33 学校生活の始まり
その33です。
その身に溢れる食欲が故に世界への挑戦を放棄した、と公言するイロハ嬢にとっては、昼食が菓子パン数個と牛乳のみなんて、文字どおり死活問題である。
北南校は、自治体そのものが注力しているだけのことはあり、施設が充実しているのは先にも説明したとおりだ。購買と学食とは別に、コンビニとカフェまで敷地内に併設されている。彼女がここを選んだ理由の一つであるのは説明するまでもない。
けれど、休み時間は勧誘の類が雲霞のごとく湧いてくるので、落ち着いて食べられる時間も場所もない。正直なところ、かなりのストレスが彼女に圧し掛かっていた。
「――と、のんびりしてる時間はないか」
一時的に追手たちは撒いたけれど、所詮は急場しのぎでしかない。昼休みが始まってまだ十分も経過してので、これからが本番ともいえる。不本意だが、急いで胃袋を少しでも満たさねば。
まずは「デカすぎコッペパン」の袋を破る。ワンコインのくせに一個当たりのカロリーが約六百という結構なコスパの良さが魅力だ。惜しむらくは、挟んであるのがハムとマヨネーズではなくマーガリンとジャムだという点である。
「もっと肉が欲しいなぁ……ソーセージサンドだけじゃ、やっぱ物足りないし」
逃亡生活での利便性を考えると、弁当はもちろん自作のサンドイッチも難しい。だからといって、毎回こんな菓子パンばかりでは辛抱できない。
いっそ転校してしまおうか、とネガティブな気分に沈もうとした刹那、ぱきんと頭の中で何かが割れたような感覚が彼女を襲った。




