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80 任務開始
その80です。
ドアノックが部屋の温度を変えた。
「こちらの準備は整いましたが、よろしいでしょうか?」
「いつでもいいのだ」
ルデルが勝手に答える。もう観念するべきだろう、と泰地は溜息を吐いた。
覚悟を決めたつもりなのだけど、いざ訓練場の真ん中で仁王立ちしている敵――エクヴィルツを目の当たりにすると、途端に回れ右したくなってくる。
「来たか」
エクヴィルツの声は苛立ちが滲んでいた。彼からすれば現状が不本意なのは容易に想像できる。ならば止めればいいのに、とは少年は言えなかった。
そんな気分を一掃するべく、エクヴィルツは手にしていた木剣を振り抜く。見事な剣筋に、素人の泰地はもちろんゲアハルトやバイラーも目を瞠ってしまう。
「さすがですね。仮にも騎士団の副団長を務めるだけはあります」
「え? あれが団長じゃないんですか?」
「いえ、副団長です」
ゲアハルトの言葉に、泰地は愕然としてしまう。それじゃ魔王サマの無謀な作戦が無駄に終わるじゃないか、と。
「でも、団長は武勲ではなく策略で地位を積み上げてきた人物なので、エクヴィルツが実質的な団長と評しても問題ないです」
「……喜んでいいやら、ガッカリするべきやら……」




