必要になってきます。

基本はメイク担当者が感染対策用に手袋を付けてメイクを施したり髪型を整えたりするのですが、その際に使用するクシやブラシ等を他のキャストと共用しない様にするという記載がガイドラインがあります。

少し考えてもこれは大変なことで、キャスト毎に様々なメイク道具やクシ・ブラシを用意しなければならないという事が考えられるからです。

勿論、マイブラシやマイ櫛といった用意ができるのが理想ですが、それがかなわない場合は、理容店や美容室等が行っている様に使用したブラシや櫛に対してアルコール消毒を行い感染対策を行っていると思われます。


○衣装と小道具

衣装の装着も介助を入れ、小道具も小道具係がキャストに装着したり手渡したりするのが通常でしたが、全てキャスト自身だけで行う事が基本となっています。

しかし、どうしても自身だけで着るのが難しい衣装や、自身だけで装着が難しい小道具等は、感染対策を施したスタッフが補助に入ります。


そういった意味では、特撮番組のヒーローや怪物・怪人達のスーツの装着も、このガイドラインに従えば自身だけで装着しなければならないのでしょうが、殆ど不可能でしょう。

手が届かない場所へ手を回す事や、細かな作業を要する装着手段がある等は、その不可能なモノの最たるものでしょう。


●食事

○撮影所内

撮影所内での撮影の場合は自前での食事でしたから、自前弁当や社食等の外食、そして出前が基本でした。


感染対策のガイドラインとしては、食事をする際の会話が厳禁となっていますし、一人の食事を推奨しています。

スタッフの中には、食事中に他のスタッフと簡単なミーティングを行っていた方達もいらっしゃいましたが、それも出来なくなっている様です。


自前弁当は「密」にならない様に食べる場所さえ注意していれば何の問題もありませんし、出前も届いた後からは自前弁当と何ら変わりはありません。

問題は、外食です。

店舗自体の感染予防対策の在り方が関係するからです。

因みに東映東京撮影所内の社員食堂は、社員じゃなくても利用出来るとてもリーズナブルな食堂ですが、ここにもアクリル板の設置とソーシャルディスタンスの確保が徹底され、少人数の入店制限で止めている様です。


○ケータリング

私の時代(30年前)には名前もなかった事が、近年では当たり前の様に行われている事に「ケータリング」があります。

「ケータリング」とは、顧客の指定する元に出向いて食事を配膳、提供するサービス業のことであり、「仕出し」と違うのは料理人が直接現場に出向くかどうかです。

1箇所に集まり共有する料理を分け合うのは問題があるとして、どのガイドラインでも提供を禁止しています。

個別に分けられた食事を提供するのならば大丈夫ですが、バイキング形式での食事提供も推奨していません。


●あとがき

分量が多過ぎて1度で読むにはアクビが出そうなので、2回に分けて掲載させて頂きます。

決して「1回では勿体無いから」とか「資料が纏まっていない」とかではありませんw……多分w


さて、どの撮影現場のガイドラインの内容も私達の日常として見かけるようになった「コロナ禍の日常」としての「感染予防対策」と変わりはありません。

「体温測定」「手指の消毒」「アルコール消毒」「ソーシャルディスタンス」「アクリル板」「フェイスガード」「マスク」どれもが2年も経てば「日常」へと変化していきます。


旅番組等のロケーション番組等を観ていれば、撮影しながらの感染予防対策の様子も垣間見ることが出来、「何か、フェイスガードが新しい形だなぁ」とか「この大きなアクリル板をスタッフは準備して持ち歩いているのか……」とかといった感想が私の中にも芽生える様になりました。


さて次回は「後編」。

いよいよ、「撮影シーンにおけるガイドライン」を見ていこうと思います。

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