53 初任務は……
その53です。
さてと、と雪郷は立ち上がると、茶封筒をヴェリヨに渡す。
「そろそろシェビエツァ王国へ行ってもらうか。詳しくは向こうの人に説明してもらった方が正確だろうし。あと、ヴェリヨは封筒の中身を読んでおくように」
「読んでおけって、いま話せばいいだろ」
「理由の一つは、現時点では泰地君に聞かせたくない。もう一つは、魔王の件が成功してからの話だからだ」
ふうん、とヴェリヨは封筒を懐にしま……おうとしたが、パンパンに張り詰めた胸筋のおかげでまごついている。
そんな彼を尻目に、雪郷は歩き始める。その行く先は、ファイルなどが収められている大きな書庫の前だ。
ふっふっふ、と振り返って不気味に笑う中年と、呆れの溜息を吐くメイド姿の少女。そしてじんわりと不安がこみ上げてくる少年。
雪郷が居並ぶファイルの一つをくいっと指で押すと、ガコンと大きな音を立てて書庫全体が動き始める。
…………上へ。
「いやー、男だったら、こういうギミックに憧れるよなぁ!」
確かに「隠し扉」「隠し通路」というのは浪漫を感じさせる仕掛けである。まして、こんな「秘密のアジト」的な建物ならば、必然と断じても過言ではない。
だからといって、現実に設置してあるのを目の当たりにすると、逆にテンションが下がってくるのを抑えられない。
「なんか不評だなー。みんな何故か引くんだよなぁ。やっぱ上に持ち上がるのがダメなんかな?」
顎に手を当てて考え込む雪郷。本当にこの人が上司で大丈夫なのか、と改めて泰地は自分の職場の将来に暗い影を感じていた。
今日で投稿開始から一ヶ月が経過しました。
……まだ一ヶ月なんですよね。




