初クエストで無双だぜ!
と思ってた時期が、俺にもありました。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
初心者向けのショートソードとフードマントを購入して、一番簡単だろうと思われるゴブリン退治の依頼を引き受けたが、ゴブリンのあまりの数の多さに怖気付いて逃げている真っ最中だ。
「何なんだよ!!!ゴブリンって弱いんじゃないのかよ!!全然倒せねぇんだけど!?!?」
すでに体力も半分を削られており、スタート直後でお陀仏コースに転落する寸前まで来てしまう俺だった。
「だ、誰か助けてぇ!!!!!」
『フレイムベール!!』
詠唱の声が聞こえた時、後ろから熱風と赤い光が差し込んできた。そして振り返ると、さっきまでいたゴブリン達が一匹残らず消し炭になっていた。その向こうには、黒いフードを着た人がこちらに歩いてきていた。
「だ…大丈夫ですか?」
聞こえてきた声は女性のものだった。
「あ、はい。あなたが助けてくれたんですか?ありがとうございます!」
「い…いえ、困ってそうだったんで」
確かに大量のゴブリンに追いかけ回されて大丈夫って言うやつは頭がおかしいやつか単にMだ。
「結構強めな魔法放ったんで流れ弾が当たってないか心配で」
「あ、全然平気!むしろピンピンして......」
と元気なところを見せようとしたが、立ちくらみがしてその場に倒れてしまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
「いや、体力のパラメータが瀕死寸前だわ…もう歩けない…」
「こ、これ…ポーションです」
「ありがとう......」
渡された青色のポーションを口にする。するとみるみる体力ゲージがフルになって行く。
「おお!」
「全回復薬です。魔力は回復しませんが、とりあえず命は凌げます」
「何から何までありがとね」
「とんでもないです......単なる罪滅ぼしですので」
最後の方はあまり聞こえてなかった。体力も回復したところだし、そろそろ動こうかと思うと途端にその子が、
「あ、まだ動かない方がいいです。そのポーション、回復するのにはあと5分は必要で、ちょっとでも動いたら回復が解除されるんです」
「うわぁ、なんてデメリットだ」
「で......ですので、こうして…」
そう言って、倒れてる俺の頭を持ち上げ自分の膝に乗せる。
「こ、これは......!」
「これなら......休めると思いまして」
これが俗に言う膝枕!!おぅ、なんという天国!!この世界に感謝だ!!
「ど、どうですか?」
「最高です!」
「よ、良かったです」
いやぁ、転生初日でこんなにいいもの味わえるとは......転生って、素晴らしいもんなんだな。
と考えている最中、膝に頭を乗せてるため、彼女の顔がしたから見える。そこに見えたのは......
「......角?」
「ッ!!」
指摘された途端に顔を青くして額を手で覆い隠す。そしてそのまま俺から離れる。膝枕から離れられたので当然、頭は地面に垂直落下して殴打する。
「いて!......も、もしかして......鬼?」
「..................」
その時、今朝見た夢みたいなものを思い出した。
「......」
「で、では......」
「あ、ちょ待って!」
そそくさと逃げようとする彼女の手を掴んで止める。既に5分はたってたみたく、立ち上がることが出来ていた。
「話とか、お礼とかしたいから街に…」
「......出来ません。私は街に入れないんです」
「でも今朝すれ違ったじゃないか」
「......」
「角を見られるのが怖いのか?」
そう言うと、肩が少し震えた。
「......とにかく離してください」
これじゃあ埒が明かない。どうしたらいいのか......
解決策を模索していると、突然ステータスが開かれた。メールボックスの中にはひとつのメールが届いていた。その宛名は『女神様』と書かれていた。いや自分で女神って......まぁ仕方ないから開くけど。
『やぁマエダ。いかがお過ごしですか?このメールは私が転生者であるあなたに渡した特典の説明を記したメールです。まぁめんどいって理由で渡したんですけど、それでも結構いい特典選んだんですよ?』
......いいから進めろよ。こうして読んでる合間でも俺とこの子はずっと待ってんだ。
『そう急かさないでください』
これメールじゃなくてチャットか?なんでわかるんだよ。
『神ですから』
はいはい進めて。
『あなたに渡した特典は2つ。ひとつは解除と呼ばれるスキルです。これは対象の状態異常を治したり、魔法効果を自動無効させることができます。ふたつ目は共感。触れた相手の感情、記憶、予知のどれかを共有、または発動することができます』
うん、使い道によってはチートになるな。ひとつ目は限りなくチートだな、うん。魔法効果を自動無効ってことは魔法がゼロに近く効かないという事。上級魔法ですら効かないのだからまぁ無敵だ。それに対して俺は魔法も使えるからチートの中のチートだ。
ふたつ目は相手の動向が分かる優れものだな。だけど一度触れないといけないんだろうから少し厄介だ......あれ、今この子に触れてるから分かるんじゃね?
それを発動させて彼女を見ると、複数の単語が大きさ別で現れた。恐怖と不安が大きく、焦燥もある。明らかに何かを恐れている。
「......俺は君に対して何もしないし、ただ本当に話がしたいだけ。お願い…」
「......分かりました。ですが、私はこの状態では街の結界に引っかかり入れません」
「......なら」
俺のもうひとつの特典、解除を発動させ、角の発動を抑えた。
「これなら入れるだろ?」
「え、あれ、ない…」
「俺の魔法だ、さぁ行こうか」
最初の一文とサブタイ繋げるように書きました。
......中々いい(ほざけ)