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黒い縁取りの手紙
三月の雨は冷たく肩にあたる、
少しの"白々しさ"を含んで。
友人からの連絡は簡単なものだった。
「T先生が亡くなりました。つきましては、9日M祭場にて御通夜が行われます」
T先生?どんな人であったろうか?
僕は記憶のストックが極端に少ないのかもしれない。彼の顔は思い浮かばない。
しかし、日曜の朝に嫌な報せが届いた。
たまの休みぐらい、穏やかな気持ちでいたいのに。
多くを失った今の僕には人の死は重すぎる。
たとへ、顔の思い浮かばない相手の死であっても