85 騎士サンと決闘
その85です。
エクヴィルツの宣告に、観客たちはざわめかざるを得なかった。
主導権を握っているであろう彼が奥の手を出す、なんて予想してなかったこともある。だけど、それ以上に動揺する理由がゲアハルト側にもエックホーフ側にも存在していた。
ゲアハルト側としては、剣の技量以外はほぼ霧中となっているリンクス騎士団の実力の一端が目撃できるのだから驚かざるを得ない。つまり、「裏の任務」を推測できる機会を与えられたのだ(弾劾できるほどの材料とはならなくとも)。
一方のエックホーフ側は、もちろんゲアハルト達に判断の材料を与えてしまう愚を犯すのが信じられない、という心境である。
だが同時に、「あのエクヴィルツにそこまで言わせるほど危険な存在なのか?」と認識を改めさせられた。その意味では、リンクス騎士団の副団長は厚い信頼を受けている。
(どうするんです、奥の手って言ってますよ!)
(それを待っていたのだ。相手の全力全開を粉砕するのが目的なのだ)
一も二もなく逃走したい泰地だが、魔王サマは「待ってました」とばかりにノリノリだ。ビックリするほど温度差がある。
(ああああああああああああああああ、どうしてこうなったんだ? 今頃クラスの連中はカラオケとかで楽しく遊んでるってのに、なんで俺は剣で殴られそうになってるんだよ?)
理不尽なんて言葉すら生ぬるい、などと少年が嘆いているうちに、変化は顕われていた。
エクヴィルツが構えていた木剣が、ゆるゆると大きくしなり始めたのである。




