74 任務開始
その74です。
一触即発な空気の打開に動いたのは、騎士のバイラーだった。
彼は二人の会話が途切れた瞬間にさり気なく間に滑り込み、「エックホーフ伯。曲がりなりにも国王陛下が招請されたご客人の前です。これ以上は」と頭を下げる。
これで彼も自分が熱くなり過ぎていたことを自覚し、軽く咳払いをした。一呼吸分だけ間を空けると、あらためて異界からの来訪者二人に涼しい表情で向き直った。
「無礼な様を見せて申し訳ありませんでした。私はシェビエツァ王国の宮中伯を仰せつかっておりますエックホーフと申します」
自己紹介をしつつ、素早く二人を観察したエックホーフは、無意識に口元が緩みそうになるのを無難に隠した。しかし、そのわずかな変化を見逃すルデルやヴェリヨではなかった。泰地も、見えはしなかったが感覚的に察知している。
「このお二人が、異世界からの遠征隊の代表ということですか。……それで、手勢はいかほどでしょうか?」
至極当然な質問である。
正直に答えてよいものか、と年長者の意見を窺おうとした泰地であったが、もちろん頭上の魔王サマがそれを許すはずがなかった。
「部隊なんて仰々しいものを連れてくるわけがないのだ。空の魔王たるこのルデル様と、その座がいれば必要十分、むしろ過分なのだ」
エックホーフの喉の奥で「んぐウッ」と異様な音が鳴った。




