余り語られない撮影所のあれこれ(9) 素材撮りと小物撮り
★「素材撮りと小物撮り」
その1「素材撮り」
合成素材に使われる被写体を撮影するのが「素材撮り」です。
基本、合成用の素材ですから背景や人物やキャラクター等、撮影される被写体は多岐に渡ります。
ロケ先で背景を撮り、セットで巨大ロボを撮り、合成する。
フィルムの時代でも現在のCG全盛期でも手順は大きくは変わりませんし、素材撮り自体も存在します。
大きく変わるのは、フィルムの合成は現像時点で画像を合わせるので、マスクと呼ばれるマスキングをフィルムやカメラに施して撮影をしますが、現像しないと細かな部分が分かりにくいのが
難点です。
合成素材の被写体の大きさすらも合わせないといけないのも難しい点です。
片やCG合成は、現場にCG用機材を持ち込めば、合成位置を容易に確認が可能です。
勿論、素材の大きさも撮影さえしておけば自由ですが、被写体の向きや動きは、撮影時点の動きから変化しません。
合成素材撮りのマスクは、大昔は黒バックでしたが、ブルーバックで合成するようになり、現在ではブルーバックとグリーンバック等を併用します。
文字通りのブルーやグリーンのバックになった色を抜いて合成素材とする訳ですが、被写体自体にブルーやグリーンが入っているとそこまで色が抜けてしまいますww
例えば、スーパー戦隊のブルーのキャラクターのバックにブルーを置いてしまうと、キャラクター自体が消えてしまいますw
ですから、ブルーのキャラクターのバックにはグリーンのバックを置きます。
大抵、スーパー戦隊の1チームにはブルーとグリーンのキャラクターは一緒にいないものなのですが、たまにブルーとグリーンのキャラクターが一緒に合成素材になる場合があります。
その場合は、ブルーとグリーンのキャラクターは隣通しに置かず、基本グリーンバックでグリーンのキャラクターの後ろにだけブルーバックのパネルを配置します。
つまり、現在はグリーンバックが主流になっています。
余談ですが、グリーンバックの特性上デザインにグリーンとブルーを一緒に入れたキャラクターは御法度だと思います。これは個人的な考察ですが、あながち間違いではないと思いますw
★その2
「小物撮り」
「小物撮り」ですが、ロケ先で撮影する場合もありますが、基本的に役者さんが居なくても出来るアップ撮影のことです。
手元のアップや顔や眼のアップ等ですが、アイテム等やキャラクターのギミック(仕掛け)の撮影も小物撮りになります。
手元のアップ等は、地面が写り込むとなれば現場で撮影します。
キャラクターのギミック撮影は、背景さえ気にしなければ基本的にセット撮影になります。
30年前と現在で大きく違うのは、このギミック撮影としての「小物撮り」です。
現在はCGで仕掛けを表現してしまいます。
当時は、ワイヤーが仕込まれた仕掛けをワイヤーを引いたり押したり、電飾を光らせたりして、手作業で撮影していました。
電飾の明滅や明暗は、小型変圧器を使っていたりしました。
現在ではCGが多用される為に、この様なギミックでの「小物撮り」は、「素材撮り」と同じ状態となっているようです。
そういった意味では、動きのあるカットとしてのワイヤー操作はCGに取って替わられた事になりますし、そんなワイヤー操作の「小物撮り」は無くなってしまったのではないのかと思います。
「ウインスペクター」や「エクシードラフト」「女バトルコップ」「仮面ライダーZO」のキャラクターマスク等の小物の「ワイヤーギミックを扱った“小物撮り”」を経験した私としては、その技術は別の形でも良いから遺して欲しいと思います。
●補足(伊奈スチルカメラマンからの投稿)
現在のキャラクター番組では、背景などの「素材撮影」では、「キヤノンEOS」「パナソニック・ルミックス」等の市販スチルカメラのムービーモードが多用されている。
海外でも面倒なビザやビデオキャメラの輸出関係書類が不要で、手軽だからです。
小物撮影でも、ギミック無し画像なら使っています。
A:
補足説明をありがとうございます!
伊奈さんは、カメラの事にかけてはプロですから頼りになります!
これからも現場のスチル撮影を頑張って下さい!
大島御大に負けるな!!ww
Q:
現場スチルで大事なのは「高いカメラを買う」「ジックリと待って写真を撮ること」「政治力」「経費のバラマキ」です。
俺さんには「安いカメラでCG多用」しかできないです。
3大巨匠(大島さん、川上さん、渡辺さん)には全てでかないません。
A:
3大巨匠が普通にスチルを撮っていた時代だったので、スチルさんとはこんなモノだと思っていましたww
ですから、
高いカメラ
=当たり前。フィルムだよ。
ジックリ待つ
=事前にスチル撮りを申し出た時間まで待つ
政治力
=御三方はお持ちでした
経費バラマキ
=裏ではあったかも?
の感覚ですww