73 任務開始
その73です。
「失礼させていただく」
唐突に扉が開かれ、五人の男たちが無遠慮に乱入してきた。
驚いて固まる泰地とは正反対に、ゲアハルトは落ち着き払った態度で乱入者の代表であろう、いかにも貴族然としている男に声をかける。
「これはエックホーフ伯。このような場所に用事があるとは思えませんが?」
「私もここに足を踏み入れる用事ができるとは考えていませんでしたよ、ゲアハルト様」
部屋に不穏な空気が満ちてくる。これだけで、このエックホーフなる人物が魔王封印反対派と考えるのが妥当だろう。
エックホーフは、年齢ではビゼンテル三世とほぼ同じである間違いないだろうが、明らかに血色が良くて生命力に溢れている。「自分の好きな仕事ができて超楽しい!」と全身で主張しているかのように見えた。
そんな彼の後ろに整列しているのは、やっぱり全身を甲冑で包んだ騎士たちである。けれどバイラーと違っているのは、その胸に茶色の徽章を付けているところだ。……まあ、なんとなく予想はできるが。
「いくら陛下の決定とはいえ、我々宮中伯に一言も相談なく魔王討伐を実行するなど、我が国の歴史を紐解いてもあり得ない話ではありませんか」
「前もって陛下から話は聞いていたはずです。長々と返事を渋って動かなかった方に問題があるというものでしょう」
「我ら十人の宮中伯は、単純に我々だけの意思や都合で動けるものではありません。数多の貴族たちの意見を統一させるのに時間を要するのは、今に始まった話ではありますまい」
「私の耳には、宮中伯たちに意見を具申してもなしのつぶてだ、という声が聞こえてきているのですが?」
「全貴族からの意見全てに応えられるほど、我らは全能ではありません」
にこやかな微笑みとともに繰り広げられる舌戦に、ルデルとヴェリヨは野次馬として楽しそうに、それ以外の三人は冷や汗をかきながら見守るしかなかった。




