62 初任務は……
その62です。
「ほんじゃ、相手を待たすのもアレだし、俺も用事があるし、ぼちぼち行ってもらおうか」
「行くって、どうやって?」
「とりあえず、さっきのアプリを起動させてみそ」
ボスの口調にイラッとしつつ泰地は従う。
ホーム画面に新たに登録された懐中時計のようなアイコンをタップすると、「シェビエツァ王国からの依頼 遂行中」と表示された。
「本来なら、いまウン課が抱え込んでいる案件の一覧が表示されて、そのどれかを受けると、選んだ案件の異世界へ繋がるアイコンがさっきのフィールドにポンと出現するって寸法なわけだ」
今回はインストールするついでにもう選択しておいたけど、と続ける雪郷の言葉を受け流しつつ、泰地は画面を眺める。……素っ気ない文章以外、何もない。ここまでの展開から考えて、もっと変に凝ったギミックが仕掛けてあるのではと疑ったのだが。
「この地下基地から出れば、どっかにシェビエツァ王国へ繋がるアイコンが新しく出てきてるはずだ。正直、ヴェリヨと一緒なのは不安だと思うが……」
「いや、ボスよ。俺自身、この手の案件にあんま向いてないのは自覚してるが、はっきり言うことはないだろ」
「本当にすまない。手が空いてるのがヴェリヨしかいなかった。ルデル様の負担が増えると思いますが……」
「問題ないのだ。新鮮な牛乳を用意して待っているのだ」
……同級生たちが揃ってカラオケで遊ぼうって日に、なんで朝っぱらからおっさんたちの漫才を拝聴せねばならないのか――泰地は嘆かずにはいられなかった。
本当、「アプリを入れる」って便利ですよね。




