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86 騎士サンと決闘

その86です。

 ……既にそれは、剣と呼ぶには相応しくない形状と化していた。


 騎士の一振りで乾いた破裂音が響き渡るそれは、どう見ても――



「鞭ですよね」


「鞭なのだ」



 大型の蛇を彷彿とさせるほど長くしなやかに変化した木剣は、完全に鞭以外の何物でもなかった。木製であるとは到底信じられない。


「異世界から来たという貴様でも、こんな魔術は見たことがないだろう」


 いや魔術とか魔法なんてそもそも無いし、とはツッコめず、泰地はエクヴィルツの一人語りに耳を傾けた。


「私の環腑は特殊で、一般的な肉体強化やら元素魔法などはほとんど使えない。その代わり、触っているモノの性質を、私の意志でいつでもどのようにも変化させることが可能なのだよ」


 このようになッ、と振り下ろされた木剣――いや鞭を、泰地は慌てて避ける。


 威力のみで判断するなら、木剣に分があるのは間違いない。しかし、鞭による攻撃は肉体よりも精神へのダメージがより高い。拷問でよく利用されるのも道理だろう。


 確かにこれは裏工作に向いている――とゲアハルトらが納得しているのを見て、エックホーフは小さく舌打ちした。できる限り、可能ならば王族にも部下にも隠しておきたかった秘密をさらしてしまったのだ。


(そうまでしなければ勝てん相手なのか?)


 エックホーフの胸中を知ってか知らずか、エクヴィルツは得物を振り回して敵を追い詰めていく。



 相対する泰地としては、木剣の時よりも振りが大きくなったのでかわし易くなったのだけど、攻撃範囲が拡大されたのでどうしても動きが制限される。変化前も後も面倒であるのに違いはない――が本音だ。


「…………ぅ」


 ほどなく、少年は練習場の隅――ボクシングやプロレスのリングで言うところのコーナーポストに追い詰められていた。


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