72 任務開始
その72です。
「まずはっ、ここ、ここが我らの国、シェビエツァ王国であります」
地図に描かれているのは、腕組みをした人間の上半身のような形の島(大陸?)だった。カウニッツが教師よろしく棒で指したのは、組んだ右肘の辺り。緑の線で囲ってある部分がそうなのだろう。
「対魔王陣営の最前線という割には意外と小さいな」が、ヴェリヨと泰地の率直な感想だ。見たところ、島全体の二割もなさそうな面積である。
「そして、こちらが、魔城でありますっ」
棒が先端を震わせながら左へ動き、海上に描かれた赤い丸の上で止まった。
「近い? つか大きい?」
泰地が思わず呟くと、やはりと言うべきか頭上から「落ち着くのだ」と窘められる。
「この世界の測量技術がどこまで正確なのか分からない上に、魔城とやらでのんびり作業ができるはずがないのだ」
言われてみればそのとおりだ。ヴェリヨもしたり顔で頷いた後、わざわざ手を挙げて質問の意を伝えた。
「その魔城とやらは、陸地からは見えないのか?」
「いっいえ、最西端となるルラント岬ならば外観を視認できます、はいっ」
「岬かぁ……。海面と同じくらいの高さなら五キロ弱だろうが、その魔城とやらの大きさと岬がどの程度の高さかで大きく違ってくるな」
ヴェリヨが知的な発言をしていることに、少年は少なからずショックを受けた。




