54 初任務は……
その54です。
「このビルの一階には、隠しエレベーターでしか入れないようになっている」
ボスの説明のとおり、目の前には窓際にナントカ商会の張り紙と段ボールが大量に積まれた小汚いフロアが広がっていた。
どこから眺めても潰れて夜逃げした事務所だが、不自然な部分がある。かび臭さをあまり感じないのだ。
先導するように雪郷が歩を進め、部屋の真ん中あたりでしゃがみ込む。
再び「ふっふっふ」とほくそ笑む中年男。またこのパターンか、と若干ウンザリしてきた少年。面倒くさそうな態度を隠さない巨漢。
で、今度は普通に床の一部がガバッと開いた。
「いやー、地下への階段ってワクワクするよなぁ。できれば、王様が座るような豪華な椅子の後ろに作りたかったんだけど。もしくは、椅子を回すと開くギミックとか」
意味不明だが、何かのこだわりがあるらしい。
それを尋ねたいとは思わなかったが、泰地はどうしてもツッコまざるを得ないことがあった。
「すみません。わざわざこんな階段を作らなくとも、隠しエレベーターをそのまま延長させれば済んだ話じゃないですか?」
「うん。コスト的にはそれが正しいんだけど、そうもいかない事情があって」
「浪漫ですか?」
「いや。本当に実利面の問題で」
本当なのか怪しいのだが、雪郷がさっさと階段を降り始めてしまったので、泰地は慌てて続いた。




