70 任務開始
その70です。
「サイキシ……?」
聞き慣れない単語に泰地とヴェリヨが戸惑うと、なぜか頭上から返答が来た。
「祭事を司る者は体制の長よりも上位であるとする文化は、古来よりどの世界でもあったものなのだ。このシェビエツァ王国では、王族の嫡男がその役目を担う――といったところだと思うのだ。どうなのだ?」
「はい。だいたいの部分は仰るとおりです」
淀みないルデルの説明に面食らったようだが、それでもゲアハルトは柔らかい物腰を崩さない。
これに中性的な眉目や声音が上乗せされてくるのだから、もはや嫉妬すらできん――とヴェリヨは苦笑してしまう。泰地も同じ心境なのは間違いないだろう。
「正確に説明すると、王族の嫡男がごく稀に神の祝福を受けて生まれる場合があるのです。神の祝福があると認められた時に限って、この祭騎士の任に当たるのです」
「ウム。つまり、その祝福とやらがなければ祭騎士にはなれないから、何十年も空席である時期もあるというワケなのだな?」
「祭騎士がいない期間の方が長いですね」
「つまり、ゲアハルト殿は文字どおり国の宝なのだ」
「いえ、祝福を受けたと言われても、特に他人と違う部分があるのでもないですし」
「本人がそう思い込んでいるだけというのもよくある話なのだ。ルデルも人間だった頃は、自分が特段優れているとは微塵も考えたことはなかったのだ」
「よく言われますが、私の場合は……」
……魔王サマが神の祝福を受けている人間と談笑するという奇妙な状況になっている。




