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59 初任務は……

その59です。

 最初から説明ねぇ……と、雪郷は事務用椅子の背もたれに思いっきり身体を預けた。その態度といい、やる気のない目といい、どこまで本気なのか測りかねる。


 ヴェリヨは、部屋の隅にあった棚からコーヒーカップなどを取り出していた。


「うーん…………まあ、要するにだ。ここは無意識の世界なんだよ」


 ボスは説明の類が(好き嫌いは別として)ヘタなんだな、と生暖かい気分になりつつ、少年は無言で聞く役に徹した。


 ヴェリヨが淹れてくれたインスタントコーヒーを飲みつつ聞かされた情報をまとめると、以下のような感じではないかと思われる。




 世界に存在するありとあらゆる生命体――人間はもちろん、犬や猫、昆虫やら爬虫類やら両生類、果ては植物に至るまで、個々の「意志」をもって日々を過ごしている。


 自意識があるということは、必然的に無意識も有しているのだが、無意識というものはまるっと全て「共有」されている。つまり、ヒトもアリもヒマワリも、精神の奥底――根っこの部分で繋がっているというワケだ。


 シンクロニシティ、共時性などと呼ばれる現象がある。「意味のある偶然の一致」と説明される。



 「友人に電話をかけようと思ったら、その友人から電話が来た」「ネコは人間の言葉を理解しているように感じる」「植物に音楽を聞かせると枯れるのが遅くなる」



 ……胡散臭い話も多いが、似た感じで思い当たるものは誰でもあるだろう。


 それらはすべて、この「共有している無意識」にアクセスしている結果なのだ――といった感じらしい。




「一歩間違えたら、怪しい宗教みたいですね」


「精神云々なんて話を、アタマから信じて疑わない方が問題あるよ」


 シナモンスティックをかじる雪郷の表情からは、彼自身も完全に納得しているわけではなさそうであるのが透けて見える。だからといって、こんな広い空間が豊浜市の地下に存在しているなんて、現実的にはあり得ないのも事実だ。


「ま、適当に諦めてあるがままを受け入れるのがラクでいいよ」


「いや、それは警察官的にどうなんですか?」


話半分で聞くのが無難な説明です。

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