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その7です。
「まずは自己紹介だな。俺は雪郷。表向きは、このUN芸能事務所の社長。その正体は、ここ豊浜都の公安ウン課の課長だ」
椅子から立ち上がったその男は、ヴェリヨほどではないが立派な体格の持ち主だった。
というか、ヴェリヨが圧倒的に規格外なだけで、一般的な視点では雪郷だって警察官というよりも軍人と自称した方が納得できる肉体の持ち主である。
髪は短く、耳朶が少し潰れているので柔道か何かをやっていたのだろう。シナモンスティックをくわえているのタバコ代わりだろうか?
これらの特徴だけなら威圧感は充分なのだけど、その大半を相殺させてしまっているのが彼の目だ。
常に眠たげというか、悪く言えば濁っていてやる気が皆無な双眸は、第一印象を「ダメ人間」に固定させる最大の要因となっている。
「ま、座って座って」
少年に促しながら、ボスは靴を脱いで電話などが無造作に置かれている絨毯の上に胡坐をかく。ヴェリヨも倣ってその前に座って靴を脱ぎ始める。……こうなっては、少年も従わねばならない。
(なんだよ、この絵面は)
せめて畳を用意しろよ、と思っても口に出せない泰地は、雪郷が散らばっていた雑誌などを適当に脇へ寄せるのを黙って見守った。
「さて」
ボスが表情を引き締めながら切り出すと、少年も姿勢を正す。
「ここ完全禁煙だから、口元がどーにも寂しくてシナモンスティックかじってるんだけど、もっと適当な代用品って知らん?」
「……いえ、口に何かくわえる習慣はないので……」
おっさん地獄が続いてすみません。
なんとか近いうちに女の子を登場させます(切実)。






