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その3です。
片側二車線の道路を、時速五十キロ弱でのんびりと巡行していく。
他のクルマが六十キロ以上で次々に追い越していくので、助手席の少年は冷や汗が止まらない。中には車間距離を詰めて煽ってくるクルマや、クラクションを鳴らしながら真横に並んでくるクルマもあったが、運転手が強面外人であると見るや否や退散してしまった。
「一種の嫌がらせですね」
「法定速度を守ってるから文句を言われる筋合いはないぞ」
昔のクルマだから速度が出ないのは当然だとは納得できるが、もう少しスピードを出すなり交通量の少ない脇道を進むなりできるはずだ。
もちろん、法定速度を守った安全運転をしているので責める材料など微塵もない。だからといって釈然としないのも事実である。
こういう大人にはならないように反面教師にするくらいしか、今の泰地はできることはなかった。
「孕石、なんか聴くか?」
「え? スイッチとかどこにあるんです?」
「いや、CDどころかラジオすらないぞ、このクルマ」
あははははは、とヴェリヨは快活に笑う。泰地は、吐き出す溜息すら使い果たしたと言わんばかりにぼんやりと窓の外へ視線を向けた。
活動報告も投稿してますので、読んでみてください。






