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30 学校生活の始まり
その30です。
一年二組は真空状態のような静寂に包まれ……なかった。
「残念だったわ。けれど、私は――というよりも皐会は、あなたという真の本物を諦めるつもりなどないわ。日を改めて、話し合いの場を持たせてもらいます」
もう離脱してしまったイロハに告げたのだろうか?
山井嬢はくるりと踵を返すと、再びゆるりとした速度で教室から去って行く。双子姉妹もそれに続き、「失礼しました」と扉を静かに閉めた。
三人の退場を契機に、教室に大量の溜息で溢れ返る。
けれど、誰も一言も発しない。
長谷野ですら舌を動かすことを躊躇っている。
生徒たちの思いは、ほぼ一致していた。
「ああ……自分たちはいま、人生最大級の黒歴史が生まれた瞬間に立ち会ってしまったのだ」と。
おそらく――いや間違いなく、山井嶺華は今晩にもベッドの中で七転八倒するだろう。そして、五年後か十年後の傷が癒えた頃に何故か思い出して身悶えしてしまうだろう。
(ていうか、そもそも皐会って存在そのものが黒歴史じゃないか?)
しばらく沈黙が続いていたが、やがて自然といくつかのグループが形成され、やがてそれぞれ別行動に移っていく。
無論、皐会の件については話題に上ることはなかった。
今週・来週の更新予定を活動予定に上げておきます。




