Gimme Shelter
そういったことのあった、思い出深い煉瓦造りの休憩場に、僕は逃げ込んだ。
雨は雨量を秒毎に強めていってるように感じた。まるでマニラに降るスコールのように、公園の植物達を濡らしていた。
一部の植物にとっては恵みの雨であり、別の植物にとっては、茎を折り、根を露出させる厄介な雨。
しかし、それにしても猫達は何処へ避難したのだろうか?
この公園には野生の野生の猫が数多く生活しているはずなのに、この煉瓦造りの建物には見たところ一匹も避難してきていない。
もしかしたら、彼らは人間には気づく事ことのできない、シェルターを地下に作っているのかもしれない。そして、来るべき日に銃を持ち、散々虐げられてきた人間に復讐する。彼等にとって、その戦いは、美しい聖戦に他ならない、その点イラク戦争とは大きく異なっている。
彼等は利口なのだよ人間なんかより。
双子の姉妹は此処には逃げ込まなかったようだ。
それどころか、此処には僕を含めた、三人しかいない。
高齢の男性がステージ中側のベンチに座っている。
彼はネズミ色のハンチングを深めに被り、木製の杖の上に両手を置いている。
彼はシェルター降り注ぐミサイルの雨を無表情で見つめている。
もう一人は、サングラスを掛けた若い女...
サングラスを掛けた女性というのは、なにか事件の幕開けのような気がするし、逆に幕引きのような気もする。
特に三月にサングラスを掛けた女性は新しい世界への幕開けだと期待してしまう、特に今年の三月は。
だって"美貌な平成"が終わるんだよ、それなのに僕は1mmも新しい世界へ前進も後退も浮遊もしないなんて、寂しいと思わないかい?