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道化師は戯れる

どうも!はい、四話目にして連続投稿が途切れるというね、はい。


…優しく見守ってね

『こんばんは』


 呟く様な小さな声だったが、それまで続いていた静寂を破るには十分なものだった。


 その声が聞こえた瞬間、兵士二人は剣を素早く構え、道化である彼と対立した。

 素早く二人で取り囲んで居ながらも、囮である可能性を考え、背後の扉に関しても気にしている。更には応援を呼ぶ為に、大きな声で叫んだ。


 元から訓練されていたのだろう。とても慣れた様子で一連の動作を行なった。そして言う。


「ふ、ふはは!!コイツ雑魚じゃねぇか!何を血迷ったかこの道化野郎!テメェが弱いって事は俺の目が証明してる!そんな見た目で騙そうたってそうはいかねぇよ!」


「よっ!流石兄貴!長年の傭兵生活で養った敵の力を測る最強の瞳!推し測る瞳(アナライズアイズ)!見た目だけの雑魚は引っ込んでな!」


 どうやら彼らは騎士ではなく傭兵らしい。夜にもしっかり見張りをやっている辺り、口だけではない様だ。


 それではまさか彼は自分が強いと思い込んでいるだけの可哀想な道化だったのかーー!?




 否、彼の力の隠し方が異常な程上手なのだ。最早上手などと、簡単に表して良いものか迷う程には。

 彼ら傭兵も、実力を推し測る事こそ間違えているものの、実力は本物だ。それこそこの重要そうな場所を騎士ではなく傭兵に任せるぐらいには。


 まぁ、あれだけ最強の瞳やらなんやら言ってしまえば、笑わずには居られないが。最早見た目に目を瞑れば、どちらが道化か分からなくなってしまいそうだ。


「それでぇしたら、ワタクシのような弱者は見逃ァして下さいませんかねぇ?」


 その言葉を聞き馬鹿二人は、大変残虐な笑みを浮かべた。


「それは立場的に無理ってもんだろうよ。まぁ…元から逃がすつもりはないけどな!!」


 そう言うが否や、二人は素早く挟み込む様に襲い掛かった。二人は剣の腹で殴ろうとしている辺り、飽くまでも捕縛するつもりらしい。

 そんな風に余裕を持って戦えるような相手ではないというのに…


 道化は子分らしき男の剣を、何処から取り出したのか杖によって弾き、兄貴と呼ばれていた男の剣とぶつけた。


「な、なんだと!?」


 あり得ない!この男にそんな実力は無いはずだ!きっと偶然に違いない!そう考え、何度も何度も斬り掛かって行く。しかしそんな事はあり得ない。

 何回やっても当たらず、結果は同じ。躱され、遊ばれ、弾かれ、止められる。


 その内彼らは祈るようになっていた。これは悪い夢だ。こんな事が有るなんて信じられない。夢よ、覚めろ覚めろ覚めろサメロサメロサメロサメロサメロ…


 道化の姿、異常な程の力、信じていた目と異なる結果…それらは想像以上に、彼らの精神を蝕んでいたのだ。


 ちなみにと言った話だが、道化は神の存在を信じていない。本当にいるのなら、あんなに不幸な事など有るはずがないのだと考えている。祈った所で都合の良い事が起こるなんて、有り得ないのだ。

 神がいるのなら、どうして自分はこんなにも不幸な目に遭ったのか。そう思ってしまってもおかしくない程、彼には不幸な経験が多過ぎた。



「フゥフゥフゥ…ちょっと落ち着け!こんなに慌てちゃ傭兵の名折れよ。ここは一旦落ち着いて応援が来るのをm…」


 暫く絶望しかけていたが、流石はベテランの傭兵。一旦落ち着こうと…したその時!ある違和感に辿り着いた。そしてその大きな違和感は、二人を絶望に陥れるには十分なものだった…


「なぁ、おい。応援が来るのが遅くねぇか」


「た、確かにそうっすね」


 そう、最初に大きな声で応援を呼んだにも関わらず、一切誰も来てはいないのだ。大きな声で叫べば、熟練された動きの騎士達が揃いも揃って侵入者を捉えに来るはずなのだ。


 実際にそういう話だったのだろう。騎士達だって嘘をついてはいない。しかし、どうだろうか?もし声が届いていないのだとすれば。


「あ、兄貴!こ、ここ此処に!見えない壁があるっす!!」


「な、なにぃ!」


 二人は慌てふためく。人間というモノは、想定外の事に瀕すると、頭が真っ白になってしまうのだ。


「ふふふふふ、一体どうしましたかぁ?何もない所で突然慌てテェ」


 その言葉に二人は激昂した。どうやら恐怖を怒りでかき消した様だ。


「うおおおおおおオラァァァァァ!!!」

「くたばりぃぃぃやがれぇぇぇ!!!」


 鬼気迫る様子に、道化は後退りし…あろう事かバランスを崩してしまった。


「おっとぉ!?」


 暗闇の中に一筋の光を見つけた様に、二人は飛び掛った。





 グシャグシャグシャ!グチャグチュグチュチュチュ!!!


 刹那、何かが潰れた様な音が響き渡った。常人なら気持ちが悪くなってしまう様な最低な音だ。

 そしてその音の正体は、すぐに分かる事となる。


「え?は?…ほえ?兄貴?」


 そう、先程と比べて人が一人減っていた。兄貴と呼ばれていた男は…今の今まで何処にいたのか、真っ黒で巨大な獣に咀嚼されていた。


 あぁ…人とはこんなに呆気ないものなのか。


「良くやったねぇ、黒雪。さぁ、ご飯はもう一つあるよぉ。証拠を残さない様に…綺麗にお食べ?」


 また一人…消えた。





読んでくださりありがとうございました!


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