57 初任務は……
その57です。
「うぇっ」
変な裏声が出てしまった。しかし、それに執着する余裕が今の泰地にはない。
あのふざけた立て看板に重なった瞬間、見たこともないような広大で殺風景な建物の中に転送されていたからだ。不条理の連続で嘔吐感が湧いてきそうである。
「ここが、我々の本当の拠点となる地下基地なわけだ」
得意そうな顔のボスは、ゴルフカートのような小さな車に乗っていた。どうやらこの建物内では乗り物が必要らしい。
……そこまで広いのか、と少年はゲンナリする。
背後に気配を感じて振り返ると、ヴェリヨの巨体がぬっと出現してきた。よく見ると、足元には黄色いペンキでラインが引かれており、「EXIT」の看板も立てられている。どうやら、このラインが出入り口の境界になっているようだ。
泰地的には色々とモノ申したい気分だったが、異様に広い空間にいるせいか肌寒さを感じ始めていた。もう少し狭くて落ち着ける場所に行きたいのが本音である。
「これに乗って、どこへ行くんですか?」
「もちろん、この地下基地の事務所さね。こんな薄ら寒いところじゃ落ち着かんし」
これは反対する余地がない、と少年は素直に雪郷の隣に座る。どう考えても、ヴェリヨの巨体は助手席に収まらないだろう。
実際、ヴェリヨが後部座席に座ると、カートが明らかに後方へ傾いだ。走行できるか不安になったが、そこまで非力ではないだろう。ボスの口元が一瞬不安げにひくついたのも気のせいだと信じる。
……のろのろと動き始めたカートは、後輪に載せられた貨物の重さに無言の抗議をしているのかもしれない。




