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75 任務開始

その75です。

「失礼。……冗談ではないと仰るなら、さすがに礼を欠いているのではありませんか?」


 当然だが、エックホーフの声に薄く怒気がこもる。泰地は泣きたい気分になったが、頭上の魔王サマには全然効いていない。


「ルデルがわざわざ出向いてきてやったのだから、礼もへったくれもないのだ。それとも貴様は、自分の爪を切るためにわざわざ後ろで控えている部下に命令して腰の剣を振るってもらうのか?」


「なっ……!」


 すっぱりと言い放ってくれて、少年は絶望で笑いたくなってきた。口の悪さだけなら確かに魔王と呼んで不足はないと言える。



 たとえこの場に雪郷がいたとしても取り繕いようがない状況で、動いたのはエックホーフの背後にいた騎士の一人だった。


「どうやら、見かけに反して素晴らしい胆力の持ち主のようですね」


 三十歳前後の――分かり易い表現をすれば「イケメンマッチョ」の渋い声に、ルデルは「ふふん」と鼻で笑って答える。


「貴様ごときがルデルの力を計ろうなど、不遜にも程があるのだ。そこのゲアハルトよりは使えるのだろうが、所詮は人間の技なのだ」


「これは手厳しい」


 騎士は微笑むが、その目が敵対心に満ちているのは誰の目にも明らかだ。




 と、ここで騎士の主人であるエックホーフが「妙案が浮かんだ」とばかりに手を叩いた。


「どうですか、ルデル様? ここはひとつ、このエクヴィルツと模擬試合など」


 完全にマズい流れであるのは、社会経験がまだまだ少ない泰地でも察知できた。というか、どう足掻いても泰地にとばっちりが飛んでくる展開である。


 意地でも阻止せねば――なんて願いは、もちろん無視される、


「それでそちらの気が済むのなら構わんのだ。ルデルの寛大な措置に感謝するのだ」


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