転生後のお約束
「で、終わるはずもねぇよ」
光が止んで見えた景色は、石造りの家屋に中世のヨーロッパをモチーフとされたような服装をした人達。俺の前の世界では画面の中でしか見た事のない世界が、肉眼で、目の前で触れるくらいに広がっていた。
「確かに転生はしたみたいだな。てことは、俺は本当に魔王を倒さなきゃいけねぇのか」
これから歩む異世界人生に大きな不安を揺らがせる俺はため息をつく。
「まぁ、とりあえず何かしらあんだろ。例えば冒険者ギルドとか」
俺は一通りのゲームはやり通してる。だからこういう時に何をすべきかはだいたい予想がついているのだ。
「あの、すんません。この辺りに冒険者ギルドみたいなのないっすか?」
「ギルド?あんた余所もんか?ならあっちの大きな建物がそれだ。頑張れよ」
と丁寧に教えてくれた。ありがたやー。
「あ、あと登録料として10ゴールドは必要だが、持ち合わせあるのか?」
「え…」
そう聞かれたのでポケットの至る所を探した。するとチャリンと金属音がした。それを手に取ると数字の書かれた金貨が20枚入っていた。
「お、あんじゃねぇか。頑張れー」
大きい建物を目印に歩いていく。その際に、賑わっている市場らしき所を通っていた。
「へぇ、この世界はゴールドっていうのが通貨なのか。見た目純金だぞ?てことは金が豊富なのか、この世界は」
確かに金が数多くあるのなら、支配したいのも理解出来る。だから魔王も攻めてきたんだな......いや元々あの神様が魔王なんか作るからだろうが!
「あの野郎自分が楽しむためだけでこれだけやるとは......どんだけ暇なんだよ」
と恨めしそうにブツブツと独り言を喋っていた。その時に、前からすれ違った人と肩がぶつかってしまった。
「す、すみません」
「いえ、こちらこ......!!」
その一瞬、何かの映像が俺の脳裏を過った。それは石造りの街が一瞬にして焼け野原になる瞬間だった。それをやったのは黒い霧に包まれた2本の角が生えたもの......それは分からなかった。そして映像は途絶えた。
「......あれ?」
我に返ると先程ぶつかった人はどこにもいなく、人混みに帰っていた。
「......」
初めての感覚に動揺を覚える俺は、もしかしてこれが特典の一つか?と考えたが、何もわからない今はとにかく、ギルドに向かうしかなかった。