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93 騎士サンと決闘

その93です。

 決着はついた。


 意外だったのは、エックホーフがあっさりと気絶したエクヴィルツを部下に運ばせて退場していったことと、ゲアハルトが泰地の両手を握って少女のような黄色い声で破顔したことだった。



「すごい! 凄いじゃないですか、タイジ様!」


「お、おぅ……」


 美少年のキラキラした瞳と面々の笑顔を前にして、泰地が赤くなって顔を背ける。ある意味で初々しい様子に、ヴェリヨは『変な趣味をこじらすなよ』と心の中で皮肉った。


 ゲアハルトはすぐに自分の浮かれぶりに気付いて「すっ、すみません!」と身を離した。対する泰地もどう反応すればいいやら迷っており、微妙な空気が流れる。


「それにしても、驚きましたよ」バイラーが取り繕うように口を挟んだ。「失礼ですが、武器無しで本当に勝てるとは思っておりませんでした」


「私はてっきり、最後は武器を取るものだと思っていましたが! 本当に、本当に勝ってしまうなんて信じられません! しかも、あの、あのリンクス騎士団の副団長を相手に!」


 興奮の色が窺えるバイラーの後に続いて、カウニッツも鼻息荒くまくし立てる。常識的に考えれば、彼らの反応が当たり前なのは言うまでもない。


 これにルデルは鷹揚に応じる。これぞ魔王の余裕だ、と言わんばかりに。


「ふん。ならば一定の効果はあったということなのだ。人間ではルデルの相手にはならない、と周知させられたのだ」


「それは確かに。しかし……」


 バイラーが顎に手を当てる。彼の――いや、ゲアハルトたちの懸念は、リンクス騎士団の団長であり謀略でその座を得たと噂されるエスマルヒの存在である。



 今回の「試合」で、エックホーフは表立っての反対は控えるだろう。だが、こちらの方が逆に彼らにとってはやり易くなった、とも考えられる。暗躍こそがエスマルヒの本領であり、エックホーフにとっても「手慣れた仕事」なのだろうから。



「これからの道中、ますます気が抜けませんね」


 ゲアハルトが表情を硬くする。泰地は……まだ動揺が抜けきってない様子だった。


次回からは新展開となります。 

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