そうだ、大物退治に行こう!
「......ルナさんや」
「なんですか?」
「いやね、さも普通に一緒に居るんですけどね?」
「パーティですから」
「うんお願いしたけどさ、ここ俺の部屋で俺のベッドの中に君がいるってなんで?」
時間はもう既に九時を過ぎ、眠りにつくところだ。のに彼女......ルナは俺と背中合わせで布団に潜り込んでいる。
「仕方ないです。部屋をひとつしか取ってないんですから」
「だから二つ取ろうっつったのに君が反対したんだろ?」
「......」
黙ってんじゃないよ、なんなのこの子は?
「......まぁいいか」
「ええいいです。私はここで寝ます。あなたもここで寝ます。異論は」
「......ありません」
結局、俺は折れることになった。
朝......
「おはようございます、ナリユキさん」
どうやらルナはぐっすり眠れたようだ。良かった良かった......で済んだらよかった。
「どうしたんですか?隈ができてますが?」
「あ、うん、気にしないでいいよ…」
なぜ隈ができてるかって?教えてやるよ。
最初は俺も寝てたさ。けどね、背中に妙な圧迫感があってね起きたんだ。そして後ろを振り返りゃルナがこっち向いて俺に体を押し付けて来ながら寝ていたんだよ。更には俺が少し離れようとしてもガッツリホールドして離すに離せねぇしよ、さらには足まで絡ませてきやがった。こんなんで寝れるわけねぇよ。しかもその途中で『…ん』とか『うぅん』とか妙に色気ある声だしやがって......
「さ、依頼をこなしに行きましょう。着替えたら私は噴水で待ってますから」
「…そうだね、わかった。」
噴水......この街の名物であるあの大きな噴水か......嗚呼、俺もあんなに優雅な曲線を描ける建造物みたいになれたらな......それにしても、クエストかぁ......そんな気力、朝なのに持ち合わせてない。
「ではナリユキさん、どんな依頼にしましょうか?」
「うぅん、魔力が高いから強い敵と戦いたいけど、正直言うと魔法が少ないんじゃ勝てないし宝の持ち腐れなんだよなぁ......」
「なるほど......確かに」
「だから魔法を取得できる依頼ってないのかな」
「そんな都合のいい話が」
「ありますよぉ?」
と割って入ってきたのは受付嬢──そう言えば名前知らなかったんだけど、名札にアリサって書いてあった──のアリサさんが話しかけてきた。
「え、あるんですか?」
「はぁい。実はここ最近入ってきた依頼の報酬が上級魔法伝承なんですぅ。でも難易度が高すぎて少し厄介なんですぅ」
そう言ってて渡された紙には、『魔獣リドルの退治』と書かれていた。
「リドルですか」
「はい。この辺りでは珍しい翼竜種でして、今はまだ被害がないんですが人を攫ってしまう恐れがあるので早急に退治して欲しいとの事ですぅ」
「リドルは飛力がずば抜けていて鋭い爪の攻撃と火炎放射を用いています。ですから初心者が集うこの街ではとても厄介な魔獣ですね」
うへぇ、確かにね、魔法は欲しいと言ったけどさぁ......
「あ、しかもこれ伝承されるのって爆裂魔法じゃないですか」
「爆裂魔法?」
「はい。威力は現存する魔法の中でトップクラスの魔法で、百を超えるアンデットの群れを一瞬で散り散りに出来るほどです。でも魔力を多く使ってしまうためになかなか使い勝手の見いだせない魔法でもあるんです」
なるほど......え、それ貰ってもいいの?
「あ、でもナリユキさんなら扱えるんじゃないですかぁ?」
「確かに、人外じみた魔力を保有しているし、尽きることは無いですから安パイかもしれませんね」
「いやいや、俺の事買いかぶりし過ぎだって」
いや、謙遜はいいからと二人揃って言われた。あれ、なんだろ......褒められてるけど貶されてる感が。
「まぁ、せっかくだし受けるか」
『魔獣リドル退治 開始!』