61 初任務は……
その61です。
かように危険な空間なのだけど、見逃せない利点もある。
それは、いわゆる「異世界」と容易に接続が可能となるトンネル代わりになる点だ。
先に説明したとおり、ここは世をあまねく全ての生命体の無意識の共有空間だ。人間も動物も植物も――そして、「異世界の生物」も当然含まれる。
つまり、異世界・異次元の類に対し、最も近い場所がここだ――という理屈らしい。
「で、ある天才サマが、俺みたいな凡人でも発狂しないようにフィルターを何十何百も重ねて創ったのが、いま俺たちが見ている風景だってことよ」
ボスが口を閉じると、今度はヴェリヨが口を開いた。
「この前、お前と一緒に潜った廃ビルがあるだろ? あれもその天才サマの作ったシロモノなんだよ」
「あれも?」
「ああ。条約結んだ異世界の国家に生息する厄介な怪物の廃棄施設として提供してる。で、俺たちはその怪物を相手に実戦的な訓練をする。いわゆるWin-Winな関係だ」
子鬼とかはどこぞの異世界に実在してた怪物だったのか、と泰地の肺腑は極寒の冷気で包まれた。いくら魔王サマのによる底上げがあったとはいえ、無茶ぶりにも程がある。
……ひととおりの説明を受けて、説明不足な部分が多いとはいえ、ぼんやりと外殻は確認できた、と思っておくことにした。というか、泰地的には精神的にいっぱいいっぱいになっているのが実情で、これ以上の「授業」は時間を置いてからにして欲しかった。
だが、最後にどうしても訊きたい事項がある。
「どうしてファ○コンみたいな風景になってるんですか?」
「天才って……凡人には理解できないよな……」
しみじみと呟きながらシナモンスティックをぴこぴこ動かす雪郷の横顔には「本気で分からん」と大きく書かれていた。
五感を刺激する情報量を少なくするのが目的なんですかね?(適当)




