侵入
こんにちは。
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「なぁ、おい。知ってるか?なんか王城の方が騒がしいらしいぜ。一体何があったんだろうな?」
「ああ、俺も気になってた。警備もいつもよりも厳重になってる。まさか、魔王関連か?」
「いやいや、それこそまさかだろ。魔王関連なのなら王城を封鎖するんじゃなくて、大々的に兵を募集した方が良いじゃねぇか。だろ?」
「そうだな…」
そこで男二人の会話は途切れた。なんて事はない日常。しかし、その会話を聞いている男がいた。
「そぉれわぁいい事ヲォ聞いたなぁ」
周りの目を引く道化の姿。もうこの姿を始めて数年が経過している。黒髪黒目は芸風だとでも思われているのだろうか。
そんな奇怪な男には名前など無かった。唯一彼の言う『じいちゃん』が名前を付けて読んでいた様だが、今の彼には…手も心も汚れてしまった彼には不要なモノだった。故に彼はこう名乗る。
偽物と。
自分で付けた名前が偽物とは皮肉ったものである。彼の人間への憎しみ、そして経験で知っている人間の汚さが、彼をそうさせたのかもしれない。
「確認しなぁいといけないなぁ」
彼は気負う事なく歩き始めた。決行の時は、すぐそこに迫っている。
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夜。灯など松明ほどしかないこの世界では、ほとんどの者が家に帰り、早い明日に備えている。
そんな夜を起きているとするならば、王城を守る兵士か…この道化ぐらいである。
道化は閉まっている門を確認した。勿論兵士は立ってはいるが夜であるという事と、門が閉まっているという安心感からか、あまり真面目に警備出来ていないようである。
「通らせて貰いますよぉ」
そう言う道化は空にいた。翼がある訳でもない。ジェット噴射している訳でもない。なのに浮いていた。
道化は…確実に空を歩いていた。まるでそこに見えない床があるかの様に。
そうして、悠々と王城に侵入することに成功した。門は普通、地上からの侵略者を防ぐ物である。空から来られては、素通りさせてしまうのも仕方ない。兵士もまさか空から入られているとは思っていないだろう。
「あちらの方デェスかねぇ?」
道化は城の北西部に、何らかの魔力の高まりを確認した。魔力とは、摩訶不思議な事が起こせるエネルギーの様なものだ。それが高まっているというのなら、確認するべきだろう。
足音無く、道化は歩みを進める。昼ならば沢山の使用人や城を訪ねて来た重鎮や来賓が居るのだろうが、今はただ、だだっ広い廊下が広がって居るだけである。
徐々に中心部を外れ、普通なら立ち入らない区域に入っていく。幾ら歩いたのだろうか?兎に角、彼の目の前には見張りの兵士二人と、明らかに普通ではない白銀の扉が立ち塞がっていた。
他の侵入口はなし。見張りは意識高く、キチンと仕事をこなしている。今までの如く、隠密に突破は不可能。
それを理解した時、道化は確かに笑っていた。ああ…
『こんばんは』
静寂が…消えた。
次回、戦闘が…!?